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特別定額給付金の再支給がいよいよ現実的に。緊急事態宣言は総人口の半数以上が影響を受ける

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

昨年4月と同様に小出しとなった緊急事態宣言

 1月7日、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県の1都3県を対象とした緊急事態宣言が発出されました。また、その後の各知事からの要請に基づき、政府は今日13日にも、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、岐阜県、福岡県、栃木県の合わせて7府県を対象に緊急事態宣言を出す方針です。

 昨年の緊急事態宣言も、4月7日に7都府県を対象に発出された後に、16日に全国を対象に発出されました。5月上旬の大型連休を前に行動を抑制するということが目的だったはずですが、今回の緊急事態宣言について政府は、感染の少ない地域もあることから、ステージ4相当の地域に発出することを目安にすると答弁していますが、現時点でステージ4相当に一部でも該当する都道府県は他にも複数あり、状況を静観しているだけではいずれ全国への発出も視野に入ってくることでしょう

 では、なぜ政府は今回、緊急事態宣言の全国再発出に消極的なのでしょうか。これについては、拙稿『再度の緊急事態宣言、都が発令を求め、国が発令をためらう理由とはでも述べた通り、全国への緊急事態宣言の発出は、それが特別定額給付金や持続化給付金の再支給に繋がるからだと考えます。麻生太郎副総理・財務大臣の下記の発言は、言い換えれば緊急事態宣言が全国に出されている国難の状態では特別定額給付金の支給理由になり得るとも言えるからです。

特別定額給付金というのは、緊急事態宣言を全国に拡大したという状況を踏まえて簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計の支援を行って、我々が連帯して国難を乗り越えていくためのものというのがあのときの、特別定額給付金を出したときの大前提です。緊急事態宣言が解除されている現在とは異なる状況で決定されたものであることはまず最初に申し上げておかなければいけないところだと思います。(財務省HP「麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(令和2年10月16日(金曜日))」

11都道府県といっても人口比では半数を超える

 政府の答弁通り、確かに47都道府県のうち11都道府県、割合としては4分の1という一部地域への発出であり、全国に拡大したという状況ではありません。一方、今日13日に発出される大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、岐阜県、福岡県、栃木県を加えた11都道府県の人口は、約7182万人であり、日本の総人口約1億2616万人のうち、約57%にもなります(出典:総務省統計局人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在))。現実的に、ステージ4相当の都道府県がほかにもあることや、熊本県など要請を検討している県がほかにもあることからも、「まだ11都府県」という感覚ではなく、「全人口の半数以上」が緊急事態宣言下にあるという認識を持つべきではないでしょうか。

 特にこれから年度末を迎えます。年末年始も経済的困窮者や生活弱者を中心とした支援が非営利組織を中心に多く行われてきましたが、年度末の決算時期を迎えて事業者の中にも事業継続の可能性を検討したり、大規模なリストラ、雇用契約の見直し(雇い止め)などを行う事業者も多く想定されます。政府は雇用調整助成金の活用などを事業者に呼びかけていますが、そのような中でも、既にコロナによる解雇や雇い止めが8万人を超えていることを踏まえれば、国民一人一人の生活をバックアップするための特別定額給付金の再支給など、経済的な支援策は更に強化すべきだと考えます。

第1回持続化給付金の締め切りは1月15日
第1回持続化給付金の締め切りは1月15日写真:ideyuu1244/イメージマート

 持続化給付金はどうでしょうか。人口の半数以上が直接的に緊急事態宣言の影響を受けるという事実に加え、これらの緊急事態宣言の影響を受ける都道府県の飲食店などが営業自粛をすることになれば、緊急事態宣言の対象外となる36道県に所在する取引業者や農業従事者にも明らかに影響を与えます。この影響というのが間接的であったり時間差があることで注目を集めにくいところなのですが、政府は今回、中小事業者に対する支援として、緊急事態宣言に伴う飲食店の自粛営業や不要不急の外出・移動の自粛により影響を受け、売上が減少した中堅・中小事業者に対して、法人40万円以内、個人事業者等は20万円以内の額を支給する一時金の支給を決定したと報じられています。

 一方、この要件として売上高が対前年比50%以上減少した場合となっていることや、金額が昨年実施した持続化給付金(中小企業最大200万円、個人事業主最大100万円)の金額のわずか20%であることから、対象となる事業者や十分な補償を受ける事業者が相当限定されることになります。また、「影響を受けた」という定義というところも曖昧であり、今日13日の衆議院内閣委員会の閉会中審査でもこの点が問題になりました。その点、全国一律の持続化給付金であれば、このような問題は起きません。

仮に再給付が決定しても、支給までは相当の時間が見込まれる

サービスデザイン推進協議会による中抜きが問題となった電通
サービスデザイン推進協議会による中抜きが問題となった電通写真:西村尚己/アフロ

 昨年、特別定額給付金や持続化給付金の支給が決定した際にも問題になったことですが、給付事務を担当する事務局の入札などの手続きにより、支給施策の決定から実際の支給までに相当の時間がかかりました。また、事務局の入札では落札した社団法人による「中抜き」の実態などが問題になったことから、年度内における給付事務委託先の変更という異常事態をもたらしています。これらの問題は全く看過できないものですが、一方で通常の入札案件にしてしまえば、国民へ給付金が支給されるのは、(昨年の前例をみるに)仮に2月中に支給施策を決定しても、年度内は厳しいのではないでしょうか。

 年度末の資金需要に対して十分に応えられなければ、事業者の意欲はさらに削がれることとなり、経済不況が加速することになります。また、それらは直接的に雇い止めや解雇をもたらすことにもなることから、経済施策についても「先手」の対応が菅政権に求められています。筆者は、現実問題として、全国へ緊急事態宣言発出は時間の問題でもあり、その際には特別定額給付金の再支給も現実的になると考えています。これまでも繰り返し述べていることですが、これらの積極的な経済的施策を政局や選挙前のバラマキとせずに弾力的に運用していくことが必要です。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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