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元ニュージーランド代表のアリ・ウィリアムズ、「ゆっくりな練習」の向きに反論【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
11日、都内ホテルで取材に応じるウィリアムズ。100キロ超でもスリムに映る。

今季限りでジャージィを脱ぐ34歳の怪物が、8月15日、世界選抜の一員として日本代表と激突する(東京・秩父宮ラグビー場)。

アリ・ウィリアムズ。2003、07、11年のワールドカップに出場するなど、世界ランク1位のニュージーランド代表(愛称オールブラックス)として77キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を獲得した。この数字は、同代表でロックを務めた選手としては歴代2位の記録である。

身長202センチ、体重112キロという大きな身体を、空中戦とランプレーで活かした。南半球最高峰スーパーラグビーのブルーズでは、かつて日本代表を率いたジョン・カーワンヘッドコーチのもとでキャプテンを務めたこともある。昨今はアメリカのラフ・ライダーズでプレーし、今季限りでの引退を表明している。

11日、メディアの共同取材に応じ、今回の試合への意気込みや国際舞台での皮膚感覚などについて語った。同日午前の練習(非公開)ではゆったりしたペースのセッションが続いたが、それでも本番では集中力を発揮できる旨を「頭ではハードワークしている」という言葉に込めた。

以下、一問一答。

――初練習は。

「日本はこれが初めてです。暑かった。それを経験できたのはよかった。試合当日? (笑いながら)少なくとも、私個人の動きは遅くなると思う! ただ、いいランニングラグビーができるようにしたい」

――限られた準備のもとで戦う混成チームの難しさ。

「基本的に、ラグビーは同じ動きのもとおこなう。皆、理解度も高いですし、問題はないかと思います。各チーム、同じムーブでも違うコールを使っていたりして、そこへの適応は必要ですが」

――日本について。

「元代表HCのジョン・カーワンとは知った間柄ですが、私自身は日本にとってあまり詳しくありません。エディー・ジョーンズはオープンラグビーを志向するコーチだと思います。我々のチームにはエディーと同じオーストラリア人の選手もいるので、そういった部分(知識)も活かしていきたい。日本代表はワールドカップへの準備中で、メンタルスイッチも入っていると思う。チャレンジングな試合になりそうです」

――(当方質問)ワールドカップ直前の代表チーム。どんな状態だと想像しますか。

「ここまでの時間はフィットネスを高める練習を積んで、いまからはコンビネーションを合わせるようにシフトしていると思います。フィジカルの部分はプログラム次第で調整できますが、大事なのはメンタル。先の試合を見据え過ぎず、目の前のことに集中できるように気持ちを持ってゆかなければ」

――世界選抜のオファーを受けた理由は。

「ワールドフィフティーンのロゴをつけることは大きなモチベーションになります。このチームには、ワールドカップを目指している選手もいます。彼らのセレクションへの助けになればいいと思います」

――世界選抜のチームにはグラウンド外での交歓という楽しみもあるはずです。ただ仰られたように、今回はワールドカップのメンバー入りを目指す選手も混ざっています。選手同士のモチベーションが違い、難しさがあるのでは。

「バーバリアンズ(世界選抜に相当する伝統的なチーム)であれ世界選抜であれ、楽しむという側面はあります。ただ、フィールドでは勝ちにこだわることに変わりない」

――(当方質問)以前、バーバリアンズに参加した日本人選手がこんな意味合いの感想を述べていました。「練習はゆっくりなのに、試合での集中力はすさまじい」。どうしてできるのですか。

「(苦笑しつつ)私たちはとてもハードに練習していますよ。ただ、ハードにとは、頭のなかでそうしているのであって、見た目にはゆっくりかもしれませんが。先ほども言ったように、グラウンドに立てば勝つという目的があるので、ハードな試合をするのには全く問題がありません」

――(当方質問)最近、世界のラグビーでは肉弾戦が激しくなっているように感じます。ターンオーバーに次ぐターンオーバー、ゲームテンポは右肩上がり…。実感を語ってください。

「ブレイクダウン(ボール争奪局面)まわりがますます重要になってきている。ここでいかに速い球出しをするか、守る側はそれをいかに遅らせるか、ここがゲームの肝になっている。ルールブック通りに正しくプレーするだけではやっていけないのが、いまのラグビー。そのあたりは、年を重ねたことで上手くできるようにはなりましたが…」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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