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甲子園でタイブレーク導入 正式決定!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
来春センバツからのタイブレーク導入が正式決定した。ファンに受け入れられるか!?

 日本高野連は、19日に開いた運営委員会で、来春センバツ大会からタイブレーク制を導入することを正式決定した。いよいよ甲子園の高校野球も時代の流れにのまれ、新たな時代に突入する。夏の甲子園でも導入の見込みで、各都道府県高野連によって足並みが揃っていない夏の予選での導入は不透明だが、高校野球が大きく変わることは間違いない。40年以上甲子園に通っているが、心打たれた名勝負の多くが延長の死闘だったことを考えると、むなしさだけが残る。長く甲子園を見てきたファンの大半が同じ気持ちを抱いたのでは、と察する。

流れ切らない継続打順で

 タイブレークに対する私の意見はすでに述べている(6月14日拙文)し、そのときと考えは変わっていない。かと言って高校野球の魅力が完全に喪失されてしまうとまでは思わないので、少し前向きに考察したい。導入の正式決定はしたが、方法論はまだこれからだ。

・延長12回を終わって同点、もしくは両軍無得点の場合、タイブレークに入る。

・無死1、2塁から継続打順(12回最終打者の次打者)で開始する。走者は2塁が前々打者、1塁が前打者。

が最有力とされる。過去、高校野球の公式試合で採用された方法では、1死満塁からの任意打順で行った神宮大会で大量点が入り、試合が壊れたことがしばしばあった。また、無死1、2塁で始めても任意打順の場合は一時試合を中断することを余儀なくされ、流れが断ち切られるなど、選手への精神的負担が大きいと指摘されていた。継続打順だとすぐに始められるし、試合の流れを切ることにはならない。実はここが一番大事で、打順によって戦略はおのずと変わってくる。

任意打順の欠点

 先述の1死満塁任意打順は、先に守る後攻チームの投手が非常に動揺する。打順提出などの中断を経てマウンドに上がった瞬間、いきなり塁が埋まっていて、最強打者を迎えないといけない。攻撃側はその打者で得点できれば大量点が期待できることから、先攻チームが有利と言われていた。選手(厳密に言えば投手)を守るためのルールが、逆に精神的なダメージを負わせる結果を招いていたのだ。いずれにしても、任意打順は、試合そのものがリセットされるので点は入りやすいが、それまでの熱戦が台無しになる。継続だと、考え方は普通の延長戦とさほど変わらないので、「先攻は1点でも多く、後攻はまずは同点」という戦略を立てるだろう。先攻チームが塁上走者を上回る点(3点以上)を挙げない限り、後攻チームが有利なはずだ。タイブレークになっても継続打順が適用されるなら、これはせめてもの救いだ。方法については、11月24日に決まる。

選手に、ファンに受け入れられるか

 しかし、これまでにタイブレークを経験したチームも、見たことのあるファンもあまり多くないのが実情だろう。これは、寄せ集めで戦う国際大会や社会人野球のそれとは明らかに違う。甲子園という高校野球の最高舞台の試合で、決着がつかないからといって人為的に試合を終わらせる方法が、果たして選手にもファンにも受け入れられるのだろうか。ある程度の想像はつくが、実際、目の当たりにしてみないとわからないのが偽らざるところだ。今春、13回を超える延長は3試合あり、うち2試合は再試合になった。夏は最長12回で決着している。今年に当てはめれば、センバツで3試合がタイブレーク適用になる。延長突入率は春夏とも大差ないが、夏は投手の消耗が激しいことから、早期決着が多い。タイブレークが導入されれば、これを意識して仕掛けが早くなるだろう。統計上は「1年(春夏合わせ)1試合くらいで適用」のイメージらしいが、記念大会で出場校が増える来年は、選手レベルも高く、激戦が予想される。せっかくの熱戦が、水泡に帰すようなことがあってはならないと、心から思う。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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