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「博多華丸・大吉」「千鳥」が愛を注ぐ「5GAP」。25周年で噛みしめる不遇な時間と見据える今後

中西正男芸能記者
25周年を迎えた「5GAP」のクボケンさん(左)とトモさん

 昭和を感じさせるドタバタコントの中にセンスが光るお笑いコンビ「5GAP」。クボケンさん(43)のポップでコミカルなキャラクターと、トモ(48)さんの強くて鋭いツッコミが作る世界観が「博多華丸・大吉」さんや「千鳥」さんら先輩からも愛されています。今年25周年。不遇の時代やクボケンさんの大病など決して平たんな道のりではありませんでしたが、今噛みしめる思いと見据える今後とは。

先の見えないトンネル

トモ:25周年の記念ライブを6月にさせてもらいました。周年でのライブは今回が初めてだったんですけど、これまでを振り返る機会にもなったと思います。

周りで解散していくコンビもたくさんいた中、僕らがここまでやってこられた。それは先輩や周りの方々の支えがあってこそですし、改めて感謝だなと痛感します。

売れかけたこともありましたし(笑)、全くダメな時期もありました。本当にいろいろなことがありましたけど、一番のピンチは相方が入院した時でした。

2016年に大きな病気をして、手術もして、無事に帰ってこられるかも分からない。この感情は他のコンビの人は味わっていないものかなとも思います。

解散も考えましたし、芸人を辞めることも考えました。誰か別の人と組むという考えは自分にはなかったですし、ピンでやる気持ちもなかったんです。なので、相方ともうお笑いができないとなったら、それイコール芸人引退。それしかないと思ってましたしね。

そんな中、あらゆる先輩からも「なんでも言ってくれよ」とすごく温かい言葉もいただきました。ありがたいことだなとつくづく思いもしました。

クボケン:…。

トモ:相方がいないと困る。それは強く思いました。相方が入院して僕一人の時にも、吉本興業の社員さんが気をまわしてくださって営業の仕事を振ってくださったんんです。名古屋で1300人ほど入るホールでの営業だったんですけど、自分一人でネタらしきものを作ってやってみたんですけど、見事にスベりました…。

ま、後ろが「中川家」さんで前が「ウーマンラッシュアワー」でしたからね。スベり方も、より一層、色濃くなりました(笑)。「一人だとこうなるよな」と思うと同時に「やっぱり一人ではダメだ」と思い知りました。

クボケン:自分の病気もそうですし、芸人人生をグラフで表したとすると、上がったり、下がったりの25年だったと思います。

デビューしてすぐに「新しい波8」(フジテレビ)という「はねるのトびら」の前身番組に出演することになりまして。「あいつら、もうこれでいったな」という声もいただいたんですけど、そこから次のテレビ番組まで8年かかりました。

その8年には何もトピックスはありませんでした。日々のライブは細々とあるものの、先が一切見えないトンネル。どちらが出口なのか。そもそも出口があるのか。何も分からない。そんな期間でした。

「いつか見てろよ」

トモ:本当に何もない時期でした。ただ、お笑い界全体を見ると、劇場ブームとか盛り上がっていた時期でもあったんです。だけど、僕らは人気があるタイプではなかったので、日々劇場に出て、若い女性のお客さんから人気ランキングで上位に入るなんてことはなかった。

劇場は盛り上がってはいるものの、むしろ「ずっとこの空気の中でやっていくのはつらい」というのが正直な思いでもありました。なんせ、人気がなかったので(笑)。

クボケン:なかなか気持ちを保つのが大変でもありましたけど、劇場のランキングとは別に、先輩からは「お前らは面白い」と言ってもらえる。この言葉だけが励みでしたね。

実際に、先輩が自らのイベントに僕らを呼んでくださる。「博多華丸・大吉」さんや「千鳥」さんが番組でことあるごとに僕らの名前を出してくださる。これはね、本当に、本当に、ありがたいことでした。

トモ:あと、正直な話、ずっと人気がなかったので嫉妬もありました。「いつか見とけよ」というエネルギーがあったのも、ここまでやってきた一つの要素だと思います。

「全ての思いをパワーにする」みたいなきれいごとではなく、本当にただただ嫉妬なんです。嫉妬なんですけど、どこかで「女子高生を笑わせるためだけにやってるんじゃないんだよ」という思いが渦巻いてました。「いつか見とけよ」がある限り、やめるわけにはいかないですからね。それを果たす日までは。どこまでも、ただただ嫉妬なんですけど(笑)。

ただ、25年も経つと、今残っている人は全員面白いですからね。嫉妬も何もなくなりました。売れて当然の方々ばかりですし、嫉妬ではなく「すごい」と純粋に思うようにもなりました。面白くないと、ここまではやれないですから。

そして、年月を重ねていく中で、やっと自分たちのやっていることに年齢が追いついてきたとも感じています。昔からいろいろな方から「君たちは歳を取ってからのほうがどんどん面白くなるはずだ」と言っていただいてもいたんです。

確かに、もう二人ともいいオッサンになって学校コントをする。ドタバタのコントをする。その味というのがやっと出てきたのかなと。

いろいろな角は取れて、味は濃くなっていく。芸歴20年を超えてから初めて大阪・なんばグランド花月の舞台にも立たせてもらいましたし、自分たちでもその意味が分かってきた気がしています。

クボケン:おじいちゃんコントも、そろそろノーメイクでできるようになってきましたしね(笑)。

トモ:あと、ド直球のコントをやっている人が少なくなったのもあるかもしれません。

凝った構成になっている。最後で一気に伏線回収する。そういった「考えさせるコント」「練り上げられたコント」が主流の中、僕らのコントは「何も残らないバカバカしいコント」。

劇場でネタを見て腹を抱えて笑ったけど、家に帰ったら何をやってたか思い出せない。そんなことをよく言っていただくんですけど、それがまさに僕らが目指しているところでもあるんです。深いテーマを込めるとか、構成の妙で見せるとか、そういうことじゃないんだと(笑)。

クボケン:なので、コントを作っていても「ここがフリになっていて、実はこういう隠し要素があって、あとで意外な形で回収されていく」みたいな流れは、一番に却下です(笑)。お客さんに何かを考えさせるのは僕らの中ではダメだなと。

トモ:「ドリフターズ」の皆さんの笑いにすごくあこがれがあって、そういう色のものが作れればと思いますし、ゆくゆくは全国の公民館とかのツアーをやりたい。子どもや家族連れの方がたくさん来ていただくような。そう思っているんです。

区民ホールが自分たちの芸風に合う気もしますしね。大きな会場ではなく。人気者じゃないので、大きなところは怖いなというのもあるにはあるんですけど(笑)。いつか「クボケン、うしろ!」みたいなことができていたら最高だなと思います。

(撮影・中西正男)

■5GAP(ファイブギャップ)

1976年2月15日生まれで東京都出身のトモ(本名・秋本智仁)と1980年10月10日生まれで群馬県出身のクボケン(本名・久保田賢治)が99年にコンビ結成。吉本興業所属。ともにNSC東京校5期生。コミカルでインパクト満点のクボケンのキャラクターと、鋭く強いトモのツッコミが相乗効果を生んでいくドタバタコントが持ち味。コンビ名は二人の年齢差が5つであることに由来する。9月20日に東京・ルミネtheよしもとで25周年ライブ追加公演「続・幕開けでござんす」を開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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