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知っておきたい慢性誘発性蕁麻疹の最新情報:診断から治療まで徹底解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【慢性誘発性蕁麻疹とは? その症状と原因】

慢性誘発性蕁麻疹(CIndU)は、特定の刺激によって繰り返し発生するじんましんや血管性浮腫を特徴とする皮膚疾患です。一般的なじんましんとは異なり、CIndUは特定の物理的または化学的な刺激によってのみ症状が現れます。

例えば、寒冷蕁麻疹では寒い環境に触れることで、コリン性蕁麻疹では体が温まることで症状が出現します。症状の持続期間は数分から数時間と様々ですが、繰り返し発生するため患者さんのQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。

CIndUの発症メカニズムは完全には解明されていませんが、最近の研究で新たな知見が得られています。皮膚のマスト細胞(肥満細胞)の活性化とIgE抗体の関与が重要な役割を果たしていることがわかってきました。

【診断方法と最新の治療アプローチ】

CIndUの診断には、詳しい問診と特殊な誘発試験が必要です。例えば、寒冷蕁麻疹の場合は氷を皮膚に当てる試験を行います。また、症状の程度や生活への影響を評価するために、特殊な質問票なども使用されます。

治療の基本は、第二世代抗ヒスタミン薬の服用です。しかし、標準量では効果が不十分な場合も多く、その場合は増量や他の薬剤の追加を検討します。最近では、オマリズマブという生物学的製剤が難治性のCIndUに効果を示すことがわかってきました。

CIndUの治療は個々の患者さんの症状や生活スタイルに合わせてカスタマイズすることが重要です。薬物療法だけでなく、誘発因子を避けるなどの生活指導も併せて行うことで、より効果的な症状コントロールが可能になります。

【研究の最前線:新たな治療法の可能性】

CIndUの治療法開発は日々進んでいます。例えば、BTK阻害薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤が注目されています。これはマスト細胞の活性化を抑える作用があり、慢性蕁麻疹の治療に効果があることがわかってきました。

また、抗IL-4受容体抗体であるデュピルマブや抗IL-5受容体抗体であるベンラリズマブなど、他のアレルギー疾患で使用されている生物学的製剤のCIndUへの応用も研究されています。

さらに、マスト細胞を直接標的とする新しい抗体医薬品の開発も進んでいます。これらの新しい治療法が実用化されれば、より多くのCIndU患者さんの症状改善につながる可能性があります。

CIndUは一見単純な皮膚症状に見えますが、実際には複雑なメカニズムで発症する難治性の疾患です。しかし、研究の進歩により、より効果的な治療法が次々と開発されています。症状でお悩みの方は、ぜひ皮膚科専門医に相談してください。適切な診断と治療により、QOLの改善が期待できます。

参考文献:

Muñoz M, et al. New insights into chronic inducible urticaria. Curr Allergy Asthma Rep. 2024;24(1):1-14.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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