半世紀以上に渡る書籍のジャンル別出版点数動向を探る
個人営業の本屋の相次ぐ閉店やデジタル媒体の浸透で、不況感が加速する出版業界。書籍も苦境に立たされ出版社の経営不振話も珍しくない。それでは日本の書籍における出版点数はどのような状況なのか。戦後の動向を総務省統計局が刊行している「日本統計年鑑」の公開データから探る。
書籍の新刊点数全体は直近において2005年以降、一時的な落ち込みを見せたものの、最近になって再び増加の兆しを見せている。
それでは書籍のジャンル別の出版点数動向はどのような動きを見せているのだろうか。「総記」「哲学」「歴史」「社会科学」「自然科学」「技術」「産業」「芸術」「言語」「文学」「児童書」「学習参考書」と大別した上で、積上げ式、そして個別要素ごとに折れ線グラフに生成したのが次の図。「社会科学」や「文学」「芸術」関連の書籍が多いことが分かる。
目立つところでは1990年代前半に「芸術」の項目が急上昇している。色々な理由が想定されるが、1991年発売の写真集『Santa Fe』をきっかけとする写真集ブームが一因かもしれない(「芸術」項目に区分されたとすれば、だが)。2011年にも似たような現象が発生しているが、こちらは同年に発生した東日本大地震・震災の被害状況を撮影した写真を用いた、ビジュアル集的な書籍が数多く登場しており、それがカウントされた可能性はある。
また、項目中では数少ない減少傾向にある「総記」については、「主題が複数の分野あるいは全分野に及ぶものや逆にいずれの分野にも属しないもの」との定義を考えれば、百科事典の類の需要減少と合わせ、納得がいく。
今件データで注意してほしいのは、あくまでも「出版点数」であり、「印刷証明部数」や「販売部数」では無い点。書籍点数が増えても1点あたりの販売数が伸び悩んだのでは、業界の拡大・発展が起きているとは言えない。逆に「粗製乱造」の状態とも受け止められかねない。現状がすでにそのような状況か否かの判断は別として。
■関連記事: