【ジャズ生】難題を前に再び集結するタンゴのスペシャリストたち|小松亮太 タンゴの歌@東京オペラシティ
“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、ピアソラの問題作を取り上げたバンドネオン奏者・小松亮太のコンサート。
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アルゼンチン出身にしてポストモダニズムを代表する世界的な作家であるホルヘ・ルイス・ボルヘスが1931年に出版した初期エッセイ集『エバリスト・カリゴエ』に、ブエノスアイレスの夕暮れと夜なしにタンゴは生まれなかったーーという一節がある。
それほどにタンゴへの想い溢れたこの大作家だからこそ、既成のタンゴに限界を感じてアルゼンチンを飛び出していったアストル・ピアソラが1950年代に“タンゴの破壊者”として名を馳せると、彼に対してタンゴの本質を説こうとしたのだろう。
それに対してピアソラは、ボルヘスの詩や短編小説を取り上げて曲を付けた組曲「エル・タンゴ」を発表する。1965年のことだ。
この曲は、幻想文学をものしたボルヘスの作風をそのまま音楽(あるいはピアソラがめざしたタンゴ)にしようとしたのだろうか、構成や曲調は言うに及ばず編成までもが断片化され、かろうじてスタジオ収録の“作品”としてまとめられたものの、ライヴで全編を再現するのは不可能と言われていた。
これに着目した当代きっての“ピアソラ弾き”である小松亮太は、ピアソラの生誕90年となる2011年および歿後20年となる2012年に向けてピアソラとボルヘスのコラボ作品の上演を企画する。2011年には「ブエノスアイレスのマリア」(1968年発表作品)を準備するも東北大震災の影響で延期。これは2013年に東京オペラシティで アメリータ・バルタールとレオナルド・グラナドスの共演を得て大成功を収めた。
もうひとつの「エル・タンゴ」に関しては、2012年に三鷹市芸術文化センターを舞台にしたコンサートでの上演を計画。ところが、楽譜を取り寄せてみると、揃っているのは7曲中2曲。あとはメロ譜しかないことが判明して、慌てて小松自身が耳コピしたという“前歴”のある演目。今回はこの「エル・タンゴ」を、再びレオナルド・グラナドスを迎えて第1部に全曲再演される。
第2部ではピアソラの代表曲をアメリータ・バルタールが歌う。アメリータ・バルタールは、ピアソラが制作した『ブエノスアイレスのマリア』に主役として参加、2013年の小松版「ブエノスアイレスのマリア」でも圧巻のパフォーマンスを繰り広げた、ピアソラともゆかりの深い歌姫だ。
以下は、2月22日時点で発表されている第2部の演目。
では、行ってきます!
●公演概要
3月12日(土) 開場14:30/開演15:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル(東京・初台)
出演:アメリータ・バルタール(歌)、レオナルド・グラナドス(語り、歌)、小松亮太(バンドネオン)、タンゴ・オルケスタ・エスペシアル<近藤久美子(ヴァイオリン)、専光秀樹(ヴァイオリン)、原孝人(ヴァイオリン)、コー・ガブリエル・カメダ(ヴァイオリン)、御法川雄矢(ヴィオラ)、松本ゆたか(ヴィオラ)、松本卓以(チェロ)、松本晋(チェロ)、田中伸司(チェロ)、黒田亜樹(ピアノ)、鈴木厚志(ピアノ)、レオナルド・ブラーボ(ギター)、鬼怒無月(ギター)、佐竹尚史(パーカッション)、真崎佳代子(パーカッション)、岡北斗(オーボエ)、田場英子(ホルン)、池城菜香(ハープ)、KaZZma(ヴォーカル)、Sayaca(ヴォーカル)、相原れいな(ヴォーカル)>