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リーグワン激戦の試合の背景を読む&ディビジョン1第11節私的ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
サンゴリアスの流は緩急自在のコントロールに定評あり(写真は第1節)(写真:つのだよしお/アフロ)

 リーグワンのディビジョン1は、3月27日、2度目の休息週前最後のゲームを各地で実施。異なるカンファレンス同士でぶつかる交流戦の最後にあたる第11節では、準備の背景、試合に臨む個々の資質が透けて見えた。

 活動方針の見直しに揺れるシャイニングアークスは、江東区夢の島競技場にブラックラムズを迎える。

 当日は相手司令塔のアイザック・ルーカスにロックオン。自陣からのボックスキックはたいていこの人のふもとに蹴り込み、セットプレーからの1次攻撃でもこの人にタックルをさせる動きを多用したような。立ち位置を自在に変えて鋭いランを繰り出すルーカスに、ボールを持たない際にも圧力をかけようとの算段か。

 ブラックラムズに退場者が出たのもあり、接点へ圧をかけ続けたシャイニングアークスが多くの得点機を創出。42―12と快勝した。ただし対するルーカスも、隙を突いてのトライ、抜け出した走者へのタックルと要所で気を吐いていた。徹底的に警戒されたことで、苦境に負けない資質をかえって証明できた。

 スコア上の興味をひいたカードは、ブルーレヴズが初めてIAIスタジアム日本平に乗り込んで臨んだ一戦か。

 ホストのブルーレヴズは、前身のトップリーグの王者で今季実戦は全勝のワイルドナイツに25―26と肉薄。相手のレギュラーの休養および離脱が重なっていたとしても、ブルーレヴズがディフェンディングチャンピオンからシーズン4勝目をもぎ取りかけたのは確かだった。にじんだのは計画性だった。

 中盤より後ろからは多彩なキックを蹴り、あえて相手にボールを付与。得意の防御をさせる時間を最小化したように映った。

 得点機には、大外の防御の連動がやや遅れるのを突いてスコアを積み上げる。特に後半28分の勝ち越しトライ(直後のゴール成功でスコアは22―16)は、敵陣10メートル線付近で右サイドを大きく破ったのがきっかけだ。

 アウトサイドセンターの鹿尾貫太が防御ラインへ仕掛けるなか、その左隣にいたスタンドオフのサム・グリーンが、鹿尾の後ろへパス。受け取ったフルバックの奥村翔が、防御網と入れ違いになる形で大きく前進する。

 本来ならワイルドナイツの後衛がせりあがることで奥村の進路を防げたかもしれないが、この時は、そのリンクが切れた。ワイルドナイツは約9分前、守備範囲の広いアウトサイドセンター、ディラン・ライリーの10分間の一時退場を受け入れていた。

 結局、ブルーレヴズが止めを刺すまでの間、タックラーの真横への短いパスによりゲインラインを攻略。ワイルドナイツの看板である防御をどう破るかという考察の跡が、そこかしこににじんだ。

 相手の強みを消す努力をしたのは、昭和電工ドーム大分に立った両軍も同じだ。

 昨季準Vのサンゴリアスは、かつてサンゴリアスを指導してきた沢木敬介監督率いるイーグルスと激突。どちらもハイテンポな連続攻撃でスペースを突きたがるなか、互いに接点にジャッカラーを嚙ませてテンポを鈍らせた。

 勝負を分けたのは、試合終盤のプレーの遂行力か。28―27とわずか1点リードで迎えた終盤、頂上決戦への体制が強いサンゴリアスが一気に点差をつけた。

「勝てたね。惜しい試合でした」とは、かつてサンゴリアスでプレーしていたイーグルスの佐々木隆道アシスタントコーチ。最後の最後で攻め込んでからのミスが目立つようになったのは、厳しいゲームにおける心身の疲弊があったからか。そのような趣旨で聞かれれば、あえてシビアな見解を示した。

「(サンゴリアスには)タレントが揃っていますし、そんなこと(圧力がかかること)はわかったうえで戦っている。特にそこへの思いはないです。笛が鳴った時に、1点でも多く取っているほうが勝ち。どう、その結果を得るか。それを皆でやっていくだけですね」

 もちろんその傍ら、沢木体制2季目に入った選手たちの姿に「タフに戦えるようになった」と目を細めてもいる。指揮官は、こう展望した。

「プレッシャーを感じるなかで、そのプレッシャーを力に変える。そういうチームになっていければ」

<ディビジョン1 第11節 私的ベストフィフティーン>

1、クレイグ・ミラー(ワイルドナイツ)…ブルーレヴズ戦の終盤に出場するや、2フェーズ連続でのタックルなどで防御を引き締める。スクラムでも徐々に優勢に立った。先発した稲垣啓太も突進、ラックへの圧力とゲインライン上の攻防に尽力。

2、日野剛志(ブルーレヴズ)…再三のジャッカルでワイルドナイツの攻め気を削ぐ。スクラムでも、向こうの塊の中心を貫くよう押し込む。

3、オペティ・ヘル(スピアーズ)…レッドハリケーンズを34―3で下すまでの間、強烈なキャリーとスクラムで魅する。

4、ジェームズ・ムーア(シャイニングアークス)…フランカーとして先発。前半13分頃に自陣深い位置でジャッカルを決め、向こうの連続攻撃を寸断。続く22分頃にはモールへ刺さって前進を阻む。以後も接点にへばりつき、序盤から14人になっていながらタフに攻め込むブラックラムズを、42―12で下す。

5、ルアン・ボタ(スピアーズ)…強烈なチョークタックル、ラインアウトでのスティール、スクラムハーフから球を受けての突進と、サイズを活かしたプレーが光った。ワイルドナイツのロック、ジョージ・クルーズも、自陣ゴール前で粘りの防御を披露。 

6、ピーターステフ・デュトイ(ヴェルブリッツ)…力強い突進で防御の裏側へ抜け、時にキックで前方のスペースをえぐる。グリーンロケッツを36―10で下した一戦は後半こそやや消化不良気味も、この人は鋭い出足の防御を含めプレーに一貫性を保った。

7、クワッガ・スミス(ブルーレヴズ)…防御をすり抜けるラン、ジャッカルで王者との接戦を演出。

8、テビタ・タタフ(サンゴリアス)…接点で不用意な反則こそあったが、相手走者を押し戻すタックル。タックラーを跳ね飛ばしての2トライ奪取は圧巻。イーグルスとの接戦のスコアを、40-27とやや傾かせた。対するフランカーのコーバス・ファンダイクも要所でのジャッカルが光った。

9、流大(サンゴリアス)…イーグルス戦に先発。バックスペースへのキックでアンストラクチャーからの好循環を生み出す。5点リードで迎えた前半35分頃には、自陣中盤右で対するナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィの足元へ刺さる。小澤直輝の援護もあり、好走者をタッチラインの外へ押し出した。

10、サム・グリーン(ブルーレヴズ)…ワイルドナイツ戦の前半にチームが決めた2トライは、この人の走りが起点。後半10分ごろには、連続攻撃から一転、ロングキックで陣地を獲得。相手防御の圧が激しいとみての判断か。防御でも身体を張った。

11、テビタ・リー(サンゴリアス)…強さと速さを活かしたトライに鋭い「詰め」のタックル。

12、中村亮土(サンゴリアス)…タックルの連続、キックパスでのトライ演出、試合終盤におけるスペースへのパスさばきと、激しさと冷静さの均衡が絶妙。

13、ティム・ベイトマン(ブレイブルーパス)…スティーラーズとの打ち合いで攻守に渋い働き。インサイドセンターとして防御をひきつけるパス、要所でのジャッカルを披露。

14、根塚洸雅(スピアーズ)…持ち場とは逆のサイドでも防御に献身。勝負をつけてから迎えたラストワンプレーの局面でも、自陣深くへ駆け戻って相手の落球を誘った。攻めては、スワーブを切りながらタッチラインの外へ出ない走りを披露。空中戦での競り合いでも進化をのぞかせた。

15、ダミアン・マッケンジー(サンゴリアス)…序盤のピンチでは。相手アウトサイドセンター、ジェシー・クリエルが突進して作ったラックへ絡む。攻めては防御に近づきながらのパス、ゲインした味方へのサポートが光った。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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