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中国で国慶節の連休スタート リベンジ旅行は「遠くて、景観がきれいなところ」その理由は?

中島恵ジャーナリスト
四川省の観光地、九寨溝。美しい自然に癒されたい中国人に人気のスポットの一つ(写真:アフロ)

 10月1日、中国で国慶節(建国記念日)の大型連休がスタートした。今年は21世紀に4回しかないといわれる中秋節とのダブル祝日となる珍しい暦で、昨年よりも1日休日が多い。新型コロナウイルスの影響で遠出を控えていた中国人にとっては「リベンジ旅行」となり、およそ6億人もの人々が国内旅行に繰り出す見込みだ。

今年は北西部への旅行が人気

 中国の大手旅行会社、シートリップ(携程旅行)と中国旅行ホテル業協会が9月上旬に発表したレポートによると、今年の旅行先で注目されているのは西北地方だ。西北地方とは内陸部の陝西省、甘粛省、青海省、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区のこと。

 日本人には馴染みがない地域ばかりだが、都市名でいうと、西安、蘭州、敦煌、ウルムチなどで、これらの都市名なら聞いたことがあるという人は多いかもしれない。湖や砂漠、高原がある大自然の美しいところや、少数民族が多いところ、といった共通点がある。

 窮游網という旅行サイトでは、人気旅行都市トップ10(写真参照)は、以下の順となっている。1、三亜(海南島)、2、成都(四川省)、3、麗江(雲南省)、4、ラサ(チベット自治区)、5、重慶(四川省)、6、上海、7、大理(雲南省)、8、西寧(青海省)、9、広州(広東省)、10、敦煌(甘粛省)だ。

 

 同サイトの人気観光地トップ10には「中国最後のシャングリラ」といわれる稲城亜丁(四川省)、じ(サンズイに耳)海(雲南省にある湖)、玉龍雪山(雲南省にある山)、莫高窟(甘粛省の仏教遺跡)、麗江古城(雲南省の古い街並み)などの名が挙がっている。シートリップのレポートと重なる地域もあり、こちらでも同様に、内陸部で景観が美しい地名ばかりが並ぶ。

国慶節の人気旅行先ランキング(中国の旅行サイトから引用)
国慶節の人気旅行先ランキング(中国の旅行サイトから引用)

 むろん、内陸部の人々も旅行に出かけるので、北京や上海などの大都市にも大勢の観光客が押し寄せる。北京の故宮博物院や万里の長城、上海の外灘などの定番の観光地は黒山の人だかりでごった返すことだろう。今年は「ニュースで話題になった武漢の名所、黄鶴楼を見てみたい」として、わざわざ武漢(湖北省)に行ってみるという観光客もかなり多い。

 だが、北京や上海などの大都市に住んでいる人々は、せっかくの8連休という長期休暇でもあり、逆に「できるだけ遠くへ」そして、「できるだけ景観がきれいで、混雑していないところ」に行きたいという傾向がある。

人混みを避けて観光したい

 なぜ、景観が美しく、できるだけ人がいないところを目指すのか?

 国慶節を前にして、一足早く雲南省に出発した上海の友人夫婦は「当たり前ですよ」といいつつ、こう説明してくれた。

「今年は新型コロナがあった特別な年。本当は日本やタイなど海外旅行に行きたかったけど、残念ながらそれはできない。だったら、同じ国内でも、できるだけエキゾチックで、大自然があって、コロナのリスクが少ないところに行って、おいしい空気を吸ってリフレッシュしたい。美しい景色を見て心身ともに癒されたい。とにかく混雑しているところだけは避けたい。そう思っている中国人が多いのだと思います」

雲南省大理の風景(中国の検索サイト百度より引用)
雲南省大理の風景(中国の検索サイト百度より引用)

 人口14億人の中国で、大型連休に混雑していないところなど、まずない。そんなところを探すこと自体かなり困難なのだが、それでもできるだけそうしたいと考える人は、「公共交通機関ではなくマイカーを利用すること」を選んでいる。

 政府の交通運輸局は10月1日から10月8日まで高速道路を無料にすると発表した。そのため、遠方まで行けそうもない人々からは「マイカーを使って数時間で行けるところを選び、ブームになっている民泊をしたり、静かなリゾートホテルに泊まったりする」という声も挙がる。

 迎える側の全国の観光地では、インターネットによる事前予約制度を取ったり、ピーク時間の調整を取ったりして、新型コロナウイルスの防止策につとめている。その一方で、全国の1500カ所の観光地が入場無料か、または割引価格となり、20以上の省や市政府でも優待券を発行するなど、中国版GO TOキャンペーンも実施。

「健康コード」のアプリ提示やマスク着用など、コロナ対策を実施しつつ、低迷している地方経済も立て直したいという思惑だ。

 2019年の国慶節期間中に国内旅行をした人は約7億8200万人で、観光収入は約6500億元(約9兆8000億円)だった。今年は約6億人の見込みなので、1億8000万人ほど少ない。コロナの影響もあり、例年並みに回復することは難しそうだが、それでも「コロナ後」初めての大型連休で、財布のひもは緩みそうだ。各観光地では「海外旅行をしたかった人々が国内の各観光地に少しでもお金を落としてくれれば……」と願っている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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