【北九州・筑豊ラーメンの奥深き世界】ラーメンも屋号も個性むき出し「ラーメン まむし」
九州自動車道八幡ICから県道22号を田川方面に走り20分ほど。田川郡福智町に入ると「ラーメンまむし」と書かれた少しおどろおどろしい看板が見えてくる。実はここ、コアな豚骨ラーメンファンに愛される超名店。ドライブ途中に見かけたら、“絶対に!”入ったほうがいい。最初に言っておくと、ラーメンには、もちろんマムシは入っていない。れっきとした濃厚“豚骨ラーメン”の店。その歴史、屋号の由来などしっかりと解説する。
「ラーメンまむし」の店主・小松秀昭さん(1968年福智町出身)は、北九州を代表する人気店「ぎょらん亭」の門を叩き、2006年に自身の店を独立開業。「ぎょらん亭」は料亭からスタートし、創業者の次男・山下洋二郎氏が編み出したラーメンが多くの豚骨マニアを魅了した。小松さんはじめ、複数の弟子も輩出している。この「まむし」の他、「ラーメン力」、「十割亭」(現在閉店)もそうだし、「ラーメン力」に習ったいわば孫弟子にあたる「拉麺エルボー」も活躍中だ。
ちなみに「ぎょらん亭」は1946年創業で知られているが、これはあくまで前身の料亭がスタートした年だ。ラーメンに関しては30年弱であることを、正しい麺史を知るために付け加えておく。だが、ラーメンにおいての“十割(豚骨100%)”、“二八(鶏20%、豚骨80%)”など、ツウ心をくすぐる独自のシステムを作り出すなど、ラーメン業界に与えた「ぎょらん亭」の功績は多大であることは間違いない。
「ラーメンまむし」の小松さんは、かつて工場勤務をしていた頃から大のラーメン好きで、食べ歩きが趣味であった。「最初に『ぎょらん亭』の一杯を食べた時には、それはもう衝撃でしたよ。『自分もこんなうまいラーメンを作って人々を感動させたい』。そう思ってすぐ、師匠の山下さんに入門をお願いしたんです」と小松さんは振り返る。
「まむし」はじめ「力」「エルボー」の暖簾をみても分かるように、「ぎょらん亭」系は“緑”がイメージカラーであり、製法に関しては「ゲンコツオンリーの取り切りスープ」が特徴である。
「まむし」の小松さんも、使うのはゲンコツのみ。肉がついた骨を大量に用い、13、4時間炊きながら、髄からも旨み、コラーゲンのとろみを出す。麺は名製麺所「田中製麺」。自分の考える最高の茹で加減で出したい、と麺の硬さの指定は受けず(年配客のためヤワ麺のみ受付)、替え玉もしていない。そして豚バラのチャーシューにはバーナーで炙りを入れ、大判のものに加え、細かく刻んだ肉を振りかけてくれるのもまむしスタイルだ。卓上の辛味噌を溶かしながらの味変も楽しめる。
そして、「ぎょらん亭」でいうところの“二八(鶏20%、豚骨80%)”は、鶏ガラスープをブレンドする「あっさり」オーダーという形で表現する。
屈強で頑固な小松さんが作る一杯は猛々しくも、どこか懐かしい。
うまいな〜(しみじみと)。
福岡には「ふくちゃんラーメン」を起点とする通称“ちゃん系”という“愛され豚骨”があるが、北九州においては“ぎょらん亭系”、その一派を食べ比べるのも楽しいだろう。
筆者的には「ラーメンまむし」が文句なしにNo.1。
福智町のふるさと納税や取り寄せラーメンでも絶品のラーメンを堪能できる。
【ラーメン まむし】
住所:福岡県田川郡福智町伊方2465-2
電話:0947-22-6390
営業時間:11:00〜14:00、売切れ次第終了
休み:火曜 ※月曜が祝日の場合、月火曜連休
席数:20席(カウンター6、テーブル14)
駐車場:15台(無料)