村田諒太が語った井上尚弥 唯一対抗できる選手がいるとすれば...
井上尚弥は7月25日、有明アリーナで行われたタイトル戦で、WBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者スティーブン・フルトン(アメリカ)を下し、王座を獲得した。
この試合を解説した元WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太氏に、井上の強さについて語ってもらった。
井上尚弥の試合について
村田は開口一番「パワーの差が明らかでした。相手は戦いにくいチャンピオンでしたが、非力なパンチでは怖くない。尚弥のパワーがあれば判定までもつれることはないだろうと思っていました」と語った。
これまでの戦績を見ても、井上は9割近くのKO率で、フルトンは4割近くといったところだ。
パワーの差は井上も感じていただろう。左のガードを下げたデトロイトスタイルで戦っていたのがその証拠だ。
強烈なパンチを持っている選手であれば、被弾のリスクがあるためガードは上げていただろう。
8回KOという結果について聞くと、村田は「早ければ2、3ラウンド、もって4、5ラウンドで終わると思っていました。でも、フルトンは避けるのが上手かったり、チャンピオンになるだけの技術を持っていました。
尚弥は7ラウンドで少し劣勢になりましたが、その直後、8ラウンドで倒し切りました。(彼の)ボクシングセンスは魅力の一つでしょう」と話し、井上のKO勝利を讃えた。
井上の強み
村田は井上の強みについて「軽量級でありながら一発で終わらせる能力がある。一発があるからこそできるボクシングで、他の選手が持っていない武器ですね」と語った。
中・重量級に比べ、軽量級でのKOは少ない。体重が軽ければパンチの威力は落ちる、というのが一般的だ。
しかし、その常識が通じないのが井上だ。
村田は「パンチ力はもちろん、コンビネーションやスピード、勝負勘も持っている」と話し、「総合力が高いボクサー」と評価した。
試合でもパンチ力だけでなく、前半はジャブの駆け引きで相手を誘い込むなど、レベルの高いボクシングを展開していた。
階級を上げたばかりでパワー不足も懸念されていたが、王者をKOで下したことで、この階級でも十分に戦えると証明できただろう。
「フェザー級ではまだ分かりませんが、スーパーバンタム級なら足りないものはないでしょう。余裕でパンチ力も通じますし、他の選手たちが非力に見えます」
ライバル不在
スーパーバンタム級に上げたばかりだが、すでにライバル不在が取り沙汰されている井上。
年内にも、同級2団体統一王者のマーロン・タパレス(フィリピン)との試合が交渉されているが、
「今はちょっとタレント不足ですね。タパレスでは力不足です。強すぎるがゆえにライバルが見つからないのが勿体無いところです」と村田は語る。
パッキャオとメイウェザーのように、ライバルの存在は不可欠だ。井上にも今後、強烈なライバルが欲しいところだ。
村田に「井上と対抗できる選手がいるとすれば誰か」と質問をぶつけると、
「今のバンタム級やスーパーバンタム級ではいないでしょう。ですが、もし山中慎介さんがバンタム級のピークの時に戦っていたら面白い試合になったかもしれません。山中さんも一撃で終わらせる能力を持っていますから」と意外な答えが返ってきた。
確かに、バンタム級王座を12回防衛した山中慎介氏との対決は非常に興味深い。山中氏もKO率が高く、一撃で試合を決める「神の左」を持っていた。
現役選手では相手がいない、それほど今の井上は圧倒的な存在だ。
井上について語ってくれた村田諒太と筆者は、8月11日、新宿某所にてトークショーを開催する。
こちらでも井上の試合について、より詳しく語っていく。