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ニキビ治療に新風!プロバイオティクスの効果と最新研究まとめ

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【プロバイオティクスとは?ニキビ治療への応用】

プロバイオティクスとは、健康にプラスの効果をもたらす生きた微生物のことです。ヨーグルトなどの発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌が代表的ですが、最近の研究で、プロバイオティクスがニキビなどの皮膚疾患の治療にも役立つことが分かってきました。

ニキビは、思春期に多い肌トラブルですが、大人になっても悩まされる人は少なくありません。皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まり、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖などが主な原因です。プロバイオティクスは、皮膚の常在菌叢のバランスを整えることで、アクネ菌の増殖を抑制し、炎症を和らげる働きがあることが明らかになってきました。

海外では、プロバイオティクスを配合したスキンケア商品も登場し始めています。欧米では、ニキビ治療に抗生物質を使うことが多いのですが、耐性菌の出現などの問題から、プロバイオティクスによる自然療法に注目が集まっています。日本でもプロバイオティクスに着目した化粧品開発が進められており、今後ニキビケアの選択肢が広がることが期待されます。

【プロバイオティクスを使ったニキビ治療の実際】

プロバイオティクスを使ったニキビ治療には、経口摂取と外用の2つの方法があります。

経口摂取では、乳酸菌やビフィズス菌などのサプリメントを服用します。腸内環境を整えることで、肌の状態も改善すると考えられています。実際、Lactobacillus rhamnosus SP1という乳酸菌の経口摂取が、ニキビ患者の症状を改善したという報告があります(Fabbrocini G et al., 2016)。この研究では、乳酸菌サプリメントを12週間飲んだグループで、ニキビの炎症が有意に減少したそうです。

一方、外用では、プロバイオティクスを配合したクリームやローションを患部に塗布します。肌に直接働きかけることで、より即効性が期待できるでしょう。Lactobacillus plantarumという乳酸菌の外用剤を使った研究では、ニキビの赤みや腫れが改善したと報告されています(Muizzuddin N et al., 2012)。ただし、自己判断で使用するのは避け、皮膚科医に相談することをおすすめします。

プロバイオティクスは、ニキビ治療の新たな選択肢として期待されますが、万能ではありません。重症のニキビには、抗生物質などの医療機関での治療が必要な場合もあります。自分のニキビの症状に合わせて、皮膚科医と相談しながら、適切な治療法を選ぶことが大切だと思います。

【プロバイオティクスの研究動向と今後の展望】

プロバイオティクスのニキビ治療への応用は、まだ研究段階ですが、徐々に成果が上がってきています。

特に、Lactobacillus属の乳酸菌には、ニキビ改善効果が認められつつあります。先述のL. rhamnosus SP1やL. plantarumの他にも、L. acidophilusやL. caseiなどの菌株でも効果が報告されています(Kang BS et al., 2009; Jung GW et al., 2013)。これらの乳酸菌は、アクネ菌の増殖を抑えたり、炎症を引き起こすタンパク質の産生を抑制したりすることで、ニキビの症状を和らげると考えられています。

また、乳酸菌と植物エキスを組み合わせることで、より高い効果が得られる可能性も示唆されています。ナスニンゲン由来のルペオールとエキナセアエキスを乳酸菌と一緒に摂取すると、ニキビの炎症が改善し、皮脂量も減少したという報告があります(Rinaldi F et al., 2022)。

今後は、プロバイオティクスの種類や菌株、投与方法などを最適化し、より効果的なニキビ治療法の開発が進むと考えられます。また、プロバイオティクスと既存の治療法を組み合わせることで、より高い治療効果が得られる可能性もあります。今後の研究に期待しましょう。

参考文献:

- Fabbrocini G et al., Benef Microbes. 2016;7(5):625-630.

- Kim MJ et al., Nutrients. 2021;13(4):1368.

- Muizzuddin N et al., J Cosmet Sci. 2012;63(6):385-395.

- Kang BS et al., J Microbiol. 2009;47(1):101-109.

- Jung GW et al., J Dermatol Sci. 2013;72(2):127-133.

- Rinaldi F et al., Dermatol Ther. 2022;12(2):577-589.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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