開会式前に炎上した3人への反応の違い
オリンピックが開幕しました.
思いのほかオリンピックの開会式は盛り上がったようで,ざっと観測した限り2021年7月23日のオリンピック関連のツイートは360万ツイートを超えていました.
2021年に入ってからのオリンピック関係の一日当たりのツイート数をプロットするとこんな感じになりますので,やはり開会式が始まってからの関心は圧倒的です.
実のところデータ収集用プログラムが落ちるかと思ったくらい.
相次ぐ辞任・解任
さて,そんな中開会式直前にオリンピックを運営する関係者の辞任解任が相次いで話題になりました.
7月19日 開会式楽曲担当 小山田圭吾氏辞任
7月20日 東京2020 NIPPONフェスティバル出演予定絵本作家のぶみ氏出演辞退
7月22日 開閉会式ショーディレクター小林賢太郎氏解任
いずれもネットでの炎上が要因で辞任解任に至ったと言われています.それでは,ネット上ではどのように扱われていたのか炎上という視点から見てみましょう.
なお,辞任解任の是非については今回の分析では扱う範疇ではないことはご了承ください.
ツイッター上の反応
それでは,小山田圭吾氏,のぶみ氏,小林賢太郎氏に関するツイートがどのくらいあったのかをプロットしたものを見てみましょう.
数は1時間ごとのツイート数を示しています.
この結果から,小山田圭吾氏はツイッター上では7月15~21日までかなり長い間数多く言及されていたことが分かります.辞任報道がでたのが19日19時ですので,辞任後にさらに大きくツイートが増加していることが分かります.最初にツイッター上で問題が指摘されてから辞任のニュースまで62万回ほどの言及がありました.
それに対して,のぶみ氏は7月19日21時くらいからツイッター上では言及が多くなり,20日16時に辞任が発表され収束した形になります.その間およそ14万回ほどの言及がありました.
小林賢太郎氏に関しては,7月15日に開閉会式ショーディレクターに就任したことが話題になったあと,7月21日に<ユダヤ人大量惨殺ごっこ> 五輪開会式演出・小林賢太郎に浮上した「ホロコーストいじり」の過去という記事がネット上に掲載されたことがきっかけで話題になり始めました.そして,22日11時には解任の速報が流れ,ツイッター上での言及も最大となりました.なお,ツイッター上では問題が明らかになってから解任まで6万回ほど言及されていました.
ニュースとの関係
次に,ツイッター上のツイート数とニュース記事との関係についてみてみましょう.ここでは,CEEK.JP NEWSのデータを利用して,一日ごとのツイート数と記事数を比較してみます.
これを見ると,小山田圭吾氏はツイッター上でしばらく炎上してからの辞任となり,その間にニュースとしても報道がいくつかなされていたことが分かります.
一方,のぶみ氏はツイッター上で話題になった直後に辞任,ニュース記事はほとんどが辞任した記事となっており,のぶみ氏の過去については小山田氏ほどの言及はありませんでした.
そして,小林賢太郎氏の場合は日単位ではニュース記事とツイートはほぼ同期しており,実際には先の記事が先に来ています.7月21日22時すぎに記事がアップされ,22日11時には解任が報じられていますので,ほとんどのツイートは解任後に行われています.
辞任・解任前後のツイート数
次に,辞任・解任前後のツイート数についてみてみましょう.下図はそれぞれの事象において辞任・解任報道の前と後でどのくらいのツイートがあったのかを示しています.辞任後は,開会式開始直前の7月23日19時台まで取っています.
小山田氏は辞任前にかなりのツイートが行われており,辞任後もかなり言及されていることが分かります.一方,のぶみ氏は辞任前のツイートはある程度あるものの,辞任後はツイート言及数は大幅に減っています.
小林氏は問題発覚から解任までの期間が短かったせいもあり,解任前のツイートは少なく,解任後の言及数でのぶみ氏を上回っています.
ツイッター上に拡散した意見
拡散は三者三様でしたが,拡散したツイートにはどのような意見のものが多かったのでしょうか.各ツイートをクラスタリングしてどのようなクラスタがあるかを見てみました.
まず,小山田氏のクラスタリング結果このような感じになります.いくつかのクラスタが存在することが分かるかと思います.分離しているので,賛否両論なのかなと思ったら,拡散数が大きいクラスタから順番に,
・小山田氏批判(175,937リツイート,81,300アカウント)
・国内メディア,オリンピック委員会批判(120,262リツイート,37,116アカウント)
・小山田氏,掲載雑誌のコメントへのリンク(30,515リツイート,19,982アカウント)
・小山田氏批判(21,986リツイート,10,929アカウント)
・小山田氏を擁護する人への批判(16,801リツイート,11,572アカウント)
という感じで,いずれも小山田氏を擁護するような内容はありませんでした.
次に,のぶみ氏の場合はほぼ大きなクラスタが一つだけ作られました.
中身的には3つの大きなクラスタに分かれていて,
・のぶみ氏辞任後の批判(42,706リツイート,28,182アカウント)
・のぶみ氏辞任前の批判((33,757リツイート,22,423アカウント)
・絵本作家としてののぶみ氏への批判(31,662リツイート,19,512アカウント)
でした.基本的に擁護的なツイート群は見つかりませんでした.
最後に,小林賢太郎氏の場合は大きく3つに分かれていることが分かります.その中身を見ると,
・小林賢太郎は社会貢献をしている(102,744リツイート,57,787アカウント)
・小林賢太郎氏以外にも同様の失言をしている人がいる(51,582リツイート,22,291アカウント)
・小林賢太郎氏批判(34,915リツイート,21,036アカウント)
でした.
一つ目のクラスタに含まれるツイートは,
などでした.ちなみにこのような小林賢太郎氏に同情的なツイートは問題発生直後から多数拡散されていることが確認できており,解任が決まる前から小山田圭吾氏の場合とは違う,という情報が広まっていたようです.
まとめ
というわけで,開会式直前に辞任解任された3名へのツイッター上での反応を分析しました.三者三様の言及をされていますが,この分析結果を見る限り,
・小山田圭吾氏は継続的に燃料をくべている典型的な炎上マネジメントの失敗パターン
・のぶみ氏は(少なくとも)炎上対策としては成功している
・小林賢太郎氏は対応が早かったが,ツイッター上では批判よりも同情の声が大きかった
といえるのではないでしょうか.
辞任,解任にはそれぞれ理由がありますので,その是非については特に言及しませんが,炎上対策という視点から見たとき,同時期に発生した三件の炎上を比較分析してみることには一定の意味がありそうです.