自身の開幕へ向け「元気に投げられるのが一番」と自然体の能見投手《阪神ファーム》
1軍の公式戦が始まって、開幕2つ目以降のカードで先発予定の投手がファームで調整登板することも多い時期です。阪神も開幕時点で出場選手登録されている先発陣は3人。そのあとはこれから登録となります。そんな中、きのう3月31日のウエスタン・オリックス戦では、過去に3度の開幕投手も務めた能見篤史投手が先発しました。
ファームの試合で能見投手が投げるのは、2016年3月12日の教育リーグ・ソフトバンク戦(鳴尾浜)以来です。相手がファームといっても、やっぱり違いますね。格というか、安心感というか。三者凡退で切って取る場面は当然ながら、走者を出したあとの抑え方がさすがです。次は1軍の打者をビシッと抑え込むところを見られると期待しましょう。
ちなみに能見投手(38)と組んだのは岡崎太一捕手(34)、ともに自由獲得枠で入団した14年目の同期バッテリーです。一方のオリックスは2年目の山崎颯一郎投手(19)と、18年目を迎えたベテランの山崎勝己捕手(35)という“山崎コンビ”でした。きょう4月1日の阪神は高橋遥人投手と谷川昌希投手のルーキーリレーだったようですね。残念ながら5対2で負けています。
伊藤和投手の奪三振率がすごい
さて、能見投手を小虎日記で取り上げるのは恐縮ですが、若い選手にもかなり影響を与えたであろう試合内容とコメントをご紹介します。能見投手だけでなく、リリーフした3投手もまた無四球での完封リレーと好投。中でも伊藤和雄投手は1イニングで3つの三振を奪い、これで奪三振率(1試合で9回完投した場合の平均奪三振数)が、なんと27.000となりました。昨年までも奪三振率の高かった伊藤和投手ではありますが、すごい数字です。
ことしはまだ3月18日のソフトバンク戦で1イニング、20日の広島戦で1イニング、そして31日のオリックス戦で1イニングしか投げていません。でも、その3試合それぞれで3個ずつ、計3イニングで9三振を奪っており、これはつまり1試合に平均27奪三振という計算ですよね。アウトみんな三振って。まあ数字上は、です。
2月のキャンプ中に行われた練習試合や、教育リーグでは平均すると1イニングで1個未満だったのですが、ウエスタン開幕後は1イニング3個ずつで、その間に投げた3月24日の1軍オープン戦(対オリックス)は1イニング2三振でした。惜しくも!ただし、これを加えても奪三振率24.750というのは有り得ない数字ですからね。アウトのほとんどが三振という伊藤和投手に、今後もぜひ注目してください。
では3月31日のオリックス戦を振り返りましょう。打線は1回に相手エラーや緒方凌介選手のタイムリーで先制、3回に暴投で1点を追加しました。矢野燿大監督は、“打”で板山祐太郎選手、“走”で熊谷敬宥選手の名前を挙げています。
《ウエスタン公式戦》3月31日
オリックス-阪神 2回戦 (舞洲BS)
阪神 201 000 000 = 3
オリ 000 000 000 = 0
◆バッテリー
【阪神】○能見(1勝)-松田-伊藤和-Sモレル(1S) / 岡崎-小宮山(7回~)
【オリ】●山崎颯(1敗)(6回)-小山(1回)-K鈴木(1回)-鈴木優(1回) / 山崎勝-西村(9回表)
◆二塁打 阪神:板山
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]三:北條 (3-1-0 / 0-2 / 0 / 0) .211
2]指:荒木 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .143
〃打指:森越 (2-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .154
〃打指:今成 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .308
3]三:陽川 (4-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .143
4]二:板山 (4-3-0 / 0-1 / 0 / 0) .357
5]左:中谷 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .130
6]中:緒方 (3-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .261
7]捕:岡崎 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .222
〃捕:小宮山 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .167
8]右:江越 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .074
9]遊:熊谷 (4-1-0 / 0-0 / 1 / 1) .219
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
能見 6回 79球 (3-6-0 /0-0/ 0.00) 146
松田 1回 8球 (0-1-0 /0-0/ 0.00) 148
伊藤和 1回 16球 (1-3-0 /0-0/ 0.00) 146
モレル 1回 12球 (1-0-0 /0-0/ 0.00) 151
《試合経過》※敬称略
打線は1回に先制攻撃を仕掛けます。北條と荒木が連続で左前打を放ち、陽川は三振に倒れたものの1死後に板山が内野安打。ここでファーストが一塁へ悪送球して北條が生還!荒木も三塁まで進んで1死一、三塁。中谷の遊飛のあとで緒方が左前タイムリー!この回2点を先取しました。3回は1死から板山が初球を打って右中間への二塁打、中谷は右飛で2死となりますが、緒方の四球と岡崎の中前打で満塁として、暴投で3点目。
4回は熊谷の中前打と盗塁、1死後に代打・森越の三ゴロで2死となりますが、このとき一塁へ送球されるのを見て熊谷がすかさず三塁へ!ナイスランです。さらに連続四球で満塁と攻めるも、中谷が二飛に打ち取られて追加点なし。6回、7回は走者を出しながら併殺で、8回は三者凡退でチャンスを作れません。9回は荒木が選んだ1四球のみで無得点です。
投手陣は、まず能見が1回に1死から福田をショート内野安打で出しますが、2死後に自身の牽制で一、二塁間に挟んでアウト。2回は先頭の4番・縞田に中前打を許したあと、三者連続の空振り三振!3回と4回は三者凡退でした。
5回は内野フライ2つ(園部の三ゴロを北條が好捕)で2死を取ってから、7番・山崎勝をショート熊谷の送球エラーで出し、続く比屋根の左前打で一、二塁。初めて得点圏に走者を置いた能見ですが、次の張を空振り三振に仕留めて無失点。6回も三者凡退で投げ終えています。
そのあとキャッチャーが小宮山に代わり、7回は松田が登板。縞田、園部、後藤を三者凡退に切って取りました。8回の伊藤和は連続奪三振で2死として、坂本に中前打(セカンドの板山がはじく)を許しながら、3アウト目もやはり三振!
9回はファーム初登板のモレノが1死後に小島の中前打、次の縞田のゴロを自ら捕って送球…と思ったらポロポロと2度こぼして、それでも一塁でアウトに。最後は園部を151キロの真っすぐで右飛に打ち取って試合終了です。
能見に太鼓判、板山を絶賛の監督
試合後の矢野監督の話をご紹介しましょう。まず能見投手について。「ほぼ問題なく、次の1軍の登板には行ける内容やったね。順調。やることをキッチリやっている。的を絞らせないピッチングができていたし。その中でも、しっかりキレのある真っすぐが投げられていて、能見らしいピッチングだったと思う。(ファームを相手に)いい意味で余裕も感じられた。あとは上で、そのまんまを出せれば」
打つ方では、やはり3安打の板山選手でしょうか。「板山はずっといいね。最初の内野安打はラッキーだったとしても、次のヒット(右越え二塁打)は一発で初球を打った。きのう1軍の試合を見ていたら、ほとんどが追い込まれる前にヒットを打っていた。ワンスイングで決めるのが1軍やと思う」
確かに、とにかく初球、ファーストストライクを振っていますね。「それも、とりあえず初球を振っているんじゃない。しっかり打ちにいっている。最後のセカンドゴロも、いいポイントで、いいタイミングで振れていた」。さらに矢野監督は「結果、3安打で内容があった。すべてに。すばらしい!」と絶賛しました。きょう4月1日のオリックス戦は3三振を喫したようですが、ことしの板山選手なら大丈夫。そんな気がします。
変わらず自然体のベテラン左腕
1軍登板に向けて調整ということで、と言いかけたら能見投手は「調整じゃなかったかも」と笑いつつ「フォアボールもなかったですし、腕を振ってしっかり投げられたので、よかったんじゃないかな」と振り返りました。開幕までどのように?「どうこうっていうのはないですね。しっかり元気に投げられるよう」。元気に?「そこ大事ですよ!この年になると(笑)」。なるほど。
そして「ボールの質もよかったと(岡崎)太一が言ってくれたので、そのへんは自信を持って。落ちることなくしっかりやっていきます。元気に登板できるように」と言います。やっぱり元気に、なんですね。「そうですよ。ほんとに。元気に投げられたら一番です」。このあともまだ元気を強調していました。
帰り際、能見さんの開幕を楽しみにしています!と背中越しに声をかけると「開幕できるかなあ」というつぶやきが。とても久しぶりに能見投手を取材しましたが、昔とまったく変わりませんね。とってもナチュラルなところも、涼やかな顔と裏腹な関西弁も、真顔で言う冗談も。ただ違うのは「元気」という単語が多かったことでしょうか(笑)。
モレノ投手は、この日のピッチングに「よかったです」との感想。真っすぐも走っていたのではないですか?と聞かれると「もっと暖かくなったら、球速も出てくると思います」と話していました。なるほど、まだ寒いんですね。
「熊谷の走塁はピカイチ!」
ルーキー・熊谷選手は開幕のソフトバンク戦(タマスタ筑後)は3試合ともヒットを打っていたのですが、続く広島との2試合(由宇)は内野安打1本のみ。鳴尾浜での中日3連戦も内野安打1本で、大学との交流試合は2つともノーヒットでした。さらに30日のオリックス初戦(舞洲BS)も四球を1つ選んだだけ。
というわけで、4回の中前打は3月25日以来のヒットです。俊足の選手なので内野安打は多くて当然だと思いますが、やっぱりホッとしたのではないでしょうか。すかさず二盗を決め、そのあとの走塁も見事でした。
矢野監督も「走塁はピカイチやね!盗塁のスタートがいい。次の塁を狙う姿勢もいい。(4回の)サードゴロで三塁を狙えるのは、あいつの武器」と最大級のほめ言葉。また「バッティングもたまたま、いいヒットが出たし。自分のセールスポイントを伸ばしながらね」と期待を込めます。
熊谷選手本人には時間がなくてヒットの話を聞けていないのですが、走塁に関しては「ああいうのでアピールしていかないといけない」というコメントです。そして「あとは…守備ですね」という言葉も。前日の逆転負けに絡むエラーも含め、ここ2試合での3失策を反省していました。それでも前進あるのみ!くじけずに頑張ってください。
本人が一番もどかしいはず…
最後に中谷将大選手について。今回のオリックス戦で3月30日は二塁打を含む2安打だったのですが、31日はすべて走者を置いての打席で凡退してしまいました。1回に1死一、三塁で遊飛、3回が1死二塁で右飛、4回は2死満塁で二飛、7回は1死一塁で三ゴロ併殺打です。さらに。きょう4月1日も、満塁や走者2人を置いた場面が3度あり、結果は三振とフライだったそうです。
矢野監督は「真っすぐ、やろね。いいポイントでは振れていると思うけど、仕留めきれない。フライを上げてしまうのがアイツ自身ももどかしいだろうし、俺らもアドバイスするとこはしているんだけどね。バットの軌道がどうしても左肩が上がるというか、打ち損じているなっていうのは変わっていないから。速いボール対策は今後も必要かな」と分析しました。
何か1つ、ほんの少しのきっかけで変われるんじゃないか、と素人の私は思ってしまいます。それが何かわかれば苦労しませんよね。でも、きっと大丈夫。必ずあの豪快なバッティングを取り戻してくれると信じましょう。
<掲載写真は筆者撮影>