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不屈・永瀬拓矢王座(29)3期連続で棋聖戦挑決進出! 準決勝で佐々木大地六段(26)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月15日。東京・将棋会館において第93期ヒューリック杯棋聖戦・本戦準決勝▲佐々木大地六段(26歳)ー△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時34分に終局。結果は112手で永瀬王座の勝ちとなりました。

 永瀬王座はこれで3期連続の挑戦者決定戦進出。そして2期連続で渡辺明名人と対戦します。

藤井-永瀬のタイトル戦は実現するか?

 永瀬王座は2016年、棋聖戦五番勝負に登場。羽生善治棋聖(当時)に挑戦して2勝3敗1千日手で惜しくも敗退しました。

 2020年には挑戦者決定戦に進出。そこで藤井聡太七段(当時)と対戦し、敗れています。

 昨年2021年も挑決に進出。そこでは渡辺明名人に敗れました。

 永瀬王座は今期も本命格の一人。1回戦から順に丸山忠久九段、西田拓也五段に勝って準決勝に進出しました。

 佐々木六段はベスト4の中で唯一、タイトル挑戦の経験がありません。実力は十分。いつ檜舞台に登場しても、まったく不思議ではありません。

 振り駒の結果、先手は佐々木六段。角換わり模様の立ち上がりから、永瀬王座は角筋を止めて交換を拒否。銀を4三に配置する、現代調の駒組を見せました。対して佐々木六段は陣形を低くかまえる「しゃがみ矢倉」の姿勢です。

 互いに手を渡しながら間合いをはかりあう高度な駆け引きのあと、永瀬王座が動いて戦いが始まりました。将棋では価値の高い金銀を、安い桂香で削っていくのが中終盤の戦略の一つで、本局ではその攻防が何度も見られます。そのうちに優位に立ったのは永瀬王座でした。

 佐々木六段は最後、銀を桂で取りながら王手をかけます。対して永瀬玉は桂の頭に逃げて容易につかまらない形。佐々木六段はその局面を19分見つめたあと、攻防ともに見込みなしと判断し、次の手を指さずに投了しました。

 永瀬王座はあと1勝で藤井棋聖への挑戦権獲得。両者のタイトル戦を見たいというファンは多いでしょう。

 佐々木六段は今期棋聖戦では、藤井棋聖との対戦はかないませんでした。しかし翌々日の4月17日、天童での人間将棋において、両者は相まみえることになっています。そちらもまた注目の楽しみな一番です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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