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トナカイさんへ伝える話(171)6月4日、東京地裁

小川たまかライター
6月4日、東京地裁(筆者撮影)

 短めの記事です。6月4日、東京地裁で裁判傍聴をしてきました。

 一般社団法人Colabo(代表・仁藤夢乃氏)が、「エコーニュース」というニュースサイトの編集長・江藤貴紀氏(Xアカウント・音無ほむら @echonewsjp)が「大量脱税」などと発信したことを訴えた裁判です。この日は江藤氏の本人尋問でした。

目次

1、傍聴席の様子

2、被告代理人(岩本瑞穂弁護士)からの主尋問

3、原告代理人(神原元弁護士)からの反対尋問

4、全体についての感想

1、傍聴席の様子

 ほぼ満席。座席を15〜20席ぐらい埋めていたのは法務省かどこかの職員の人たちで研修中の様子でした。開廷前にチューターの札を下げた人が来て「裁判官が入廷したら立って一礼します」というような説明をしていました。わざわざこんな裁判で研修とはね。

 それ以外はColaboの支援者が20人弱。エコーニュースの支援者も何人かいたのかも?

 また、私は気づかなかったのですが選挙ウォッチャーのちだいさんがいらしてたようです。終わった後に傍聴の様子を音声配信していました。

  うーん、私もほぼ同じような印象を受けました。法廷の様子(特に神原弁護士の詰め方)がわかりやすいです。

2、被告代理人(岩本瑞穂弁護士)からの主尋問

 被告代理人は戸田総合法律事務所の中澤佑一弁護士と岩本瑞穂弁護士です。

 『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 第4版』などの著書があり、各地で講演活動や研修も行っている中澤弁護士が尋問するのかと思いきや、若手の岩本弁護士の担当でした。30分時間が取られていたところ15分ほどで終了。あっさりした主尋問でした。

 江藤氏は被告代理人からの主尋問で「(大量脱税という見出しの記事は)Colaboが脱税をしたという意味ですか?」と聞かれ、「いえ、そうではありません」「可能性があることを明示したものです」などと答えていました。

 「これまで(Colaboを)取材したことは?」「はい、5〜6回問い合わせフォームからメールを送りました。一度も回答はありませんでした」などのやり取りも。

3、原告代理人(神原元弁護士)からの反対尋問

 こちらも30分の予定でしたが、陳述書に関する神原弁護士の質問に江藤氏がどこの部分かを確認する場面が多く、神原弁護士が時間切れを懸念。裁判長がその分、少し長く時間を取りますと調整をしました。ちだいさんが「アディショナルタイム」と言っているのはそれのこと。

 神原弁護士が反対尋問で聞いていたのは、江藤氏がどのような取材をし、どのような根拠を持ってColaboを批判する記事を書いていたか、という点です。やりとりは下記のような感じ。

※法廷での録音は禁止なのでメモを元に書いています。メモを取りきれなかった部分や、語尾などに不正確な部分もあると思います。以下同じ。

神原「あなたは裏づけ取材はしない?」

江藤「いえ、違います」

神原「新宿区と契約した団体を聞ききましたか?」

江藤「聞いていません」

神原「『調査報道』のサイトと銘打っているのに、独自の推論で書いていませんか?」

江藤「いいところを持ってきていないですか」

(他の場面)

神原「僕の質問はね、本件記事を書く際にこれを参考にしなかったのかと」

江藤「明確に記憶していません」

神原「それじゃ(疑惑の真偽は)わからないということになりません?」

(他の場面)

神原「『1万円の和牛コース料理、経費で落ちるなら食べたいわよ?』とあなたは書いている。これはどういう意味」

江藤「これは写真を引用しての投稿で、『落ちるのなら、食べたいわよ』でありまして」※「なら」を強調

神原「仁藤さんが1万円のコース料理を食べたと、そう主張しているんですか?」

江藤「それは不明です。豪遊しているとは主張しております」

神原「これは豪遊の証拠にはなりませんね?」

江藤「これだけではありません」

(他の場面)

神原「あなたの記事には、Colaboが新宿区の仕事を受ける要件を欠いていたのに、3万6000円を受け取った疑いがある、という内容が書いてある。Colaboが要件を欠いていた点について……(メモ取りきれず)」

江藤「(質問の内容がわからないという趣旨の回答)」

裁判長「あなたはColaboが要件を欠いていたと認識していたかどうかという質問です。あなたの認識では、欠いていましたか?」

江藤「私の認識では欠いていました」

神原「それを新宿区に確認しましたか?」

江藤「え〜〜〜。……確認していないですね」

神原「(記事の中にある)『大量脱税』、赤く塗ってある。赤くしたのはあなたですね?」

江藤「私ではありません」

神原「誰ですか」

江藤「請負業者です」

神原「あなたがオーダーした?」

江藤「そうです」

神原「大量脱税は、多額のという意味か、何回もの意味か」

江藤「多額という意味」

神原「『(Colaboが)ほむらちゃんを、もし訴えなかったら、「はい脱税してます」と認めるようなものね』『(Colaboに)税務署来るのは確実と思うわ?』について」

江藤「えーっと、(1年半前のものなので確実な記憶はないという趣旨の発言)」

神原「(「大量脱税」記事についての質問を重ねる)」

岩本「誤導です。前提に誤りがあります」

裁判長「前提も含めて聞いている質問かと思いますが」

岩本「……はい(座る)」

神原「私が確認する限り、大量脱税という文字は記事中にはない。タイトルに書いておいて本文にはない。どういう意図でそうなるんですか」

江藤「(聞き取れず)」

神原「質問の趣旨がわからない?」

江藤「質問の趣旨がわかりません」

神原「あなたは……(ツイッター投稿で記事を紹介してもクリックする人は少ないからタイトルが重要という意味の投稿を江藤氏がしていたことがある、という趣旨の指摘)」

江藤「それは私の発言ではありますが、当時と今は違う(ツイッターの仕様が変更になり、状況が以前とは違うという趣旨の回答)」

・「ヒートアップ」のくだり

 このほか、裁判長が「ちょっとすみません、お互いにヒートアップしているようですから冷静に」と止めた場面があり、直前のやりとりは私のメモではこんな風です。

神原「2014年の講演実績が載っている、この(Colaboの)活動報告書は見ていますか?」

江藤「見ております」

神原「ここに新宿区の講演はない」

江藤「勘違いだったかもしれません。(仁藤さんの)twitterでも情報収集しているので、活動報告書で見たと間違えたのかもしれない」

神原「(活動報告書を)見ればわかるのに」

江藤「質問を個別具体的にしてください」

神原「(活動報告書を)あなたは見たんですよね?」

江藤「見たが、陳述書を書く段階で誤りが入り込むことはございます」

神原 「(※メモ取れず)」

江藤「Colaboの活動報告書は非常に分厚く、全て暗記するのは難しい。仁藤さんのツイートと記憶が混同しているかもしれない」

神原「あなたの陳述書によると、ウィズ新宿とColaboの講演内容が同じであるためColaboの仕事と判断したと。なぜ講演内容が同じだと判断したのですか?」

江藤「知りようがないじゃないですか。講演に参加もしていないのに」

神原「……(江藤氏が書いた陳述書を)見せますね。ここに『講演内容』とある」

江藤「そういう意味の内容というのであれば。何をテーマにしゃべったかという意味で、事細かに何をしゃべったかという意味ではない」

裁判長「ちょっとすみません、お互いにヒートアップ……」

4、全体についての感想

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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