他世帯へのお年玉としての贈り物の実情推移をさぐる(2023年公開版)
お年玉はポチ袋に納めた現金だけでなく、受け取る側が望むゲームソフトなどをそのまま買い与えたり、贈り物として贈ったりするケースも少なからず見受けられる。他世帯に向けた実物提供タイプのお年玉と思われる支出の推移を、総務省統計局による「家計調査」から検証する。
家計調査では二人以上世帯(原則夫婦世帯)においてのみ、日次の動きに関する調査も行われている。世の中全体の傾向を推し量るのには総世帯(単身世帯+二人以上世帯)の値が望ましいのだが、存在しない以上仕方がないので、この二人以上世帯における日々の支出額(=消費額)を基に、「他世帯への」お年玉としての購入が想定されるゲーム・おもちゃ系に該当する項目、具体的には用途分類における「教養娯楽」の推移を確認する。
はじめに示すのは、毎年1月における二人以上世帯の「教養娯楽」の動き。家計調査では2000年以降についてこの値が取得できる。
2000年以降に限れば起伏がやや激しいが総じて「教養娯楽」の額は漸減状態にある。2014年に飛び跳ねた値として2270円が出ているが、それ以外では2002年の2100円が最大値。直近の2023年では1130円。2000年の2061円と比べると2023年の1130円は5割ちょっと。景況感の悪化か、大人がケチになっているのか、その分クリスマスのプレゼントが豪華になっているのか(他世帯へのクリスマスプレゼントはあまり想定できないが)。
また2020年から値が急落しているように見えるが、2020年は前年の消費税率引き上げの影響、そして2021年は新型コロナウイルスの流行が影響していると考えられる。特に後者は外出機会が抑えられているので、例えば実家に里帰りした孫に祖父母が玩具を買い与えるという機会が減っているからだろう。2022年以降はいくぶん値を持ちなおしているが、まだ2019年の値にすら戻していない。
この額についてそれぞれの年の消費支出の割合を算出する。消費支出とは世帯を維持していくために必要な支出だから、普段使いするお財布の中身のどれほどの割合なのかを示していることになる。この値に変化が無ければ世帯単位でのお財布事情が悪化しているので、お年玉も減っていると見なせるのだが。
額そのものよりは緩やかではあるが、やはり下降傾向の結果となった。そして2020年以降の落ち込みぶりが著しいのも同じ傾向。さらに2022年以降の反動の動きも。つまり実物を贈り物として渡すタイプのお年玉の額が減っているのは、世帯のお財布事情が原因というよりは、お年玉に割く割合が減った結果ということになる。
もう一つ贈り物を渡すタイプのお年玉の額が減っている原因として考えられるのは、世帯における子供の数が減っているからとするもの。子供が二人いる世帯に対しては(年齢の差による金額の差異が生じる可能性はあるが)二人分のお年玉が必要になる。一人しかいない世帯ならば一人分で済むため、単純計算では半分の額で済む。
そこで各年の平均世帯人数を基に子供の推定人数を試算し、2023年の値を基準として仮に他の年も世帯における子供の数が2023年と同じだとしたら、どのような金額になるかを計算した結果が次のグラフ。
減少度合いが緩やかになるどころか横ばい、見方によっては増えているように見える。世帯における子供の人数が減ったことが、贈り物を渡すタイプのお年玉の額が減っている主要因のようだ。ただし2020年以降は大きな落ち込みに変わりはなく、減った主要因が子供の数の減少とは別にあることがうかがえる。
今件は他世帯に向けた贈り物でのお年玉に関する検証だが、恐らくは自世帯の子供に対するものも、似たような傾向を示しているのだろう。
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