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史上最多・最少が多かった、2016年子どもの統計

平岩国泰新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事
史上最多・最少がたくさんありました!2016年の子どもの統計(ペイレスイメージズ/アフロ)

2016年が終わり、2017年を迎えようとしております。2016年は子どもの世界でも史上また近年で最多・最少などの統計が多かった年になりました。統計からはこのようなことが見えてきました。

〇子どもの数が減り続けている

〇教育の質の面では文部科学省や現場の努力が見られる

〇子育てのノウハウ面での改善も見られる

〇共働き社会への対応が遅れている

〇悪いことをする子どもそのものの数は減っている

〇いじめ・虐待・家庭内暴力等の深刻な社会問題が悪化している

2016年に発表された統計から、最多・最少であったものをご紹介いたしますので、詳しく見ていきましょう。

まずは最多部門です。

<最多の部>

1、保育所入所児童

2016年:246万人

(2015年:237万人) *厚生労働省発表

保育所を利用する児童は8万人以上増え、史上最多となりました。保育所の数も初めて3万か所を超え同じく最多です。未就学児全体における利用率は39.9%となり、これも最多です。一方話題の「待機児童」は23,553人となり前年より微増しましたが、最多ではありません。最多は2010年の26,275人で、近年2.5万人前後で高止まりしている状態です。

2、学童保育の利用者数

2016年:108万人

(2015年:102万人) *全国学童保育連絡協議会資料

小学生の就労家庭を支える学童保育も年々利用者数が増加しています。昨年初めて100万人を超えましたが、今年も利用者は増え108万人になりました。学童保育の数も2万7千ヶ所を超え、これも保育所同様に最多です。保育所・学童保育は利用者も場所も増え続けています。

3、学童保育の待機児童数

2016年:15,839人

(2015年:15,533人) *同協議会資料

保育所の待機児童は2010年をピークに2.5万人前後で推移していますが、学童保育の待機児童は近年ずっと増加を続け最多を更新しています。そもそも「学童保育にも待機児童がいる」という認識が無い方も多いと思いますが、あれだけ話題になる保育園とほぼ同水準人数の待機児童が学童保育にもいるのです。保育所を増やせば当然学童保育も必要になりますが、整備が追い付いておりません。学童保育は2015年4月より「小学校6年生まで」に拡大されました(従来は概ね小学校3年生まで)。しかし実質的に受入が出来ずに小学4年になると学童からの自主的な卒業を勧められる「学童保育の肩叩き」も話題になりました。保育所でも学童保育でも待機児童にはなっていないが、施設があって子どもを預けられれば働きたいと考える「潜在的な待機児童」は30万人以上という試算もあります。まだまだ整備が足りないと見るべきかと思います。

4、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)における平均得点

2015年:小学4年(算数:593点 理科:569点) 中学2年(数学:586点 理科:571点)

(前回2011年 小学4年(算数:585点 理科:559点) 中学2年(数学:570点 理科:558点))

*文部科学省発表

子どもの学力の面でも過去最高がありました。PISAと並ぶ国際学力調査であるTIMSSの結果が公表されました。TIMSSでは小学校4年と中学校2年が試験を受け、40~50ヶ国が参加しました。心配される日本の子どもの学力ですが、概ね全ての教科において、順位があがり平均点は過去最高になりました。文部科学省もホッと一息というところでしょう。

ちなみに国別順位は以下のものでした。日本は全ての科目で5位以内に入りました。シンガポールの優秀ぶりが目立ちます。

画像

5、裸眼視力1.0未満の子どもの割合

2016年:小学校:31.5% 中学校:54.6% 高校:66.0%

(2015年:小学校:31.0% 中学校:54.1% 高校:63.8%) *文部科学省「学校保健統計速報」

今度は子どもの体の面です。今年は小中高校全てで裸眼視力1.0未満の子どもの割合が過去最高となりました。ちなみに統計開始以降最少だったのは、小学校:17.9%(1979年)中学校:35.2%(1979年)高校:51.6%(1985年)ですので、小学生で言うと当時の倍近くの水準に増えて来ていて、概ね3人に1人は視力1.0未満という状況です。

6、海外に在留している小学生の数

2015年:57,098人

(2014年:55,390人) *外務省「海外在留邦人数調査統計」

「留学する若者が減った」という嘆きの声が聞こえることがありますが、海外に在留する日本人の子どもは増え続けていて、過去最多となりました。2002年には39,584人でしたので、概ね10数年で1.5倍の水準に増えています。海外に在留する日本人が増えていく中でその子どもたちも増えています。ちなみに以下の通り、現地校に通う子の割合も増えています。ぜひ海外でも活躍する日本の子どもたちが増えていくことを願います。

海外在留小学生の通う学校の割合 *( )内は2002年の数字

現地校:  44%(34%)

日本人学校:28%(32%)

補習校:  28%(34%)

7、外国人留学生数

2015年度:20万8,400人

(2014年度:18万4,200人) *日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査」

海外に住む日本人が増える一方で、日本に留学に来る外国人の数も増え続け、年間で20万人を超え、過去最多となりました。アジアからの留学生が増えており、2015年度は93%がアジアからの留学生です。国別では約半数が中国からで最も多いのですが、中国の割合は微減傾向で、ベトナム、ネパールなどが伸びています。

留学生の国別割合 ( )内は昨年の数字

1位:中国  :45%(51%)

2位:ベトナム:19%(14%)

3位:ネパール:8% (6%)

4位:韓国  :7% (9%)

5位:台湾  :4% (3%)

8、いじめ件数

2015年度:22万4,540件

(2014年度:18万8,072件) *文部科学省発表

いじめは残念ながらを昨年を大幅に上回り史上最多の認知件数となりました。中でもここ数年は小学生での増加傾向が続いています。また被災地から避難してきた児童に対するいじめなど弱い者いじめの傾向が鮮明になってきているのも昨今の大きな課題と言えます。いじめの記事に関しては下記の記事もご参照ください。

<参照>子どものいじめと学級崩壊

9、児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数

2015年度(速報):103,260件

(2014年度:88,931件) *厚生労働省資料

悪化の一途をたどる虐待の対応件数も前年を大幅に上回りました。虐待の種類は「心理的虐待」が多く、虐待を受けた対象は「小学生」が最も多くなっています。「ひとり親家庭」や地域から孤立した「孤育て家庭」と虐待の関連も指摘されており、「こども食堂」などの動きも広がっています。

10、里親委託児童数

2014年度末:5,903人

(2013年度末:5,629人) *厚生労働省発表

里親に委託される児童数が前年度を超え、近年最多の水準となりました。社会的養護の必要な児童の保護施策として里親制度が再注目され徐々に広がっています。厚生労働省は10月を「里親月間」として啓発しています。ちなみに里親数および里親に委託される児童数は近年拡大していますが、40年前の昭和50年ごろと同水準で史上最多ではないです。昭和30年の統計では里親に委託される児童数は9,000人以上となっています。里親は古くて新しい制度になりつつあります。

続きまして、最少の部であります。

<最少の部>

11、子どもの出生数

2016年推計:98万1,000人

(2015年確定:100万5,677人) *厚生労働省発表

まずはなんと言っても子どもの生まれる数です。最少の代表格の数字です。12月の厚生労働省の発表によると2016年の出生数は98万1,000人となる見通しで、1899年の統計開始以降初めて100万人を割り込む水準となりました。少子化には歯止めがかかっておりません。人口分布によると、年齢別では現在の私の年齢である42-43歳の「団塊ジュニアの最後の方」の人数が最大です。それより若い世代はどんどん人数が少なくなっていきますので、少子化対策の効果もどんどん薄まっていきます。実際に私の同級生からはほとんど出産の話を聞かなくなってきましたし、諦めた方にも何人も出会いました。「出生数が最少に!」という記事を私たちはこれから毎年見続けることになるのかもしれません。

12、30歳未満の死亡者数

2015年:9,550人

(2014年:10,242人) *厚生労働省「人口動態統計」

若者が亡くなる数は減っています。30歳未満で亡くなる人の数はずっと下がり続け、近年最少となっています。そもそも子どもの数が減っているし、医療技術の向上や不慮の事故の減少なども重なりそのような結果となっています。大人も含めた全体の死亡数は右肩上がりで年間約130万人で戦後最多です。出生数は右肩下がりで100万人を切ったわけです。出生数から死亡数を引いた自然減は30万人を超え、これまた戦後最多の数となりました。亡くなる若者は減りましたが、人口減はどんどん加速しています。

13、虫歯の中高生の割合

2016年:中学生37.5% 高校生49.2%

(2015年:中学生40.5% 高校生52.5%) *文部科学省「学校保健統計調査」

虫歯は、1970年代にその割合がピークを迎えて以降、ずっと減少傾向にあります。2015年は中高生が過去最少を記録しました。ちなみに幼稚園35.6%(前年36.2%)、小学校48.9%(50.8%)でも改善傾向です。幼稚園・小学校の最少だった年は幼稚園(1949年:31.0%)、小学校(1951年:41.6%)と戦後ちょっと後のことで調査の精度なども考えると、今年が最少なのかもしれません。歯医者さんも虫歯になってからの”治療型”ではなく、虫歯になる前に行く”予防型”の利用に変わり、虫歯の子どもはどんどん減っています。

14、家出少年の発見・保護数

2015年:16,035人

(2014年:16,766人) *警察庁「少年の補導及び保護の概況」

みなさんは、若い頃家出をしたことがありますでしょうか?家出は全体的には逓減傾向です。2002年には2万人以上いた家出の発見保護数も1.6万人になりました。近年で最少です。どんな子が家出をしているか、割合は下記の通りです。

<種別>

未就学:2%

小学生:11%

中学生:39%

高校生:27%

大学生:2%

その他:19%

<男女>

男子:52%

女子:48%

15、20歳未満の暴走族の人員

2015年:3,464人

(2014年:3,527人) *警察庁「少年の補導及び保護の概況」

暴走族が減っています。皆さんもそう言われると見かけることが少なくなっていないでしょうか。2006年には20歳未満の暴走族人員は6,530人でした。10年で半減したことになります。お正月には毎年高速道路を暴走するニュースが流れていましたが、それも過去のことでしょうか。シンナー、校内暴力などの懐かしい匂いを感じる少年犯罪系の統計は概ね同様に減っています。「悪いことをする奴まで減るくらい草食化が進んでいる」という冗談ともつかないぼやきを学校現場で聞きました。しかし、明確に増えている少年犯罪があります。それは「家庭内暴力」です。家庭内暴力は2015年に2,531件発生し、こちらは毎年右肩上がりで10年間で2倍超になりました。犯罪も内にこもってきているのでしょうか。

ここまで2016年に発表された子ども関連の様々な統計の中から、最多・最少を見てきました。想像通りのもの意外なものもありましたでしょうか。

21世紀に入り、子どもの課題も悩み深いものが増えています。そして何と言っても新たに生まれる子どもの数がずっと減り続けています。

「子どもを産むことに不安が多すぎる。この“得体も知れない不安”こそが少子化の正体だ」と私に仰ったお母様がいました。社会全体で子どもを支え、新しい年は明るい話題の多い1年にしたいと思います。私たちも現場で頑張ります!!

新渡戸文化学園理事長/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、人事、経営企画、海外事業など担当。2004年長女の誕生をきっかけに、“放課後NPOアフタースクール”の活動開始。グッドデザイン賞4回、他各種受賞。2011年会社を退職、教育の道に専念。子どもたちの「自己肯定感」を育み、保護者の「小1の壁」の解決を目指す。2013年~文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年~渋谷区教育委員、2023年~教育長職務代理。2019年~新渡戸文化学園理事長。著書:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門(2019年発刊)

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