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森口博子 34年振りのビキニ姿が話題のアニソンカバー集が好調。「私の体がゴーサインを出しました」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/キングレコード

“大人のためのアニソンカバーアルバム”シリーズ『ANISON COVERS 2』が好調

『ANISON COVERS 2』(8月7日発売/通常盤)
『ANISON COVERS 2』(8月7日発売/通常盤)

「何十年も生き抜いてきたアニソンの名曲、その素晴らしさをたくさんの人に知って欲しい」――2023年“大人のためのアニソンカバーアルバム”がコンセプトの『ANISON COVERS』を発表した森口博子にインタビューした際、そう語ってくれた。この作品は多くの人から支持され続編を望む声が多く、8月7日に『ANISON COVERS 2』をリリースし、オリコン週間アルバムランキング8位、ビルボードジャパン トップアルバムセールス週間ランキング5位にランクインするなど好調で、9月4日から全曲デジタル配信もスタートした。

木根尚登(TM NETWORK)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)を始めとした豪華ミュージシャンとのコラボが実現。これまでアニソンを始め様々な歌と向き合い、来年40周年を迎える森口の瑞々しく、さらに豊潤になった歌が1980~90年代のアニソンの名曲達を輝かせている。一曲一曲とどう向き合ったのか、森口にインタビューした。

レギュラー番組『Anison Days』で“地球上にはまだまだこんなにも知らない名曲がたくさん溢れているんだ”と知る

この『ANISON COVERS』シリーズの基点になっているのは、放送8年目に突入した森口が出演する番組『Anison Days』(BS11)だ。これまでに約300曲のアニソンをカバーしてきた。

「番組で今までアニソンを約300曲カバーしてきて、“この地球上にはまだまだこんなにも知らない名曲がたくさん溢れているんだ”と感じ、私と同じようにそういう曲達を知らない人がいるのであれば、その楽曲のファンの方はもちろんですが、知らない方たちにも知って欲しい、届けたい、この想いを共有したいと率直に思いました」。

『Anison Days』で名曲の数々をゲストと共に丁寧にカバーし長寿番組になり、『GUNDAM SONG COVERS』シリーズ3作が高い評価を得た森口に、他のアニソンのカバー集も発売して欲しいという声が数多く寄せられた。そして2023年にリリースした“大人のためのアニソンカバー”集『ANISON COVERS』は、各配信サイトでも1位を獲得し続編が期待されていた。

「アニソンを先入観や食わず嫌いでまだ聴いていただけていない方に、こんなに素敵な音楽があるということを伝えたいアルバム」

もちろんアニソンではあるが、良質なポップスをカバーした名曲カバー集という佇まいを『ANISON COVERS』シリーズには感じることができる。

「『GUNDAM SONG COVERS』シリーズの評判がよく、リスナーの方から『絶対原曲主義だけど、森口博子のカバーは聞きやすい』という声をいただき、『ANISON COVERS』を発売してからも『ガンダムもアニソンも、森口さんの曲も通ってこなかったのですが、こんなにいい曲を教えてくださってありがとうございます』という声がたくさん届きました。楽曲のよさを伝えたいという思いが伝わったのかなって嬉しかったです。私の思いとしては先入観や食わず嫌いでまだ聴いていただけていない方に、こんなに素敵な音楽があるんですよ、ということを伝えたい作品です。知っている方には大人になったからこその、新たな発見があるはずです」。

「『想い出がいっぱい』は、自分らしい新しい息吹を吹き込みたいと思った時、鳥山雄司さんの透明感のある、温かいギターの音色で歌いたいと思った」

『~2』のリード曲で、スタンダードナンバーの「想い出がいっぱい」(『みゆき』EDテーマ)では、鳥山雄司(G)と神保彰(Dr)という名手との共演が実現した。

「自宅で練習している時、何度も号泣してしまいました。当時中学生だった私は<時は無限のつながりで 終わりを思いもしないね>という歌詞の意味が理解できなかった。全ては永遠だと思える時間軸にピュアに生きていました。でも年齢を重ねて、それこそ大人の階段を登っていくと、世の中のことすべてが有限なんだということに気づくんですよね。作詞の阿木燿子さんの深いメッセージに感動しました。リアルタイムで聴いていた人も、合唱コンクールや教科書でこの曲を知ったという人も、それぞれの心にノスタルジーを感じさせてくれる曲だと思うので、そこは大切にしたいと思いました。今回のカバーで、自分らしい新しい息吹を吹きこみたいと思った時、鳥山さんの透明感のある温かいギターの音色で歌いたいと思いました」。

鳥山のギターと、世界的ドラマー神保彰の抑え目ながら深い音が森口の歌と溶け合い、美しく切ない世界観を作り上げている。

「とにかく鳥山さんのアレンジがオシャレで美しいんです。心地良いAORのリズムを出すために鳥山さんが、世界的なドラマーの神保さんにお願いをしてくださいました。まるで時を刻むような神保さんのリズムが、私たち大人に寄り添う人生の時計の針のように感じました。<少女だったと いつの日か>という歌詞があります。その少女は、歌手を夢見てひたむきに向かっていた自分をだぶらせて歌っています。アルバムのライナーノーツにも書かせていただいたのですが、再発見できたり、しんみりしたり、聴いてくださった方と感動の共有ができたら嬉しいです」。

「『キリン午後の紅茶』のCMソングをイメージしてアレンジし、歌った『ゆめいっぱい』」

鳥山は「ゆめいっぱい」(『ちびまる子ちゃん』OPテーマ)のアレンジも手掛けている。原曲とはガラッと変わって、アコギと柏木広樹のチェロでボサノバテイストのアレンジに仕上げ、メロディの美しさと森口の歌をより引き立てている。

「『Anison Days』でこの曲の作曲者・織田哲郎さんとコラボさせていただいて、改めていい曲だなと思いました。『いつの時代にも響く曲ですよね』って織田さんに言ったら『僕のメロディは長持ちするんだよ』ってお茶目におっしゃって、まさにそうだなと思い、今回歌わせていただきました。原曲のように元気な感じで歌おうと思ったのですが、改めてこのタイミングで歌詞とメロディをじっくりと噛み締めたいと思いました、鳥山さん、柏木さんと3人で優しい会話をしているようなレコーディングになっています。実は裏テーマがあって『キリン午後の紅茶』のCMソングを狙ってるんです(笑)。勝手にプレゼンしてる気分!サウンドもそれを意識しています(笑)」

木根尚登とのコラボが実現した「STILL LOVE HER(失われた風景)」

「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada
「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada

木根尚登(TM NETWORK)とコラボした「STILL LOVE HER(失われた風景)」も話題だ。

「TM NETWORKの楽曲をカバーするにあたり、メンバーで20年以上仲良くしていただいている木根さんにおねだりをして、参加していただきました。木根さんの温かな声とギターはもちろん、この曲は琴線に触れる切ないブルースハープがないと成立しません。そしてTM NETWORKのデビュー35周年ライブの映像を観たときに、木根さんのブルースハープの後に、この曲の最後の<ラーラーラーラ>のところをファンの皆さんがキラキラした表情や涙を流しながら一緒に歌っていたのがすごく印象的だったんです!共に歴史を積み重ねてきて、この先も未来に続いていく一体感が素晴らしくて!アルバムの最後は絶対に木根さんとのラララで締めくくりたいなと思って、ライブバージョンを取り入れたアレンジにしていただきました。アニソンもこのアルバムも続いていくというメッセージも込めて」。

この曲も「想い出がいっぱい」もそうだが、森口の感情過多にならない抑え目な歌の中に存在するエモーショナルな部分が伝わってくる。

「それは私の中で少し成長した部分かもしれません。私の思いだけではなく、その曲の中にあるみなさんの思い出や感情をより感じて欲しいので、余白が大事だと思いました」。

百田夏菜子との『おジャ魔女カーニバル!!』は「世代を超えたコラボ、違和感ないと思います(笑)」

一転して、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)とのコラボ「おジャ魔女カーニバル!!」(「おジャ魔女どれみ」OPテーマ)では言葉数が多い歌詞を弾むように歌い、聴き手に元気を与える。

「16分音符連打でまるで早口言葉のよう。しかもキーも高くてこのアルバムの中で一番カロリーを消費した曲かもしれません(笑)。でもはじける夏菜子ちゃんの若いエキスを勝手に吸い取りながら頑張ったので、世代を超えたコラボ、違和感ないと思います(笑)。夏菜子ちゃんの歌声が本当にキュートでハッピーオーラ満載なので、この曲を聴いた人は自然と口角が上がっているはず。作品の世代ではない50代の私でも1回聴いただけで自然と身体が動いて、お気に入りになった名曲です」。

「自分の曲も含めて、当時は気づけなかったメッセージや感動をこのアルバムで再発見させていただいています」

「BE FREE」(「鎧伝サムライトルーパー」EDテーマ)のセルフカバーも収録されている。この歌詞の深いメッセージに改めて“気づき”があったという。

「コロナ禍真っ只中の時『Anison Days』で歌わせていただいて、当時よりも歌詞が深く刺さって改めて好きになった曲です。あの頃の自分に『まだ理解してなかったね』って声をかけてあげたいし、この曲にごめんねって言いたいぐらい。<シグナルが赤になる 君は何故か かけ出す>という三浦徳子さんが書かれた歌詞、極限状態に追い込まれているんだなって想像するじゃないですか。でも当時はそこまでわからなかった。コロナ禍で感じた閉塞感にも、現代社会の中で生きづらさを感じている人にも通じる部分があると思います」。

「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada
「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada

<信じることから 始めよう><勇気を抱きしめ 世界中に>という、1998年に発表されたこの楽曲の歌詞が“今”という時代により深く響く。

「言葉を大切にっていうのが私の歌の根底にはあって、デビュー曲『水の星へ愛をこめて』のレコーディングの時プロデューサーさんに『この曲は何十年経っても、君が大人になっても歌い続けていける曲だから、言葉を大切に、語尾を丁寧にね』って言われたことが、歌手・森口博子の原点になっています。そういった意味では、改めて歌詞を見直した時に、当時は気づけなかったメッセージや感動をこのアルバムで、自分の曲でありながら再発見させていただいています」。

「大人になったからこその新たな魅力が発見できるというのが、アニソンの力だと思う」

「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada
「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada

「BE FREE」だけでなく、『ANISON COVERS 2』には時代の変化の中で、新たな意味を纏いながら聴き手の心を照らし続けてきた言葉とメロディが揃っている。

「大人になったからこその新たな魅力が発見できるというのは、アニソンの力だと思います。もちろん音楽ってそういうものだし、特にアニソンの場合は1+1=2になるのではなく、そこに物語があってビジュアルがあって無限大の可能性が広がっている中での言葉のチョイスなので、感動が色々な方向に広がるように計算されています。そこに時間を重ねて大人になってからの新たな視点が加わると、もう味わい深すぎて泣いてしまいます」。

「生涯、発展途上の現役の歌手でいたい」

来年デビュー40周年を迎える森口。50代に突入してもデビュー曲「水の星へ愛をこめて」を始め、オリジナルキーにこだわって歌っていることはもちろん、ますますパワーアップしているその歌声に魅せられるリスナーが増えている。

「私は生涯、発展途上の現役の歌手でいたいという気持ちが強いのですが、“いつの日かキーを下げて歌わなければいけない日が来たらどう思う?”ってイベントでファンのみなさんに聞いたことがあって、すると『思いをきちんと伝えてくれている限り、キーなんて関係ないです』とか、『人間なのでキーなんて下がって当然。そんなことを気にせずに歌い続けてください』という声をたくさんいただけて、すごく気が楽になりました。希望を持って未来に向かっていけます」。

「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada
「ANISON NIGHT」(2023年6月18日) Photo by Makiko Takada

11月と1月には東京と大阪で“ANISON&POPS NIGHT”コンサートを開催する。

「このアルバムからと数々のガンダムソング、私のアニソン以外の楽曲も織り交ぜて楽しいコンサートにしたいです。ガンダムやアニソンがきっかけで、私のオリジナル曲を聴いてくださる方も増えていて、逆にずっと私のオリジナルを聴いてきてくれている方も『アニソンっていい曲ありますね』ってシンクロし始めているので、ここに来れば色々な音楽があるんだということを実感していただけるはずです」。

「イタズラな身体が爆発しています!エンターテインメントとしてビジュアルもサウンドも楽しんでいただける一枚になっていると思います」

『ANISON COVERS 2』の通常盤のジャケットでビキニ姿を披露し、さらに歌詞カードの一部が“水着袋とじ仕様”という前代未聞のクリエイティブが話題になっているが、34年ぶりに水着姿を披露した理由とは――。

「サプライズが大好きなんです。とにかくファンの皆さんに喜んで欲しいし、驚かせたいんです。ここ数年はコンサートでダンスシーンも増えて体も絞られていたので、私の体がゴーサインを出していると思って(笑)、ビキニ姿を披露しました。イタズラな身体が爆発しています!エンターテインメントとしてビジュアルもサウンドも楽しんでいただける一枚になっていると思います」。

『森口博子 39コンサートツアー "ANISON & POPS NIGHT"』
■11月17日(日) 森ノ宮ピロティホール(17:00開場/18:00開演)
■2025年1月12日(日) 昭和女子大学 人見記念講堂(16:30開場/17:30開演)

キングレコード『ANISON COVERS 2』特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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