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芸歴25年。「水曜日のダウンタウン」で注目の「パタパタママ」が語る「あきらめ」の意味

中西正男芸能記者
「パタパタママ」の下畑博文さん(左)と木下貴信さん

 TBS「水曜日のダウンタウン」で「たとえ閉じ込められていても『今日のラッキーアイテム』さえ手に入れば、そのラッキーで脱出できる説」に挑み話題となったお笑いコンビ「パタパタママ」の木下貴信さん(43)と下畑博文さん(48)。芸歴25年にして「今が一番」という追い風が吹いていますが、福岡から東京に出てきてからの苦悩の10年を経て見極めた「あきらめ」の意味とは。

最大の反響

下畑:今回「水曜日のダウンタウン」に出演したことで、地元の友達とか、最近、連絡を取っていなかった人からも「見たよ」というメールが届きました。

木下:25年やってきた中で、一番大きな反響をいただきましたね。企画的にはすごくつらいんですけど、気持ち的にはありがたさしかないというか。

下畑:実際、部屋に閉じ込められている時は、本当に大変なんですけど、どこかで、これは「水曜日のダウンタウン」の企画でやっていることなんだという喜びが込み上げてきちゃうと言いますか。

しんどいのもウソでも何でもないんですけど、そこに喜びがあったというのも、本当に正直な思いではありました。

25年の時間を振り返ってみても、一番注目されている感覚はありましたし、本気で東京に帰りたいんですけど、どうしても、本気のうれしさも出てきてしまう。それが正解かどうは分かりませんが、それが僕らの事実でした。

ビジョンが見えなくなっていく

木下:福岡で15年、東京に出てきて10年が経ちました。この10年はしんどかったです。まず仕事がない。そして、仕事がないということが当たり前になってしまった。その積み重ねは、なんともしんどい時間ではありました。

下畑:東京に出てきて1~2年は仕事ゼロでも何とか踏ん張る。その覚悟で出てきたんですけど、逆に言うと、1~2年のうちに何とかカタチを作って、次のステップに入る。そういうイメージが漠然とあったんですけど、結局、そのまま10年が経ちました。

何も変化なく、時間はどんどん過ぎていく。

自分たちがステップアップしていくビジョンがどんどん見えなくなっていくし、そもそも「オレたちって、どうなりたかったんだっけ」という思いにもなっていきました。

でも、芸人をやめるという選択はしたくない。ただ、現実として、二人とも結婚しているし、僕は子どももいる。そこの生活は守らなくてはいけない。

木下:しんどくはあるんですけど、お世話になっている方々から気にかけてもらって、何とか気持ちを保ってきた10年でもありました。

お世話になっている千原ジュニアさんのライブに出してもらって、ジュニアさんがお膳立てしてくださっているからなんですけど、そこでたくさんのお客さんの前でウケたり。そういうことがあって、今も芸人を続けているんだと思います。

「あきらめ」の意味

下畑:ジュニアさんとのご縁は、もう20年前くらいになりますかね。

福岡はご飯もおいしいので、先輩の芸人さんが休みの時に福岡に遊びに来られるという流れも多くて、そんな時、僕がいろいろとお店も知ってたりもするので、窓口というかアテンド的なことをさせてもらうことが多かったんです。

その中で、ジュニアさんとのご縁もいただいて、僕らが東京に出てきてからは頻繁にご飯に連れて行ってもらうようになり、今日に至るという感じです。

ジュニアさんは直接的に「これをやった方がいい」なんてことは一切言わないんです。ただ、何をしている時でも、常にお笑いのことを考えている。

一緒にお酒を飲んでいて、楽しくみんなで盛り上がっているんですけど、そこでも全くアクセルを緩めていなくて、ずっと考えているんです。

僕なんかはそのまま楽しくなって、完全に笑いを忘れて飲んでいたりもするんですけど、ハッと気がついてジュニアさんを見ると、一切ブレずに面白いことを考え続けている。

あそこまでいっても、まだストイックな姿勢を緩めない。一緒にいると、楽しいのも本心ですし、この上なく気が引き締まるのも本心です。

芸歴が25年ある。でも、全く売れていない。

自分たちを冷静に見た時、その状況で若い人たちと一緒に出るのは空気が違いますし、同じくらいの芸歴の人たちの中に入っても周りは人気者ばかりなので、それはそれで空気が違う。自分たちのことながら、本当に難しいとは思います。

今までにないポジションを見つけて、オリジナリティーを出すしかないんだろうなとは思うんですけど。

木下:これは変に後ろ向きな発言ということではないんですけど、どこかであきらめている部分はあります。

もうとっくに「M-1」も出られない。歳もとっている。王道の売れ方をすることは、もうない。それは事実なので、あきらめるというか、排除するしかない。

でも、やっぱり、お笑いは大好きだし、携わっていたい。

そういう思いもあって、僕は芸人がたくさん働いている清掃会社の役員もやっているんです。賞レースで勝ち上がって売れるという道はあきらめるしかないけれども、その分、別のルートからの道を全力で模索する。

あきらめ、そして、見切りみたいなものは、今は真正面からできていると思います。

…ただ、寄る年波には勝てないというか、実は、今回の「水曜日のダウンタウン」のロケでも、オッサン丸出しのこともありまして。

下畑:実は、僕がぎっくり腰をやっちゃいまして…。放送では特にそこの場面は放送されなかったんですけど、ゲットした大きなアイテムを運ぼうとする時に、ずっと部屋の中にいて体がなまっていたみたいで、グキッとなっちゃいまして。

だから、実は部屋の外に出る時も、驚きと感動だけじゃなく、腰の痛みで妙な歩き方をしたりもしてるんです(笑)。

思いっきり老眼にもなりましたし、手元の字も全く見えません…。こればっかりは歳だから仕方ないんですけど、何とか体が動くうちに、早く結果を出せるよう頑張ります。

(撮影・中西正男)

■パタパタママ

1977年9月13日生まれで熊本県出身の木下貴信と、73年1月20日生まれで福岡県出身の下畑博文が96年にコンビ結成。福岡吉本7期生。福岡吉本時代は福岡市内で飲食店を経営するなど飲食業界に詳しく、千原ジュニアら東京から芸人が来た際にはアテンド役を務めることも多かった。2011年から拠点を東京に移す。福岡放送「ナイトシャッフル」などに出演。木下は吉本芸人が多く働く清掃会社で東京営業所所長の役職に就いている。4月14日、21日の放送のTBS「水曜日のダウンタウン」で「たとえ閉じ込められていても『今日のラッキーアイテム』さえ手に入れば、そのラッキーで脱出できる説」に挑み、話題になる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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