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猫は「タマ」犬は「ポチ」馬は「アオ」…ってどうして?日本語教師の雑学!動物の名づけ由来

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

みなさんは、猫や犬の名前でパッと思い浮かべるものってありますか?今はすべてが多様性の時代ではありますが、そういえば20世紀の頃って…アニメにも出てくる猫の「タマ」、犬なら「ポチ」というのが、みんなが当たり前に考える定番の名前でしたよね!(ちなみにわたしの幼なじみのペットは、猫で「ポチ」でした)

これらの名づけが一般に浸透していたのには、一体どうして?今回は、そんな日本語の不思議。動物の名づけの由来についてです!

猫は「タマ」が広まった理由

猫の名前に「タマ」とつけられていた歴史を遡るとおよそ400年前。現在の東京都世田谷区にある「豪徳寺」で飼われていた猫の名が「たま」だったと言います。豪徳寺は国の指定史跡。招き猫発祥の地とされ、今も招福猫児(まねきねこ)と呼ばれる招き猫が所狭しと奉納されています。その由来としては1633年、鷹狩り帰りにこの地を通りがかった彦根藩主の井伊直孝が、寺の門前にいた白猫に手招かれ、されるがまま寺に立ち寄り、法話をうかがったそう。するとその間に外はみるみる雷雨に。白猫のおかげで難を逃れ、法話も楽しむことができたという幸運に喜んだ井伊直孝は、豪徳寺を井伊家の菩提寺と定めて支援をしたとのこと。お互いへ幸運を運んだこの白猫が件の「たま」でした。その逸話から、「たま」の名が流行したという説があるそうです。

その他には、経典を守る益獣として中国から日本に猫が人為的に輸入された奈良~平安時代のころ(実際は遺跡から、弥生時代に既に存在したと判明しているそうです)猫は貴重な動物で、宝である「宝玉」から転じて「たま」と名づけた、という説もあるといいます。そのころは、猫を現代のリードのようなひもで繋いで散歩させるのが流行していたそうです!

また、神秘的な存在として「魂」や「霊」を意味する「たま」と名づけられたという説や、丸くなって寝る様子から「たま」と呼ばれたという説なども存在するとのことです。

犬は「ポチ」は、比較的最近の習慣

犬の名前として「ポチ」が文献等に登場するのは、明治期以降の1800年代終盤~だそう。そのころに名づけも浸透していったとされています。

理由は諸説あるようですがそのほとんどが外国語に由来し、フランス語で「小さい・かわいい」の意味の「petit(ブチ)」、英語で「点々・まだら」といった意味の「spotty(スポッティ)」や「斑点」の意味の「patch(パッチ)」、犬を表す俗語「pooch(プーチ)」などが、聞き違いや発音変化によって「ポチ」になったとされているようです。

それ以前の犬の名前は、まったく違ったものだったそうなので、いずれにしても犬に「ポチ」は近代化の証ということになりますね。

もうひとつの定番・馬に「アオ」

こちらは、特に若い人には知らないという人も多いかもしれませんが、実は馬の名前として「アオ」というのが昔の定番でした。そもそも現代、農家ではない一般家庭で馬が飼われるというのはなかなかレアなので、ピンとこないかもしれませんが、時代劇などでは聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

馬の「アオ」は、馬の毛色に由来するそうです。青みがかった黒い獣毛のことを「青毛」と呼び、その青毛を「あお」と略していたとのこと。広辞苑でも「あお」は「青毛」の意味とともに「馬一般の代表名」とする記述があります。日本にはこの黒い毛色(青毛)の馬が多かったようです。つまるところ、猫や犬の名前でいう「シロ」や「クロ」のようなものですね。

掘り下げると楽しい!名づけも「日本語」

今回は、動物の名づけの定番とされていた、猫=「タマ」犬=「ポチ」馬=「アオ」ってどこから来たの?という由来のお話でした!

名づけも日本語。言葉には意味があるので、掘り下げてみるといろいろと歴史が見えてきますね!

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日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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