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竹島を巡る日韓「抗議合戦」 韓国は防衛省の「子供用防衛白書」に!日本は韓国国会議員の「竹島上陸」に!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
竹島に上陸した韓国野党「国民の力」の洪ソックジュン議員(右端)(洪議員HPから)

 日韓両国は東京五輪・パラリンピック大会組織委員会公式ホームページの日本地図の竹島(韓国名:独島)表記を巡って対立し、一時は韓国選手団のボイコット騒動にまで発展する事態に至った。IOC(国際オリンピック委員会)への削除要請が通らなかったこともあって結局は韓国が折れて、事なきを終えたが、その後遺症は半端ではない。

 韓国外交部は一昨日(16日)、防衛省が小中学生を対象に竹島を日本の固有の領土と表記した地図を記載した30枚分量の「はじめての防衛白書」をホームページに掲載したことに反発し、外務省に熊谷直樹・駐韓総括公使を呼び、李相烈アジア太平洋州局長が直接抗議していた。また、駐日韓国大使館の金容吉公使も本省の指示を受け、實生泰介アジア大洋州局長代理に対して抗議していた。

 韓国外交部はその前日、即ち「終戦の日」の15日には菅義偉首相が靖国神社に供物を奉納し、小泉進次郎環境相、萩生田光一文部科学相ら閣僚らが神社を参拝したことについても遺憾の意を表明していたが、岸信夫防衛相が先駆けて13日に参拝した際には熊谷公使を外交部に呼んで抗議していた。熊谷公使は大忙しで、1週間に2度も韓国外務省に足を運んだことになる。

 何度も抗議されたことに苛立ったのか、昨日(17日)は日本がお返しをしていた。

 韓国の野党議員が15日に竹島に上陸していたことを知った日本政府はこれを問題視し、熊谷公使が李相烈アジア太平洋州局長に対して、また外務省の船越健裕アジア太平洋州局長が金容吉公使に抗議していた。「竹島は歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土なので韓国国会議員の竹島上陸は容認できない」として韓国側に再発防止を求めたが、いずれも電話による抗議だった。今月6日にも韓国がリアルタイムで竹島の映像配信を始めた時も日本は抗議し、配信中止を求めたが、この時も駐日韓国大使館への抗議電話で終わっていた。

 竹島に上陸したのは島根県と領有権を争っている慶尚北道・大邱出身の洪ソックジュン議員(55歳)で、野党「国民の力」の次期大統領候補の一人である尹錫悦前検察総長の参謀の一人である。

(参考資料:保守の牙城・慶尚北道の知事も東京五輪地図の「竹島表示」でIOCに抗議)

 洪議員の竹島上陸は大邱サイバー大学が慶尚北道と共同で「光復節」(解放記念日)の日に共同企画した「独島訪問ライブ放送」のためだが、竹島への中継地である鬱陵島からのライブ放送には金寛容・慶尚北道知事が飛び入り出演していた。

 洪議員は竹島上陸後のインタビューで「最近、日本は東京五輪ホームページに独島を自国の領土と表記し、五輪の舞台を領有権主張の宣伝の場に活用しているだけに今日の行事の意味は大きい」と述べていた。

(参考資料:日本が「不法占拠」とみなす知られざる韓国の竹島(独島)「実効支配」の現況)

 竹島を巡る日韓の外交対立は今では「年中行事」となっているが、事をより複雑にしているのは安全保障を担当する防衛相と韓国国防部にも悪影響を及ぼしていることだ。

 防衛省統合幕僚監部はフェイスブックやSNSに上げている防衛戦略紹介の広報動画像で2分20秒にわたって中国の海洋進出に対抗する「自由で開かれたインド・太平洋」構想として日本とフランスの軍事協力を紹介しているが、冒頭の部分に登場する北東アジア一帯の地図にインド・太平洋地域の安保脅威の一つとして「独島の領土問題」が取り上げられていることに韓国国防部は苛立ちを隠していないようだ。

 また、陸上自衛隊が新たに製作した21分の広報動画像にも韓国国防部は「独島が日本の領土として表記されている」と猛反発している。

 防衛省は2005年以降、毎年防衛白書で竹島を日本の固有の領土と明記しているが、2020年の防衛白書では「領空侵犯の恐れがある航空機を発見した場合、戦闘機などを緊急発進させ、監視、警告などを行っている」と書かれてある。この部分について韓国は「独島領空で衝突が起きた場合、航空自衛隊戦闘機を発進させる可能性を念頭に置いたもの」と受け止め、警戒感を強めている。

 陸上自衛隊の広報動画像を取り上げた韓国のKBSテレビは「地図を利用して韓国の領土主権を侵害する認識を拡大させる恐れがある」と伝えていた。また、SBSテレビも「東京五輪組織委員会が地図に独島を日本の領土であるかのごとく描写したのに続き、自衛隊までが韓国の領土主権に挑戦する態度をみせている」と伝えていた。

 歴史問題や経済摩擦は対話による解決は可能だが、領土問題だけはどうにもならない。これ以上、ヒートアップしないことを切に望むだけだ。

(参考資料:韓国は海では日本に勝てない!世界4位の日本に8位の韓国――日韓海軍力比較)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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