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因縁の決着戦をどう戦う? 前WBA世界Sフライ級王者アンドリュー・モロニーが語った

杉浦大介スポーツライター
Mikey Williams/Top Rank

8月14日 オクラホマ州タルサ 

WBA世界スーパーフライ級タイトル戦

王者

ジョシュア・フランコ(アメリカ/25歳/19勝(8KO)1敗2分1無効試合)

12回戦

前王者

アンドリュー・モロニー(オーストラリア/30歳/21勝(14KO)1敗1無効試合)

 昨年6月、フランコがモロニーに判定勝ちで新王者になったが、同11月14日に立場を変えて迎えた再戦では2回までモロニーが優位に試合を進めた。しかし、偶然のバッティングで右目が腫れたフランコが2回終了後に続行不可能になったためノーコンテスト(無効試合)に。「バッティングではなくモロニーのパンチが原因だった」と見た人が圧倒的に多く、試合後は紛糾した。結局、昨年12月10日にWBAがモロニーとフランコに即時の再戦(第3戦)を行うように通達する事態となった。

9ヶ月の時を経て迎える決着戦

――フランコとの因縁のラバーマッチが間近に迫っていますね。

アンドリュー・モロニー(以下、AM) : こうしてまたアメリカに戻ってこれたことを嬉しく思います。そして、長い時間をかけて準備した試合が目の前に迫っていることにエキサイトしています。

――あの日に起こったことを絶えず頭で反芻してきましたか?

AM : 前戦から約9ヶ月も間が開いてしまいましたが、その間、あの試合のことを考えない日は1日もありませんでした。本当なら世界王者に返り咲くはずが、そうはならなかった。あの日の悔しさを常に頭の中に置き、準備を続けてきました。

――これだけ期間が開いても、モチベーションを保つのは難しくはなかったんですね。

AM : 私にとって非常に重要な戦いを控えているので、モチベーションの持続はまったく問題ではありませんでした。もともとは4月に予定された試合でしたが、延期が繰り返され、異なる予定日を頭に置いて準備を進めなければいけないのは難しいことではありました。ただ、良かったのはさらに向上する時間ができたこと。今では素晴らしいパフォーマンスを見せて今回こそタイトルを取り戻す自信があります。このブランクは良いことだったのだろうと捉えています。

――昨年11月の試合後、いつ頃から練習を再開したんでしょうか?

AM : オーストラリアに戻り、ホテルの部屋での2週間の隔離期間中から軽いトレーニングは始めていました。隔離が終わった後、すぐにジムに戻ってハードなトレーニングを積みました。長いトレーニングキャンプの中で多くのスパーリングを積み、試合の4週間前にアメリカに入国する前から良い準備ができたと思います。人生最高のコンディションが作れたと言って良いでしょう。

――フランコとの第3戦はオーストラリアで開催されるという話もありましたが、そのプランはどうなったのでしょう?

AM : その計画が停滞したことがこの試合の挙行が遅れた理由です。オーストラリアでの開催を熱望してきましたが、母国の様々な規制は変わらず、外国から入国するものたちは依然として隔離しなければいけません。フランコ、(アンダーカードで)ジェイソンと対戦するジョシュア・グリーア・ジュニア(アメリカ)は試合前にホテルで隔離されることを望みませんでした。とにかく早く試合を行うことを優先し、結局は今回もアメリカ開催となったわけです。

――ラバーマッチの鍵は何だと思いますか?

AM : 私が自身のスタイルを貫いて戦い抜くことです。第2戦でやったように、インサイドでも、アウトサイドでも、試合を完全に支配すること。判定にせよ、KO決着にせよ、より優れたボクサーである自分がその能力を誇示できるかどうかが鍵になるはずです。

――すでに2度対戦したあなたから見て、フランコの長所と短所とは?

AM : 長所はフィジカル面で強いことと、それを利用して相手にプレッシャーをかけられること。一方、攻め方は短調であり、私のボクシングスキルで上回れるものだとすでに確信しています。

もう一つのトリロジーの決着も?

――前回の結果で紛糾した後で、今回は何の論議も呼ばないKOで決着をつけたいと考えていますか?

AM : もちろんKOで決着をつけたら素晴らしいと思います。ジャッジの手を煩わせずに勝てればそれが最善です。もし判定にもつれこむとすれば、大切なのははっきりとした形で試合を支配すること。その上でジャッジが適切な判定を下してくれることを願うしかありません。

――今のあなたはまずはフランコ戦に集中しなければいけませんが、いずれファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)対ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス(ニカラグア=帝拳)の勝者と戦いたいと話している記事を読みました。その希望は依然としてありますか?

AM : スーパーフライ級には多くの優れた選手がいるので、私もそういった対戦が考えられる位置に早く達したいですね。仰る通り、まずはフランコのことしか考えていませんが、この試合に勝てば明るい未来が開けるはずです。いつかエストラーダ、チョコラティート、あるいは井岡一翔(Ambition)、シーサケット・ソーランビサイ(タイ)、カルロス・クアドラス(メキシコ)、ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)とも対戦できればと願っています。

――この1年強で多くを経験しましたが、ボクサーとしての今の目標は?

AM : 今はとにかくフランコに勝って世界王座に返り咲くこと。敗戦の雪辱を晴らし、2度目の世界タイトル奪取を果たせば、素晴らしい気分を味わえるはずです。その瞬間が今から楽しみです。

――最後の質問ですが、今回のアメリカ滞在中にテレンス・クロフォード(アメリカ)と卓球で決着はつけられそうですか?

AM : (爆笑)。ラスベガスでは私たちは1勝1敗だったので、そちらのトリロジーにも決着をつけなければいけませんね。近々、第3戦が実現できることを願っています。クロフォードがオクラホマ州まで来るとは思いませんが、もしも来たら、卓球台とラケットを見つけなければいけません。今回は難しくとも、いずれ決着戦の時は来るでしょう。

――クロフォードに勝つための鍵とは?

AM : 卓球をプレーする際のクロフォードは非常に守備的で、ほとんどリスクは冒しません。堅実に打ち返し、相手のミスを待つスタイルですね。だからこちらも無理をせず、ミスを避ける必要があります。それさえできれば、勝つのは私だという自信はあります(笑)

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スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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