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なぜバルサはモラタの獲得に近づいているのか?シャビの狙いと3クラブ間の交渉の行方。

森田泰史スポーツライター
2014−15シーズンのCL決勝で競り合うメッシとモラタ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

ストライカーの到着は時間の問題かもしれない。

バルセロナが、アルバロ・モラタの獲得に近づいている。シャビ・エルナンデス監督がモラタの加入を望んでおり、クラブは今冬の移籍市場で彼を確保するために動いてきた。

■アタッカーの補強

バルセロナはすでに1月のマーケットでフェラン・トーレスの獲得を決めている。移籍金固定額5500万ユーロ(約71億円)+ボーナス1000万ユーロ(約13億円)でマンチェスター・シティと合意。ダニ・アウベスを含め、シャビ監督就任後の補強第二号となった。

ラポルタ会長とフェラン・トーレス
ラポルタ会長とフェラン・トーレス写真:ロイター/アフロ

「我々は依然としてフットボールの世界で象徴的存在になっている。皆、準備を進めておくべきだ。我々は戻ってきた。その証拠が、フェランの獲得だ」とはジョアン・ラポルタ会長の言葉である。

「いま、具体的に選手について話すのは避けたい。そうすれば、その選手の価値が上がってしまうからだ。我々は監督が求める選手を補強する。フェランについては、シャビのゴーサインが出た。スカッドを良くするために、我々は働いている。我々は再構築の段階にあり、すべての可能性が開かれている」

■混沌の中に身を置いて

我々は戻ってきた。ラポルタ会長はそのように語った。実際、この数年のバルセロナはまさにカオスの中にいた。

ジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長の下、補強の方針は定まらなかった。バルセロナはバルトメウ政権で34選手を獲得。その一方で、40選手を放出した。現在主力として残っているのは、クレメント・ラングレ 、フレンキー・デ・ヨングの2選手だけである。

スポーツディレクター職や補強担当においても同様だった。アンドニ・スビサレッタ、ペップ・セグラ、エリック・アビダル、ラモン・プラネスと幾度となく交代が行われた。

モラタに関しても、2018−19シーズン、獲得を試みた過去がある。当時、チェルシーでプレーしていたモラタを移籍させようと、フアンマ・ロペス代理人と4ヶ月にわたり話し合いを続けていた。だが最終的には合意に至らず、アトレティコが獲得を決めた。

シティに移籍したグリーリッシュ
シティに移籍したグリーリッシュ写真:ロイター/アフロ

そもそも、冬のマーケットは、夏に比べて消極的だ。

ネイマール(契約解除金2億2200万ユーロ/約286億円/2017年夏)、キリアン・エムバペ(移籍金1億8000万ユーロ/約234億円/2017年夏)、ウスマン・デンベレ(移籍金1億500万ユーロ/約132億円/2017年夏)、ジョアン・フェリックス(移籍金1億2700万ユーロ/約165億円/2019年夏)、ジャック・グリーリッシュ(移籍金1億1700万ユーロ/約152億円/2021年夏)、ロメル・ルカク(移籍金1億1500万ユーロ/約149億円/2021年夏)と基本的にビッグディールが成立するのは夏である。

ボール奪取を試みるファン・ダイク
ボール奪取を試みるファン・ダイク写真:ロイター/アフロ

一方で、フィルヒル・ファン・ダイク(リヴァプール/2018年冬)、アイメリック・ラポルト(マンチェスター・シティ/2018年冬)、マルセロ(レアル・マドリー/2007年冬)、ルイス・スアレス(リヴァプール/2011年冬)、ダニ・アウベス(セビージャ/2004年冬)と冬の移籍で成功したクラブと選手もいる。

■モラタのオペレーション

ただ、モラタについては状況が少し複雑だ。

現在、モラタはユヴェントスにレンタル加入している。彼の保有権を有しているのはアトレティコだ。

まずはユヴェントスとの交渉がある。ユヴェントスはモラタの後釜としてマウロ・イカルディ(パリ・サンジェルマン)、ドゥサン・ヴラホビッチ(フィオレンティーナ)、アルカディウス・ミリク(マルセイユ)の獲得を考慮しており、いずれかを確保できればモラタの放出に問題はないだろう。

アトレティコは、この夏にアントワーヌ・グリーズマンがバルセロナから復帰した。その時に合意したレンタル終了時の条件付きの買取義務オプション(4000万ユーロ/約52億円)をフリーにするため、モラタを「換金対象」にする可能性が高い。

マジョルカに勝利したバルセロナ
マジョルカに勝利したバルセロナ写真:ロイター/アフロ

残すはサラリーキャップの問題だ。

新型コロナウィルスの影響で財政が打撃を受け、今季開幕の時点でバルセロナのサラリーキャップの額は9700万ユーロ(約128億円)に定められている。

2018−19シーズン(6億3290万ユーロ/約822億円)、2019−20シーズン(6億7100万ユーロ/約872億円)、2020−21シーズン(3億8200万ユーロ/約496億円)と比較して、これは劇的な変化だ。

セルヒオ・アグエロが現役引退を発表したが、その枠はD・アウベスのものだ。フェラン、そしてモラタに関しては、選手登録ができないというのが現状だ。

ユスフ・デミル、ルーク・デ・ヨング、フィリペ・コウチーニョ、サミュエル・ウンティティ、この辺りの選手を放出が決まらなければ、真の意味での補強は成立しない。

バルセロナを率いるシャビ監督
バルセロナを率いるシャビ監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

「ルークはプロの模範だ。彼の移籍が噂されている。しかし、彼はハードワークをして、犠牲を払っている。スーパーなプロフェッショナルだ。私は彼に満足している。もちろん、残留を望んでいるよ。(直近のマジョルカ戦では)とても有用だった。トレーニングの姿勢で、試合に出るかどうかが決まる。未来がどうなるか、選手の獲得と放出については、見てみよう」

これは先のマジョルカ戦後のシャビ監督のコメントだ。

本当に、バルセロナは戻ってきたのか。クラブとしての胆力が問われるのは、これからである。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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