札幌―室蘭間の「特急すずらん」 幌別―室蘭間は「各駅に停車」でも、幌別・鷲別では特例格差で特急券必要
筆者は先日、特急すずらん号を札幌―室蘭間で乗り通したことは、記事(札幌―室蘭結ぶ「特急すずらん」 ダイヤ改正で「利用者激減騒動」から8ヵ月の現状は…室蘭駅は無人駅に)と(「利用者激減騒動」から8カ月の特急すずらん号 停車駅無人化でえきねっと予約の特急券、受け取れない現実)でも詳しく触れた。
東室蘭ー室蘭間では特急券不要の特例
2024年3月ダイヤ改正で全席が指定席化され、割引切符の販売がえきねっとに一本化されるなど、大きな変化があった特急すずらん号であるが、このほかにはそれまで東室蘭―室蘭間が普通列車として運行されていたものが、全区間特急列車での運行に改められた。とはいっても、東室蘭―室蘭間については特急列車としての運行とはなったものの、停車駅は各駅停車のまま変わらず、この区間内のみを利用する場合は、特急券は不要で乗車券のみで普通車指定席の空席を利用できるという特例が設けられた。
札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号の特徴は、札幌―東室蘭間で運転区間が重複している特急北斗号より停車駅が多いことだ。特急北斗号の途中停車駅が新札幌、南千歳、苫小牧、白老、登別(一部列車を除く)であるのに対して、特急すずらん号は新札幌、千歳、南千歳、沼ノ端、苫小牧、白老、登別に停車し、幌別から先、市街地の連続する区間は鷲別駅、東室蘭駅を含めて終点の室蘭駅まで各駅に停車する。
幌別・鷲別からの乗車だと特例格差
幌別駅から東室蘭駅を経由して室蘭駅までは、市街地が連続したエリアであり住宅も密集している。幌別駅周辺には登別市役所があり、鷲別駅周辺にはスーパーマーケットや室蘭工業大学が、東室蘭駅周辺にはスターバックスコーヒーなどの大手チェーン店も進出し商業エリアとしても発展している。東室蘭駅から室蘭駅までの区間についても製鉄所を中心に発展した市街地が連続するエリアとなっている。なお、登別駅は登別温泉街の玄関口として機能している駅で、日常利用のニーズが高い幌別駅に対して、登別駅は観光利用のニーズが高い駅となっている。
現在、登別―幌別―東室蘭―室蘭間には、おおむね1時間に1本程度の普通列車が設定されており、これを補完する形で特急すずらん号が設定されている。特急すずらん号は6往復が設定されているが、このうち1往復は東室蘭駅折り返しで運転されている。こうしたことから、登別―幌別―室蘭間には一定の区間利用の需要があると考えられるが、幌別駅や鷲別駅から乗車する場合には、事実上の各駅停車であるにもかかわらず、東室蘭―室蘭間で特急料金が不要となるような特例は設定されておらず、特例格差とも言える状況となっている。安価な料金で乗車できる列車本数が増えれば、需要の掘り起こしにつなげられることも期待できるが、現状では幌別駅や鷲別駅から室蘭方面に乗車する場合は、短距離であるにもかかわらず一律850円の指定席特急料金が課されることになるため、利用者はほとんどいない。
短区間の利用でも高額に
幌別駅と鷲別駅から室蘭方面で特急すずらん号に乗車した場合の、乗車券と特急料金の金額を調べたところ、下記のようになった。
・幌別―東室蘭 乗車券290円、特急券850円の合計1,140円
・幌別―室蘭 乗車券440円、特急券850円の合計1,290円
・鷲別―東室蘭 乗車券200円、特急券850円の合計1,050円
・鷲別―室蘭 乗車券290円、特急券850円の合計1,140円
地域の方に話を聞いたところ、特急すずらん号については「予約方法や切符の受け取り方法が煩雑になり、利用したくても利用しにくい状況が続いている」という。利用者回復のためには、札幌方面への長距離利用だけではなく、登別室蘭地区の地域内利用についても、地域の実情に応じた切符の制度改正や販売面での利便性確保が重要ではないだろうか。
(了)