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今年のボージョレ・ヌーボー、こんなつまみと合わせたい

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

2003年に「110年ぶりの当たり年」と銘打ちながら、その6年後の2009年に「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」など絶妙なキャッチコピーを展開することでも知られるボージョレ・ヌーボー。メディアにも「ボージョレ」の文字が踊ります。

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出典:朝日新聞デジタル

そして本日11月21日が、解禁となる11月の第3木曜日。欧州が空前の熱波に襲われた今年の出来ばえはどうなのでしょう。

解禁日前日の昨日、浅草橋のワインバー「水新はなれ 紅」の店主、ソムリエの寺田泰行さんに今年の出来ばえを予想してもらいました。

「今年のフランスは猛暑に襲われました。私が6月にボージョレに行ったときも非常に暑かったですし、ボルドーでは40度、南フランスのラングドックでは45度を超えたというニュースも流れました。こういう年のブドウは熟度が高く、いいワインに恵まれやすい当たり年。いわゆる『●年に一度』というような出来栄えも期待できます」

ボージョレ・ヌーボーは新酒として飲まれる前提で造られます。ヌーボーではないボージョレもブドウ品種は同じガメイですが、ヌーボーはライトな飲み口が持ち味。赤ワインでも10℃程度まで冷やして飲むのがおすすめだそう。

そしてワインと言えば、もちろんおつまみが必要! どんなものと合わせたらいいのでしょうか。

「色は赤くても、飲み口は軽いのがボージョレ・ヌーボーの特徴です。肉ならばステーキのような重厚感ある肉料理より、シャルキュトリ――生ハムやサラミ、パテのような加工肉と相性がいいですね」

ボージョレ・ヌーボーは、やさしい旨味が凝縮された加工肉との相性が◎。サラダを添えるならオリーブオイルなどやさしい味わいの油を使い、仕上げにレーズンなどのドライフルーツを散らしてみて。酢もツンと来るようなものではなく、バルサミコ酢や黒酢のような熟成感のあるやさしい酸を軸に考えるとよさそう。黒胡椒などの強いスパイスには負けてしまうので控えめに。

「今年はブドウの出来が良く、果実味の強い濃厚な仕上がりが予想されるので、例年よりも合う肉の範囲は広いかもしれません。ボージョレのブドウ品種、ガメイにはいちごの香りがあります。今年はベリーソースをまとった鴨のローストなど強い肉とも合うかも」

週末にはシャルキュトリやちょっと凝ったソースの肉料理と楽しみたいところですが、気軽に楽しめるのも、ボージョレ・ヌーボーのいいところ。平日の今晩から楽しむことができるつまみが、スーパーやコンビニにもたくさんあるのです。

スーパーやコンビニで選ぶ、ボージョレ・ヌーボーに合うつまみ

ボージョレ・ヌーボーに使われる「ガメイのベリー系の香りは、醤油など熟成感のある調味料にも合う」のだとか。

その筆頭格が缶詰やホットスナックコーナー、冷凍食品でもおなじみの「焼鳥」。「甘辛いニュアンスが、ボージョレ・ヌーボーに合わせやすい」と聞くと一気に身近になります!

「そのほかソースのニュアンスと合わせたお好み焼きや、オイスターソースを使ったあんかけ焼きそば、豆腐の旨煮などもいいと思います。スパイスは黒胡椒のような強いものは控えて、シナモンやクローブのような甘いニュアンスのものを上手に使いたいですね」

味つけはシンプルな塩味よりも、熟成感や凝縮感のあるやさしい旨味や甘辛い味つけがポイントなのだとか。確かに冒頭に紹介してもらったシャルキュトリも、やさしい旨味が凝縮された味わいが印象的。

「帰りがけにコンビニで買うなら、普通のハムだって十分合うと思います」

これは朗報……。はっ! 淡白で旨味のある加工肉に合うとなれば、かまぼこなども合うのでは……。

「あはは。攻めますねえ。かまぼこなら『板わさ』にして醤油のニュアンスと合わせると楽しそうです。ワインと料理に共通するニュアンスを探して楽しむのもワインの醍醐味ですから」

ボージョレ・ヌーボーの楽しみ方、その地平はどこまでも広い。

◎ボージョレ・ヌーボーに合いやすいもの

・やさしい旨味のある加工肉(ハムやパテ、サラミなど)

・(ドライ)フルーツをトッピングしたサラダ(かぼちゃのサラダなど)

・甘辛い醤油やソースで味つけした料理(焼鳥、お好み焼き、あんかけ焼きそばなど)

※ただし、スパイスの強すぎるものは除く。

・シナモン、クローブなど甘いニュアンスのスパイスを使った料理・デザート(アップルシナモンなど)

●ボージョレ・ヌーボーに合いにくいもの

・塩胡椒の効いた脂が濃厚な肉料理(塩胡椒味の和牛のステーキなど)

※ただし、今年のボージョレはある程度は濃厚な肉料理にも合う可能性あり。

・ツンとした穀物酢や焙煎香の強い胡麻油を前面に出した料理(むせ返るような酸辣湯など)

※ただし、フルーティなバルサミコや、マイルドな黒酢を使うことで改善の余地あり。

・黒胡椒など、強いスパイスを効かせた料理全般

△今年のヌーボーと料理のニュアンスのかけ合わせを探す旅

・鴨や羊など赤色の濃い肉のロースト×フルーツソース

・焼肉(肉次第)

・から揚げ(味つけ次第)

・板わさ(醤油必須)

・塩焼きそば(隠し味に醤油やオイスターソースを)

・アップルパイ(甘すぎないもの)

編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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