子どものチームでコーチをすることになりました。メジャーリーグ編!
自分の子どもがスポーツのチームに入ったことで、親である自分もコーチをするようになった。そのような話は時々、耳にします。
米国でも子どもがスポーツチームに入ると、親もそのチームの運営を手伝ったり、コーチの補助をすることは珍しくありません。珍しくないどころか、過半数が親の力によって運営されています。
親が子どものチームのコーチをするのはよくあること。
開幕したばかりのメジャーリーグで、子どものチームのコーチをするようになった父親がいます。
ダンテ・ビシェットさん。56歳。
90年代のメジャーリーグファンにとっては、懐かしい名前です。ロッキーズの強力打線の主軸を担った強打の外野手。1995年には、打率3割4分、40本塁打、128打点でMVP投票2位。2017年にロッキーズOBによる本塁打競争にたまたま居合わせたことがあるのですが、そのとき、ベンチ裏で本気で打撃練習をしていたのがダンテ・ビシェットでした。
誰のお父さんかは言うまでもないかもしれませんが、ブルージェイズの遊撃手、ボー・ビシェットはダンテ・ビシェットの息子です。ボーは昨季、メジャーリーグデビューしたばかりの22歳。明るい性格で、他の選手にも積極的に話しかけ、すでにリーダーシップを発揮しています。
父ダンテさんは、開幕してからブルージェイズのコーチング・スタッフになりました。息子のチームのコーチになったのは、新型コロナウイルスによって、春のキャンプが中断し、開幕が延期になったことが関係しているようです。
キャンプの中断によって、ボー・ビシェットは、行き場のなくなったチームメートの内野手サンチアゴ・エスピナルをフロリダ州の自宅に招き、共同生活をスタート。チームとしての練習ができなくなった2人は、ボー・ビシェットの家を拠点にトレーニングをしていました。彼らのトレーニングを支えたのが父のダンテでした。(ボーが父と同居しているのか、別の家に住んでいるのかは確認できていません。しかし、近くに住んでいることは間違いありません)。
エスピナルは、ダンテから受けた指導をこのように振り返っています。「打撃フォームについてというよりも、メンタル面でのアドバイスを受けた。もしも、僕が三振をしても、それは僕が何か間違ったことをしたという意味ではない、それが野球だよって。だから、僕は三振した次の打席に入るときでもポジティブな気持ちで打席に入っていかなければいけないよって」。
ブルージェイズは7月6日からカナダのトロントでキャンプを再開。中断期間中に息子とそのチームメートの指導をしていたダンテ・ビシェットも同行しました。そのときの肩書はゲストコーチ。選手たちに打撃や外野守備のアドバイスをしながら、父親としての顔もちらっと見せていて、紅白戦のときには、息子ボーの姿をスマートフォンで撮影していたようです。
キャンプ中はゲストコーチでしたが、なんと、開幕戦のベンチにもダンテ・ビシェットの姿がありました。
球団からプレスリリースも出ていなかったのですが、ブルージェイズのモントーヨ監督は開幕戦の記者会見でダンテ・ビシェットがベンチに入っていたことを聞かれると「あ、コーチになってもらったんだ。肩書は…うーん、メジャーリーグ・コーチだ。彼はバッティングもアドバイスしてくれるし、外野の守備のアドバイスもできる」と突然、就任を発表。
トロントでのキャンプ中に、多くの選手がダンテ・ビシェットから貴重な助言をもらえたことが、あっという間のコーチ就任につながったようです。息子のボーだけが父親からアドバイスをもらっていたところを、ボーの父というコネクションを生かしてコーチとして迎えることで、チームの共有財産にしたと捉えることもできます。
子どものチームでコーチを引き受けてくれる親についても、同じようなことがいえると思います。本来ならば、その親の子どもだけが受けられる指導を、チームの共有財産にする。その縁や貢献に感謝し、潤滑に運営できれば、理想的だと思います。