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初勝利に浮かれない。サンウルブズ・流大キャプテンの態度。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
スクラムハーフとして今季9試合に出場(写真は2月の開幕時)。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦のサンウルブズが5月12日、開幕10戦目にして今季初勝利を挙げた。東京・秩父宮ラグビー場での第13節でレッズを63-28で制し、チーム史上初のオーストラリア勢撃破。もっとも共同キャプテンであるスクラムハーフの流大は、結果に酔わない態度を貫いた。

 この日は前半2、7分にヘイデン・パーカーのペナルティーゴールで6-0とリードを広げ、その後は反則やミスを契機に勝ちこされるも、前半30分にロックのグランド・ハッティングが勝ち越しトライを挙げてからは一度もリードを許さず快勝した。

 反則数はサンウルブズの「7」に対しレッズが「12」。レッズが肉弾戦周りでの規律を乱す一方、サンウルブズはキックを蹴った後の防御や組織だった攻撃で試合を優位に進めた。スタンドオフのヘイデン・パーカーは、12本あったゴールキックの機会をすべて成功させた。

 今季はトップ5を目標としながら、連携を図る日本代表の候補選手の強化に注力していた。試合後、流とジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見し、収穫と課題などを語った。チームは19日、香港で南アフリカのストーマーズとぶつかる。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を振り返って。

「こうやって勝てて、皆さんの前で報告できることを嬉しく思います。ファンを含め、苦しい時も応援し続けてくれたおかげでパワーをもらって、勝つことができました。関わってくれたすべての方に感謝します。

 ポイント(得点)でのプレッシャーをかけ続けたいと思っていました。ヘイデン・パーカーという優秀なキッカーがいるので、ショットを狙えるところは狙って、得点を積み重ねた。いままでのサンウルブズのゲームでは、最初がよくても最後に離されたりして勝利に結びつかなかった。今日もソフトなトライ(簡単に取られる失点)はありました。ただ、要所要所でチームがコネクトして、やることを明確にしながらゲームを進められました」

ジョセフ

「皆様に感謝します。サンウルブズはプロの集団ですので、ファンやメディアの協力なくしては運営できないと思っています。ここまで悪い時もありましたが、自分たちを見つめ直し、反省し、身体を張ってきた結果です。コーチとしては、サプライズだと思っていません。4月のニュージーランド遠征でもチームは発展、成長していた。なかなか勝ち切ることはできませんでしたが、きょうは集大成を出してくれたと思います。

 負けが込むと、選手たちの自信喪失に繋がります。しかし選手たちは、翌日には試合の映像を見て検証し、次への勝ち方を考える。その姿には感心していましたし、選手を称えたいです。今日はち密な、精度の高いプレーができた。選手がコントロールし、組織的にオーガナイズドしていた。顕著なのはスキル。ヘイデン・パーカーのスキルはワールドクラスです。ああいうことがあると、チームに自信をもたらしてくれます。

 スーパーラグビーでオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカと毎週違う国のチームと試合をしていくなか、間違いなくチームは成長していた。それらすべてが蓄積していって、意図的な練習を選手がするようになった結果だと思います」

――今日の試合の修正点、次への意気込み。

ジョセフ

「28失点したことが課題です。我々のソフトな瞬間、緩みがあったところで、トライを取られた。このことは、過去の試合でも課題に挙がっています。今日は比較的よく戦えましたが、悪い判断からトライを取られていたこともあった。次の試合、待ちきれません。香港は暑い。これが我々に有利に働く。ただ、ストーマーズもいいチームであることを自覚して戦いたいです」

「ソフトなトライ、というのはジェイミーの意見と共通しています。選手間でコミュニケーションを取っていきたい。勝った試合でも受け止めなきゃいけないことはあって、改善することが必要だと思います」

 確かに後半26分には、自軍攻撃中のパス処理を誤ったところからボールを繋がれて失点した。続く34も、グラウンド中盤左サイドの防御をあっさりと破られ、カバーの足が追い付かずに4本目のトライを許した。流はこれら「ソフトなトライ」に加え、勝負がつく前の失点シーンも気になったようだ。

 例えば9-7とリードして迎えた前半21分、フルバックのセミシ・マシレワのダイレクトタッチ(自陣22メートル線からキックを蹴り、グラウンド内でバウンドさせずにタッチラインへ出した。蹴った地点の真横のタッチライン外からの相手ボールラインアウトで再開)でピンチを招き、相手が9フェーズ攻めた結果、フッカーの堀江翔太のタックルがハイタックル(肩より高い位置へのタックル。相手にペナルティーキックを与える)を取られた。

「あのペナルティーも防げるものでした。今後、クロスゲーム(接戦)に向け、ディシプリン(規律)をしっかりやらないといけない。今日のホームでの勝ちの価値を上げるには、次の試合が大事。自信と、目を向けないといけないこと(反省)。その両方をミックスさせて、レベルアップして来週を迎えたいです」

――このゲームは、日本代表の活動に向けてどう繋がってゆくか。

ジョセフ

「ゲーム運び、戦い方はサンウルブズと日本代表で共通しています。同時進行でやれていることはアドバンテージです。選手の関係性を深めて行けています。いまのスーパーラグビーでやっていることが日本代表に反映されると思います」

「きょうの試合に出た日本代表へ行くメンバーが、出ていないメンバーとしっかりコネクトすることが大事。ただ、次のストーマーズ戦に集中することが大事。それが終われば、日本代表へ…と(日本代表へ召集される選手はストーマーズ戦後にチームを一時離脱。休息を得ながら日本代表合宿を始める)。目的をしっかりさせ、集中することが大事」

 大学選手権9連覇中の帝京大学では6連覇時のキャプテン。サントリーでも入社2年目でキャプテンとなってから2連覇中だ。学生時代、他との力関係から優勝の可能性が高いのではと聞かれ「油断などはしていないのですけど、自信はあります」。心のありようを言語化する力に長けたリーダーが、また明後日から練習を引っ張る。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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