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出産から育児しながらコメディで本格復帰の新川優愛。変顔の連発に「1人で鏡を見て練習しました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『クラスメイトの女子、全員好きでした』より (C)ytv

中学時代に埋めたタイムカプセルから届いた、見覚えのないノート。そこに書かれていた小説を盗作して賞を獲ってしまい、クラスメイトの女子たちを回想する連載を書きながら、真の作者を探す……。木村昴が主演するドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』で、新川優愛がヒロインの編集者を演じている。昨年5月に第一子を出産し、2年ぶりの本格復帰。これまであまりなかったコメディで、変顔やオーバーアクションも見せて楽しげだ。俳優として母親として、30歳の現在の心境から聞いた。

守らなければいけないという想いが湧きました

――お子さんが生まれて、お母さんになって、人生観が変わった部分もありますか?

新川 この子を守らないといけない、という想いは湧いてきました。それまでの自分の人生では、人を守るとか考えたことはなかったですけど。

――母親としての幸せも、日々感じていますか?

新川 子どもが笑ったら、かわいくて幸せですし、まだ1歳ちょっとで、できることがどんどん増えていくんです。最初の頃だと首が据わったり、寝返りをしたり、ハイハイしたり。私たちの年齢では、新しいことが著しくできるようになったり、3ヵ月で何かが劇的に変わったりはしませんよね。子どもはすごく成長している、一生懸命生きているんだなと感動します。

――一方で仕事に関しては、結婚や出産された時点では、どんなビジョンがあったんですか?

新川 結婚したときは、特に何も考えていませんでした。妊娠中から出産後に掛けては、物理的に動けなかったり、子どものお世話があるので、セーブする流れになって。この4月から保育園が決まって、仕事にも徐々に復帰していけるかなと、マネージャーさんと話し合った感じです。

――できるだけ早く復帰したいと、思っていたわけでもなくて?

新川 そんなに急いで復帰しようとは、思ってなかったです。

(C)ytv
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改めて「こういう表現もあるんだ」と

――仕事をセーブしていた期間は、子育てに追われていたかと思いますが、ドラマや映画を観たりもしていましたか?

新川 テレビや配信で観られるときは観ていました。改めて「この方のお芝居は素敵だな」とか「こういう表現の仕方もあるんだ」と感じると、現場に復帰するのが楽しみになりました。

――『クラスメイトの女子、全員好きでした』は2年ぶりの連続ドラマのレギュラーですが、この作品だから本格復帰を決めたところもありました?

新川 木曜ドラマの枠では、4年前にも『ギルティ』で主演をやらせていただいて、遡れば9年前から4作目になるんです。担当のプロデューサーさんが変わって時代も感じながら、『ZIP!』に出演させていただいたとき、最初の『青春探偵ハルヤ』でお世話になったプロデューサーさんとお会いできて。そんなご縁もあるので、「やらせていただこうか」となりました。

役者同士のコミュニケーションが映るので

――コメディ系の作品への意欲もあったんですか?

新川 あまりお話をいただいたことはなくて、シリアスな作品やバリバリ働く女性の役が多くて。今回も編集者として働いてますけど、コメディタッチというところで「どうしよう。大丈夫かな」みたいな不安はなかったです。それより、こういう作品では役者同士のコミュニケーションが、画面に顕著に映ると思っていて。撮影が始まる前は、そっちのほうが不安でした。

――確かに、空気感が面白さを左右する要因かもしれませんね。

新川 私は人と仲良くなるのが得意なほうではなくて、しかも、ブランクがあったので。主演の木村さんを始め、皆さんとどうコミュニケーションを取るか、考えることが多かったです。

――自分でコメディを観てはいました?

新川 『ナースのお仕事』が大好きでした。観月(ありさ)さんを好きになったきっかけでもあって。当時はVHSのビデオを父とレンタル店に借りに行って、観ていた記憶があります。テレビの放送を録画して、何度も観たりもしていました。

許容範囲なのでいつでもお見せします

――『クラ好き』では1話から、新川さんの「怒りと悲しみを必死に抑えている顔」に笑わせてもらいましたが(笑)、振り切った感じでした?

新川 全然許容範囲というか、「頑張ろう!」みたいな感じはまったくなかったです。いつでもお見せします(笑)。でも、1人で鏡を見て練習はしました。

――片目だけ半目になったりしていましたが、自分でオンエアを観ても、面白かったりはするものですか?

新川 変顔に限らず、オンエアを観ると「もっとこうすれば良かった」と思うのは、自分の中では毎回のことです。あそこも「もっと怒りと悲しみを必死に抑えたら良かったな」という感じでした(笑)。

表情だけでなく体を大きく動かしてます

――5話では、主人公の枝松脛男の盗作が後輩の猫魔さんにバレて、「編集長は知ってるんですか?」と聞かれたとき、無言で眉毛を動かしたりしていました。

新川 台本では「知らない」という台詞があったんです。でも、段取りで口にし辛い感じでやらせてもらったら、それで大丈夫だったので本番でもやりました。

――目を見開いたりすることも多くて、表情筋はかなり使ってます?

新川 そうですね。表情だけでなく、オーバーなリアクションが多くて。5話で(フランスの人気作家の)パトリシアと話している枝松さんをガーンと小突いたり、体を大きく動かしています。

現場でも笑ってくれるから楽しいです

――コミカルな演出が入ることもありますか?

新川 どうしたほうが面白いか、みんなで話しています。言い方だったり、間合いだったり。昴さんの台詞について、監督と「こんな言い方だとどうでしょう?」と話しているのを聞いて、「私はこっちが好きかも」みたいな会話をしています。

――5話で、猫魔さんからパトリシアと会うために脛男に連絡を取ってほしいと頼まれて、「何か見返りがないとな~」とニコニコしながら腕組みを上下させていたのも、そんな感じで作ったんですか?

新川 最初、「電話はかけるけど」ってニヤリとするのは私がやって、そのニヤリのタイミングと角度を監督が微調整してくださいました。アイデアを出し合って作ったカットですね。ただただふざけている感じですけど(笑)。

――美人女優のイメージを気にすることもなく?

新川 自分がそんなイメージだと思ったこともないので。恥ずかしさもなく、現場でもみんなが笑ってくれるから楽しいです。

歯止めが利く限りはやらせてもらってます

――演じている片山美晴のキャラクターについては、あまり作り込んでいない感じですか?

新川 美晴以外の人が本当に濃いんです。枝松さん、編集長、猫魔さん、(脛男のバイトの後輩の)金子くん。回想シーンの脛男のお父さんもそう。美晴はどちらかと言うと、ツッコんだりドライでしたけど、みんなが楽しそうに演じているから、どんどん「私も大丈夫ですかね?」となって(笑)。「歯止めは利いてますか?」というところまで、やらせてもらっています。

――肩の力は抜けていて?

新川 現場ではそうですね。

――『ギルティ』で裏切られ続ける役をやったときとは、だいぶ違いますか?

新川 あのドラマでは泣くシーンがほぼ毎日あって、丸1日泣いていた日もありました。すごく集中しましたし、エネルギーも使って、その経験が自分の財産になったと思っています。今回は全然別のジャンルで、やったことがないようなキャラクター。また違う意味で、いい経験をさせていただいています。

――最初に不安があったという共演者とのコミュニケーションも、うまくいくように?

新川 そうですね。枝松さんと頷き合ったりするシーンが多くて、台本に「見合う」とか「頷く」と書いてなくても、私が見たら昴さんも見てくれて「うん」となることが、回を重ねるごとに増えました。現場で「バディ感が生まれているね」と言ってもらえたので、その空気感で最後まで楽しんでもらえると思います。

笑いが止まらなくて台詞が言えなくて

――大変だったシーンもありましたか?

新川 笑いが堪えられないのが一番大変です(笑)。4話の最後に金子くんが猫魔さんに盗作のことを話してしまって、5話で枝松さんと美晴が猫魔さんに「どういうことですか?」と詰められていたとき、金子くんが「ドッキリでしたー」と入ってくるシーンが、私は大好きなんです。

――ジャケットを着て入ってきたけど、「無理だろ」という(笑)。

新川 私は金子くんの隣りにいたので、笑いが止まらなくて、次の自分の台詞が言えなくなってしまって(笑)。3回かもっとか、「本当にごめんなさい!」ってやり直したんです。さっき出た『ギルティ』の泣き芝居での集中も大変でしたけど、笑いを堪えて集中するのもすごいことでした。金子くん役の前原(滉)さんの顔を見るだけで、笑ってしまって(笑)。

――脛男が盗作だったことを自ら公表し、美晴が人気子役だったことも明かされました。終盤も見どころ、笑いどころは多そうですね。

新川 盗作した小説の真の作者に迫っていく展開になっていきますけど、その中でも、それぞれのクセが活かされています。

テストで4点を取って崖っぷちでした

――脛男が好きな女子プロレスには、新川さんは馴染みはありました?

新川 女子も男子も、プロレスは深夜にテレビでやっているのを観たことはありますけど、私は血が怖くて。指をちょっと切って血が出ただけでも、体調によってはウッとなってしまうんです。でも、枝松さんの部屋に女子プロのポスターが貼ってあったり、プロレス雑誌が並んでいたりするので、気になって観てみたいとは思っています。

――美晴は編集者としてヒットを出せず後がない状態ですが、新川さんはそんな崖っぷちの経験はありますか?

新川 小学校のとき、算数のテストで4点を取ったことがあります。100点満点で4点(笑)。親に見せませんでした。そういうとき、子どもって、できる限り小さく丸めるんですよね。それを鍵を入れる小さなポケットの中に隠して、バレたのか聞かれたのか、結局、丸めた答案を広げて見せたんです。そしたら、父親に「あーっ、ヤバいね」と言われました(笑)。

――怒られたわけではなくて。

新川 やってしまったことは仕方ない、という家なんです。そのあと、父に見てもらって、めちゃめちゃ復習しました。そのテストだけ点数がすごく悪くて、今思うとたいしたことではないんです。でも、子どもの頃は「どうしよう? 怒られる……」と本当にドキドキして、崖っぷちでした。

――芸能人生は順調で崖っぷちはなかったですか?

新川 その都度、大変なことはありましたけど、大きく見たら、いろいろな方との繋がりで、お仕事をさせてもらって。今も続けられているのはありがたいです。

T-PROJECT提供
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昼間にやり残した家事を子どもが寝たあとに

――『クラ好き』は木曜の23時59分から放送されています。そのくらいの時間は、何をしていることが多いですか?

新川 木曜日は放送も観ます。あと、昼間は全部「子どもを寝かしたあとにやろう」と放置しがちなんです。それで洗いものとか片付けとか、寝室の子どもの様子を見ながら、やり残した家事をしていることもあります。ゆったりと温かいお茶を飲んでいることもありますし、いろいろですね。

――やっぱり、お子さんができて、生活はだいぶ変わったんでしょうね。

新川 変わりました。規則正しくなりました。

――仕事も本格的に再開して、体的に大変なこともないですか?

新川 そんなに大変だとは思いません。子どももタイミングなのか、そんなに夜泣きが激しかったりもしませんし。いずれにしても、幸せのほうが大きいです。子どもがもっと歩けるようになったらお散歩をしたいなとか、自転車に乗れるようになったらサイクリングをしたいなとか、楽しみがいろいろあります。

――最後に余談ですが、新川さんが応援している西武ライオンズ、今年は負けが多すぎますよね。ゲンナリしませんか?

新川 私が試合をしているわけではないので(笑)。どの球団も大変なときもあれば良いときもあるから、仕方ないですね。私はあまり勝ち負けを気にしてはいません。選手の皆さんがケガなく精いっぱいプレイしてもらえたら、いいかなと思います。

Profile

新川優愛(しんかわ・ゆあ)

1993年12月28日生まれ、埼玉県出身。2008年に女優デビュー。主な出演作はドラマ『いつまでも白い羽根』、『ギルティ~この恋は罪ですか?~』、『愛しい嘘~優しい闇~』、『個人差あります』、映画『めがみさま』、『老後の資金がありません!』など。ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』(読売テレビ・日本テレビ系)に出演中。

『クラスメイトの女子、全員好きでした』

読売テレビ・日本テレビ系 木曜23:59~

公式HP

(C)ytv
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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