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トナカイさんへ伝える話(172)夏至の頃の更新

小川たまかライター

今日は最近の出来事から2つ書きます。

【目次】

(1)石丸伸二vs暇空茜の動画について

(2)「クィアな20代のフェミニストの女性」がイスラエル大使館前の抗議活動で逮捕された件

(1)石丸伸二vs暇空茜の動画について

※暇氏の話題に興味ない人ごめんなさい(それが普通)。でも、話題動画の内容を簡単に要約してまとめるのでよかったら読んで……。

 暇空氏がどうでもいい漫画クイズを出しまくって、ちょっとでも石丸氏が答えられないと下品に笑う……といった部分が多くの視聴者をドン引きさせていますが、細かく見ると面白いのは最初の方です。

 動画の6:00〜16:00あたりで、暇空氏は石丸氏の選挙前有料広告について詰めようとする。しかし結果的に失敗して、最後は「じゃあ番組が用意した弁護士さんに……(見解を聞いてみましょうか)」と提案しかけた司会の高橋さんを制止して議論を打ち切る。誰がどうみてもわかりやすく暇空氏が議論から逃げた場面。

 暇空氏は自分の推測を認めさせようとするのだが、石丸氏がそれぞれシンプルに返答するだけでスン……となってしまう。それが繰り返し見れば見るほど面白い。

(やり取りの要約)※「→」のあとの太字は私の感想です。

暇空:(略)ツイッターとユーチューブの広告に石丸さんは関与されているんですか?

石丸:はい。厳密には確認団体かな。

暇空:……なるほど。とするとこれは挨拶の有料広告で公職選挙法違反じゃないかと僕は思うんですが、石丸さんはこれはセーフだとお考えなわけですか。

石丸:はい。セーフです。

暇空:……なるほど。

→この時点ですでに暇空氏の反応が遅い。必要最低限の受け答えしかしていない石丸氏がうまい。

石丸:今、ネットの禁止行為の話をしてらっしゃいますよね。

暇空:……今、ツイッターとユーチューブの話をしています。

石丸:なので、ネットを使った有料広告で挨拶がダメという話ですよね。

暇空:……ネットを使った有料広告で挨拶がダメという話をしています。

→「そうです」と言えばすむところなのだが、素直に肯定すると死んでしまう病のために進次郎構文を彷彿とさせるやり取りになってしまう。

石丸:ですね。それは選挙運動の禁止事項の話じゃないですか?

暇空:選挙運動の有料広告とは別に、公職選挙法152条に、えっと、映しますね、画面に。

石丸:であれば……。

暇空:これです! 「候補者となるものが……」(152条を読み上げようとする)

→公職選挙法152条を切り札だと思っている。

石丸:わかります。一個ずつ確認するんですけれど、であるならば「(152条の)挨拶を目的とする」、この挨拶っていうのはものすごく限定されています。例えば暑中見舞いとかクリスマスカードとか、元々そうなんですね。公選法で禁止されていたもの。それがネット選挙の領域に入ってきて、同じように禁止されている。今回の広告は政治活動であり、挨拶が目的ではないので、適法です。

暇空:……なるほど。ではお聞きしたいんですけど、

→納得しちゃったのでサラッと話を変えようとしている。

暇空:ではお聞きしたいんですけど、石丸さんはさっきも言った通り、(選挙ドットコムのインタビューで)「金でしか勝てないとか、脱法的にポスターを街中に貼って顔を売って選挙に通るような政治家はやめるべきだ」とおっしゃっていましたが、まさに今、適法だからと言って事前にこういう広告をガンガン打つのは金で勝つ政治家じゃないんですか?

石丸:えっと今おっしゃったところなんですけど、脱法でポスター貼ったらそれはダメですよね。

暇空:ん?抜け穴って言ってましたよね?

→文脈を読めていない問い返し。

石丸:はい。だから……

暇空:あ、じゃあ石丸さんの表現をそのまま使うと、「法の抜け道を埋めているポスターの貼り方で、選挙の運動ではなくあくまで政治家のポスターとして広報活動を金をかけてやることは金で選挙に勝っているようなものだから、そんな人間は政治活動に向いてないのでやめてほしいです」とおっしゃってましたよね。

石丸:はい。

暇空:あと、「金を使って選挙を有利に運ぶなんてのはチート行為です」っておっしゃってましたよね。

石丸:はい。

→事実を指摘しても石丸氏は慌ててくれない。

暇空:有料の広告ってのは「金を使って有利に運ぶ」以外のなんなんですかね?

石丸:えっと、その時の話は、自民党の裏金問題の時のコメントですよね。

暇空:自民党の裏金で聞かれた時に、こうやって金で選挙で有利になってるんですっておっしゃっていて。きれいな金を使おうが、汚い金を使おうが、選挙で有利になるために金をつかうことには変わりはないんじゃないですか?

石丸:ええと、なので、違法な金が使われているというその目的に対して批評を加えました。

暇空:……ほお〜……。ほお〜〜……。

→暇空の敷いたラインに乗らずに石丸の文脈に戻すので暇空は反応できない。

石丸:はい。その文脈じゃなかったでしたっけ? ですよね。

高橋:一応視聴者さんのために補足。河合(克行)さんの事件が広島であって、自民党が元法務大臣の河合さんの時に違法にお金を集めて、その時の事件のことをおっしゃっているんですよね。

暇空:つまり石丸さんの意見をまとめると、自民党が裏金を集めてさらにその汚い金で金権政治をするのがダメだと言っただけで、裏金を集めていない石丸さんが、金でガンガン有利になることは問題ないとおっしゃっているわけですか?

石丸:うーん、金でガンガン有利になる……?

暇空:いやだって石丸さんと蓮舫さんだけですよ、今有料広告打ってるの。

→「蓮舫」の名を出せば自分のタイムラインでは勝てるので、ここでもそうすれば有利になると思っている。

石丸:それは法律で認められた政治活動であり。

暇空:認められているように僕思わないんですけど。事前運動じゃないかって思いますけどね。脱法的な。

石丸:ではどのあたりで法を犯しているというご指摘なのでしょうか。

暇空:えっとまず、石丸さんの公式講演会があるじゃないですか。公式講演会のツイートで、事前運動に当たるという解説をしていましたよね。事前運動についてのツイートで、「こういうのはダメ、こういうのならギリギリセーフかな」みたいなツイートを。「事前運動でこういうのがダメじゃないかなあ。例えば東京都知事選ならアウトだけど夏の決戦なら問題ないかなあとか、立候補者って言っちゃうと問題あるけど挑戦者なら問題ないかなとか。当選させてくださいって言ったらダメだけど、頑張るっていうならセーフだよね」こういうツイートをしているんですよ、このアカウントが。ここまで大丈夫ですか?

→「ここまで大丈夫ですか?」と聞くことで主導権を握っているように見せかけている。

石丸:はい。

暇空:僕は論理的につなげて考えることができるので、これを前提とするならば、「夏の決戦は、候補予定者の石丸伸二と一緒に頑張りたいです」っていうのを、このツイートと並べると、実質的に事前運動になると思うんですけど。石丸さんの清廉潔白に売りたそうなイメージと、相反する方向性じゃない顔ともうんですけどね。

石丸:えっといろんな推測が混じっていると思うんですけど(苦笑)「清廉潔白なイメージで売りたそう」っていうのはご感想の範疇、ですよね。それで、事前運動に当たるかどうかの解釈のところで論理的にと言われたんですけれど、それ独立した事象を繋げて解釈されていませんか。

→「僕は論理的につなげて考えることができる」からの「独立した事象をつなげて解釈されていませんか?」は、指摘されて一番恥ずかしいやつ。

石丸:法解釈そうなっていない。

暇空:あの、石丸さんも僕も、それを決める立場になくて、それを決めるのは裁判所であったり捜査機関だと思うんですよ。それをここで論争してもしょうがなくて。

石丸:え……(苦笑)。

→振り切った暇アノン以外の視聴者全員から共感を得たであろう苦笑。

高橋:じゃあ一回あれ、せっかく2万払っているので弁護士さんに……。

暇空:(かぶせ気味に)あ、あ、大丈夫です。弁護士いらないです。この件大丈夫です。

石丸:なんの質問だったの……。

→全視聴者が持ったであろう疑問。

暇空:いや単に僕は聞きたいこと聞きました。石丸さんがどういう見解か聞きたかっただけなんで。じゃあ次に行っていいですか。

→子どもの負け惜しみですね??

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)、共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)など

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