コロナ禍による管理人さん不在で、分譲マンションが荒れ果てる?実状を調べてみた
現在、分譲マンションの多くは管理会社に管理委託を行い、管理スタッフが派遣されている。管理スタッフとは、一般的な呼び名で「管理人さん」である。
分譲マンションの生活は、この管理人さんなしには成り立たない。ゴミ出しの補助やエントランス・エレベーターの清掃、樹木の手入れを行い、マンション内に不審者が入り込まないようにするし、管理組合活動の補助もある。
果たす役割が多い管理人さんは、4月7日の緊急事態宣言以降、どうしているのだろうか。
ステイホームで自宅待機している?
そうなると、マンションの管理はどうなってしまう?
マンションによっては、通常どおり夜間も管理スタッフが常駐
まず、マンション居住者に聞くと、「人数は減っているが、管理人さんは勤務して、日々の仕事をこなしてくれている」「管理人さんはいるが、勤務時間が短くなった」「管理人さんとは別に、コンシェルジェがいるのだが、そのコンシェルジェ機能は休止している」などの声が聞かれた。
管理会社数社に電話取材したところ、一部管理人さんが派遣されていないマンションもあるようだが、その数は少ない。
じつは、4月に出された緊急事態宣言の後、マンションの管理人さんも仕事に出ないケースが予想され、分譲マンションの生活に支障が出るのでは、との懸念があった。しかし、大半のマンションで「管理人さん不在」の事態は避けられ、以下3つの管理態勢が主流になっている。
1、 ゴミ出しの日(週に3〜5日程度)に、建物内ゴミ置き場から清掃局引取り場所への移動や清掃等を行うために数時間出勤。その際、緊急の用事も済ませる。
2、 通常の業務とほぼ変わらぬ管理態勢を継続する。
3、 上記1と2の中間で、管理業務の一部(定期的な清掃を行うことになっている箇所の清掃作業など)を延期するなどで、時短勤務とする。
2の「通常の業務とほぼ変わらぬ管理態勢を継続する」には、24時間有人管理で夜間も管理スタッフがマンション内に常駐する、という態勢も含まれる。マンションによっては、安心感が大きい管理態勢が4月以降も続いているわけだ。
そこで、次に気になるのは、管理人さんの気持ち。現在、マンションの管理人さんは60代、70代の人が多い。シニアの方が多く、感染リスクを避けるため、自宅に籠もっていたいという人も多いはずだ。
そこのところを、さらに詳しく調べてみた。
住人の「安心感」のために
この時期なので取材できるところは限られ、唯一、住友不動産建物サービスから管理人さんの気持ちを具体的に聞くことができた。
同社の場合、自ら勤務したいと申し出る管理員(同社呼称)が多いという。
マンション居住者と顔馴染みになっているので、自分がいることで居住者が安心するはず。実際、居住者の顔を知っていれば、不審者の見分けがつきやすい。持病を抱える高齢者の一人暮らしなど居住者の情報も頭に入っているので、折に触れ、様子をうかがうこともしやすい。また、外国人居住者が多いマンションでは、日本特有のゴミ出しマナーなどサポートしなければならないこともある。
「多くの事情を知っている自分でなければ」という使命感で、休みたくないという管理員が少なからずいるわけだ。
同社に限らず、緊急事態宣言以降、普段より増えたゴミの片付け・エレベーター内の清掃・消毒、注意事項の掲出など、管理員がやるべき仕事はむしろ増えている。マンション居住者のことを考えれば、自宅に籠もっているわけにはいかないのだろう。
さらに、住友不動産建物サービスの場合、緊急事態宣言が出た後、「フロント」の仕事も増している、という。フロントとは、管理会社の社員で、各マンションの管理サービス責任者というべき立場の人を指す。
首都圏の大規模マンションであれば、2棟か3棟。中規模、小規模であれば7棟か8棟のマンションを受け持つのだが、管理室やコンシェルジェカウンターでの万一の感染予防のため、管理室内の机の間にアクリルパネルを立てたり、受付にビニールシートやソーシャルディスタンスのフットマークの設置など、こちらもやるべき仕事が増えているのだ。
緊急事態宣言で“管理レス”になることが心配された分譲マンションだが、質の高い管理サービスは可能な限り守られていた。