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岸和田市長「不貞行為はない」 本人尋問と矛盾する不可解な説明

小川たまかライター
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 大阪府岸和田市の永野耕平市長(46)が大阪府内に住む女性から民事訴訟で訴えられ、解決金500万円を支払って和解した件で、11月28日夕方、永野市長は記者からの取材に約40分にわたって対応したと報道されている。

 永野市長は「自分に非はない」と言い切ったが、その詳細については裁判記録の閲覧が制限されていることなどを理由に、話せないと繰り返した。和解調書に口外禁止条項は付けられておらず、説明責任を問う記者たちは質問を重ねた。

 この会見での発言は、5月に行われた本人尋問で永野市長が答えた内容と一部矛盾する部分があった。

ここまでの経緯

 女性は2021年7月に大阪府警に被害届を出すも、同年12月に大阪地検が不起訴に。2022年6月に損害賠償請求訴訟を提起した。

(女性側の主張)

 女性側は2019年6月〜2021年1月まで永野市長から継続的に性行為の強要があったと主張。その中には、市長以外の第三者2人との行為の強要もあったと訴えた。

(永野市長の主張)

 永野市長は本人尋問で、市長本人の行為については同意があり、女性とは2019年6月〜2021年1月まで交際している認識だったと主張。第三者の行為については「絶対にない」と否認した。

(裁判は和解に)

 裁判は11月14日に和解に。和解条項には、市長から女性へ500万円の支払いや、本件が法的紛争となったことについて市長から原告への謝罪が含まれる。裁判所がつけた前文には「原告と被告は男女として純粋に対等な関係にあったとはいえず」「(公人であり配偶者のいる被告が)原告と性的関係を持つことはよくよく自制すべきであったとの非難を免れることはできない」などが書かれていた。

▼詳細記事

岸和田市長、500万円を支払い和解 本人尋問で明かされた「被害内容」(2024年11月28日)


記者からの質問に「答えられない」を連呼

 朝日新聞が記事を出し、女性の代理人弁護士が会見を行った11月28日に永野市長は記者からの質問を受けたが、裁判記録に閲覧制限がかかっていることなどを理由に「答えられない」と繰り返した。

 

 和解内容に口外禁止条項は含まれておらず、記録の閲覧制限と裁判結果の非公開は別の話ではないかと記者に指摘されても独自の解釈を繰り出して回答を避け続けた。

▼11月28日夕方に記者からの質問に答える永野市長(カンテレNEWS)

 

 「口外禁止条項があったかなかったか、どちらなんですか?」という質問にも、「それは内容に関わるのでお答えできないんですよ」と避けた(9:10頃〜)。※女性側の代理人弁護士は口外禁止条項がなかったことを明らかにし、その上で記者会見を開いている。


 また、法的義務や責任があれば市民に説明するが、それがないので説明しないと言う市長に対し、記者が「和解で500万円を支払っているのであれば、その支払い義務について説明が必要なのでは?」と質問すると、「500万円の支払い義務についても、僕は認めてませんから」(23:30頃〜)と否定した。※女性側には11月29日に500万円が振り込まれた。

 この後、和解調書の内容と永野市長の「法的責任がない」という表現が矛盾するのではないかと記者に重ねて問われると、「和解の内容についてお話しできないんですよ」と繰り返した。 

本人尋問との明らかな矛盾

 会見の中で「これまでに不倫関係になったことはありますか?」という質問に対して永野市長は「いや、ないです」と答えた。これは、5月に行われた本人尋問で市長が女性との行為に「同意があった」としたり、女性と「交際関係」だったと説明していたことと明らかに矛盾する。

(会見で永野市長が記者からの質問を否定した場面の書き起こし)

20:54頃〜

記者「NHKの者です。前段なしでまったくフラットな質問として、不貞行為をしたことはありますか?」

市長「えっと、今関係ないと思います」

記者「公務中に不貞行為をしたことはありますか?」

市長「ないです。ああ、すみません。関係ないですけどね、関係ないです」

記者「すみません、読売新聞です」

市長「(NHK記者を振り返って)関係ないです、をちゃんと答えにしてくださいね。言い直したんで、僕。今の話は」

記者「ただですね、調書の中の指摘だと、公人で配偶者がいることにも触れて『非難は免れない』という所見を裁判所で示されていて、公人で配偶者がいるという点であってこういうことをしているので、その上で不貞行為をしたことはないと?」

市長「はい。あ、あのその内容に触れられると、それはあの、裁判の内容ですから、僕はお話しできません。あの、ちゃんとしたコミュニケーションの中で記事にするならしてくださいね。僕が今つい言ってしまったけどっていうのは、取り消した場合はちゃんと取り消してくださいね」

記者「この場で質問したことが…私の質問は、今質問するには関係がないという意味での関係がないっていう意味だったんですか?」

市長「そうですね、はい」

記者「わかりました。じゃ、この記事も鑑みた上で、これまで訴訟があったのと和解があったのを踏まえた上で、これまでに不貞行為をしたことはありますか? 不倫関係になったことはありますか?」

市長「いや、ないです」

記者「はい、わかりました」


 本人尋問の中で裁判長から「交際」について聞かれた永野市長は「誕生日にケーキを贈った」など具体的な説明を行い、日中に誘ってホテルへ行くこともあったと認めていた。性行為があったことは認めており、「同意」があったという主張だった。※女性側は同意はなく、強要だったと主張。裁判所は市長が公人であったことなどから、両者が純粋に対等な関係であったとはいえないと判断している。

 永野市長は裁判の内容を「話せない」の一点張りだが、そうでありながら、裁判で市長本人が語ったのと異なる説明を記者にするのは筋が通らない。裁判内容は秘匿と言いながら、裁判の内容を誤認させる発言をするのはなぜなのだろうか。

 なお、5月に行われた本人尋問は、原告・被告双方に遮蔽措置が設けられたものの一般に公開されており、傍聴席には大手紙記者やその他にも傍聴人の姿があった。

平日の日中に誘って何をしていた?

 つけ加えれば、本人尋問の中で永野市長は、次のような発言をしていた。本人尋問を聞いた筆者のメモによれば、原告代理人との間で次のようなやり取りがあった。

原告代理人弁護士「日中に誘って何をしていた?」

永野市長「ホテルへ行くこともあった」

 この場面のやり取りは、朝日新聞の記事にも書かれている。

 今年5月には市長が尋問に立ち、女性を食事に誘っても断られることが多かったと認めた。裁判官に「女性から誘われることはあったのか」と聞かれると、「ほぼない」と答えた。

 電話やメッセージは時間を問わず、平日の日中もあった。女性の代理人が「日中に誘って何をしていたのか」と尋ねると、市長は「ホテルに行くこともあったし、食事をすることもあった」と答えた。 岸和田市長、性的関係めぐり和解 地裁「優越的な立場、非難免れぬ」(朝日新聞/2024年11月28日)

 筆者はこの場面のやり取りを直前の流れから「平日の日中にホテルに行くこともあった」という回答だと理解した。そうでなかったとしても、公務中であるはずの平日の日中に女性に対して誘うメッセージを送っていたことを前提とする質問であり、市長はこれを否定していなかった。

 11月28日に記者会見を行った女性側の代理人弁護士はこの点について、平日の日中にホテルへ行ったという趣旨の回答だったとしながら「(市長は)なんのためらいもなく、ホテルに行ったりしたと答えた。私は質問をしながら非常に驚きで、これを岸和田市民が聞いたらどう思うのかと。公務をどう考えておられる方なのか」と感想を漏らしていた。

 これは傍聴した上での個人的な感想となるが、永野市長がこのとき「ホテルに行くこともあった」と答えたのは、女性と親しく交際していたことを示したいがためのように受け取れた。そうでないなら、こう答えた理由を説明してほしい。

 12月3日には岸和田市議会で全員協議会が開かれ、市長に説明を求めるという。市長はここでも「話せない」を貫くのか。本人尋問で自らが話した内容について、岸和田市民に対して説明が必要ではないだろうか。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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