TSUTAYAとジュンク堂、そして「信愛書店」を使い分ける
●今朝の100円ニュース:売れ筋本 データで徹底(日本経済新聞)
この小さなコラム(「今朝の100円ニュース」)を含めると、月に30本ぐらいの原稿を書いている。僕は書くスピードが遅いというか体力がないので、「2時間書いたら2時間の休憩」というリズムでしか働けない。ただし、ソファでゴロゴロしていても仕事のことばかり考えている。取材や打ち合わせ、そのための移動、テープ起こしなども必要だ。完全に休めるのは食事の時間と日曜日ぐらい。「貧乏暇なし」という言葉がお似合いだ。
自営業の人は誰でも同じような状況だと思うが、フリーライターの数少ないメリットは設備投資がほとんど要らないこと。安いパソコンと筆記用具、ICレコーダー、机と椅子があればすぐに開業できる。取材のための交通費や飲食代などは出版社に請求することも多いので、経費も少なめだ。
「もっといい仕入れをしなくちゃダメだよ。うちは小さな税理士事務所だけど、最新かつ正確な税知識は生命線。高い専門書も必ず揃えている。新聞図書費は年間100万円を超すよ」
今年の確定申告では、お世話になっている70代の税理士先生からお叱りを受けた。ライターにしては書籍代が少なすぎるということだろう。確かに、自費で買っている本や雑誌は月に1万円程度だ。
活字で生計を立てているのだから、活字の仕入れも怠ってはならない(と自分に言っています)。知識やロジックを吸収するだけではなく、他の書き手の企画力や言葉選びなども知らないうちに学べるはずだ。
というわけで、今月からは書籍代を倍増し、「週に5千円は使う」ことを目標にして書店を訪れている。週1ぐらいでしか行けないので、安価な文庫本なども組み合わせると気になる本を5冊ほど一度に買える。
一度に1、2冊しか買わない場合、「失敗したくない」という気持ちが先立ち、売れ筋本や定評のある古典、自分が好きな作家(田辺聖子や池波正太郎です)の著作ばかりを買ってしまう。5冊買うことになると余裕が出る。ちょっと気になっていた本、棚で見かけて心惹かれた本、3000円もするので購入を躊躇していた本にも手が伸びる。買って後悔をする本は意外に少なく、むしろ「話題の売れ筋本」が期待外れだったりする。
今朝の日経新聞によると、データを重視した品ぞろえと棚割りでTSUTAYAが国内の書籍販売における実店舗最大手になっている。売れ筋に絞った結果、標準的な店では売り上げの3分の2が雑誌とマンガが占めているという。TSUTAYAだけでなく、郊外にある大型書店にありがちな風景だ。田舎に住む身としては「歩いて行ける距離に本屋があるだけありがたい」ので贅沢は言えない。
一方で、都会に行くと書籍の品揃えが広くて深い超大型店に入りたくなる。なくなってしまった新宿のジュンク堂が好きだったなあ。超大型店でなければ、「自分に必要なものばかり」を置いてあると錯覚するような小さな書店に入りたい。僕の場合は、東京・西荻の「信愛書店」だ。
一人暮らしの家ぐらいの小さなスペースに、マニアックすぎずメジャーすぎない本が並べられてあり、「この書名は聞いたことあるぞ。だけど大型書店では見かけなかった。面白そうだな!」という発見が多い。特に、ノンフィクションとサブカルチャーの棚は素晴らしく、お金があれば丸ごと買って自宅の本棚に移植したいほどだ。
田舎暮らしの日常はTSUTAYAの雑誌と売れ筋本で事足りる。でも、たまにはジュンク堂や信愛書店に行きたい。「多様性」もしくは「センス」を提供して商売が成り立つところが都会の数少ない素晴らしさだと思う。