インドネシア人コロナ感染者急増、36人に 茨城県大洗クラスター連鎖か 関係者証言
茨城県大洗町でのインドネシア人の新型コロナウイルス感染者が急増し、少なくとも累計で36人に上っていることが16日、分かった。複数のインドネシア人教会関係者が筆者に証言した。同国人住民の推定実数の約6%に当たる。複数の事業所クラスターがコミュニティーや家庭を媒介して連なっている可能性を、教会や町の関係者は指摘している。
外国籍住民の情報については、差別や偏見を助長することがないよう、取り扱いに十分な配慮が必要だ。それを前提として、感染対策を統括する茨城県は、感染拡大防止に必要な情報は公開し、現場の町や外国人コミュニティーとの連携を強化する必要がある。そのことが、先回りのクラスター対策を支え、命と人権を守ることにつながる。
発表クラスター規模上回る
人口約1万6000人の大洗町で正規に住民登録しているインドネシア人は約400人。それ以外にオーバーステイの人が約200人いるとみられているが、それを加えても総数は約600人だ。感染者が36人だとすると、同国人住民の推定実数の約6%に相当する。
教会関係者らは、感染が確認されたとの連絡を受けている人の名前や勤務先、居住する集合住宅名などを挙げて、筆者と共に人数を数えた。36人のうち31人は日系人などの正規在留者で、それ以外の5人がオーバーステイだという。
県はこれまで、大洗町在住者の感染者急増に絡み、二つの事業所のクラスターの可能性がある感染者数を、計17人発表したが、国籍や二つの集団の具体的なつながりは明らかにしていない。しかし、教会関係者らによると、インドネシア人とみられ、家族やコミュニティーでつながっている。事業所を中心とする大洗町の同国人感染者総数が、事業所クラスターとして発表された人数を上っている可能性が出てきた。
県は11日、大洗町在住の10人の感染を発表し、うち5人が隣接するひたちなか市の同一事業所の従業員であると発表。それ以前に発表していた1人も同事業所の従業員であることを明らかにした。
16日には同町在住の22人の感染を発表。茨城新聞クロスアイによると、このうち大洗町内の事業所では、従業員男女9人の感染が判明し、従業員の感染は計11人となった。県は「事業所内でのクラスター(感染者集団)発生の可能性が高いが、共通のコミュニティーでの接触も多かったとみられる」と説明した。
県は16日までに県内9014人の感染を発表、大洗町の感染者は117人となった。
町長がインドネシア人に直接呼び掛け
「共通のコミュニティー」がインドネシア人コミュニティーに他ならないことを、大洗町は認識している。
国井豊町長は16日午後、大洗ナザレキリスト教会で町内四つのインドネシア人教会の代表者らと会い、感染拡大防止への協力を直接呼び掛けた。
町長は「先日、ひたちなかで皆さんの仲間の方がたくさんコロナになってしまった。2、3日前にも大洗で働いている人が感染してしまった。この後、子どもたちの感染が発表される。ひたちなかで感染した人からうつってしまったのだと思う。きのうも78歳のインドネシア人のお婆さんが、呼吸ができなくなって救急車で運ばれた」と、切迫した現状を説明した。
「日本とインドネシアとでは考え方や生活の仕方が違うだろうが、コロナ対策でやることは同じだ」と話し、感染者が出た場合の家庭内での隔離の徹底や、登校の自粛などを要請。「教会で集まるときには十分な配慮を」と訴えた。
インドネシア人教会は、オンラインでの礼拝などの対策に取り組んでいる。
大洗町は町立小学校1校(生徒441人)を17日から休校とし、保育所1施設(園児約60人)の休園を延長することを決めた。いずれも陽性者の出たクラスの子どもを中心にPCR検査を進めており、小学校は19日までの休校予定。保育所は検査結果を見極めて予定を決めるという。
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