モンハン「アイスボーン」出荷数を大胆予想【後編】ズバリ600万本 「G」と比較&巧みなビジネスモデル
世界で1300万本超を出荷したカプコンの人気ゲーム「モンスターハンター:ワールド」の超大型拡張コンテンツ「モンスターハンターワールド:アイスボーン」が6日にいよいよ発売されます。前後編に分けて「アイスボーン」のダウンロード数を含む出荷数を大胆に予想してみました。後編はセット版の売れ行きと、長く売り続けられるビジネスモデルについてです。
ある程度予想ができるダウンロードに対し、難しいのは新規購入者の数です。「モンスターハンター」のシリーズはこれまで、上級プレーヤー向けの強化版「G」を本編発売の概ね1年後に発売していた実績があります。その日本国内の推計販売データ(ファミ通調べ、廉価版を含む)を取り上げてみましょう。ちなみに追加コンテンツ「アイスボーン」も、これら「G」の流れに沿うものです。
モンスターハンター(2004年、PS2)約29万本
モンスターハンターG(2005年、PS2)約24万本
モンスターハンターポータブル 2nd(2007年、PSP)約172万本
モンスターハンターポータブル 2nd G(2008年、PSP)約423万本
モンスターハンター4(2013年、3DS)約359万本
モンスターハンター4G (2014年、3DS)約262万本
モンスターハンタークロス(2015年、3DS)約283万本
モンスターハンターダブルクロス(2017年、3DS)約173万本
初代モンハンは数が少なく相当なコアユーザーが多いためか、「G」の購入率が約8割以上と高めです。「2nd G」は日本で社会現象化したので例外として、比較的参考になりそうなのは、「4G」と「ダブルクロス」でしょうか。「4G」は「4」の販売数の7割強、「ダブルクロス」は「クロス」の販売数の6割強です。これら各ゲームのエンディングを迎える確率を「ワールド」と同じく5割弱と推測すると、1~2割の新規ユーザーという感じでしょうか。これらは、あくまで国内の数字なのですが、一つの指針にはなると思います。そしてこれらの数字を「ワールド」「アイスボーン」に当てはめると、1000万本の6~7割、600万~700万本というとんでもない数字が出ます。「4」と「クロス」は3DS、今回は据え置き型機(PS4や海外ではXbox One)とPCなので、以前のままではないかもしれませんが、一つの指針にはなるでしょう。
注意したいのは、ネット配信型の同作の売れ行きはロングテール(しっぽの形にように長期間売れること)で、時間が経つほど数字を積み上げて伸びます。無料のアップグレードで魅力的なモンスターを追加したり、企画次第でもそれなりに売れます。もっと言えば、ダウンロードが伸び悩むことがあれば、期間限定の値下げもできるわけで、いくらでも販売のテコ入れが可能なのです。さらに中国で販売されたら数字は大きく伸びるでしょうから、さらに数字が読みづらくなります。
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「アイスボーン」は「ワールド」に比べて、高収益が見込めることもポイントです。「ワールド」は、ゼロベースから作成したため数年かかっており、相当の開発コストがかかっています。以前に同社の社長やプロデューサーにもインタビューをしたときも、金額こそ教えてくれなかったものの開発費が巨額であることは認めています。その後、さまざまな手で同作の損益分岐点を知ったのですが、私の想定以上で「ありえない!」と思いました。本当に社運を賭けたといえる額(本数)で、世界展開というリスクを取ったからこその大成功といえますね。
「アイスボーン」は、「ワールド」を作った後でクリエーターたちも開発に慣れているため、本編よりも開発期間はかなり短く、コストは相当抑えられます。当然ですが損益分岐点はかなり低いであろうし、おまけにダウンロード販売なのでパッケージよりも利益が見込め、かつユーザーの購買動向もつかめます。ゲームのブランド価値もアップし、ユーザーの満足度は高まり、客単価も押し上げ、ダウンロードコンテンツなので中古ゲーム市場への流出も抑えられます。メリットの大きい巧みなビジネスモデルなのです。
なお「アイスボーン」の発表があったとき、ゲーム中で暑さを和らげるアイテム「クーラードリンク」、体を温める「ホットドリンク」という二つの定番アイテムが頭をよぎりました。私が「ワールド」をクリアしたとき、「クーラードリンク」はあったのに「ホットドリンク」が見当たらなかったので、「もしかしたら寒冷地を舞台にした隠しコンテンツがあるのでは?」と内心思ったのです。しかし、これだけ大規模な追加コンテンツを用意しているとは予想していませんでした。カプコンが「ワールド」に巨額の開発費を投じたことは分かっていたので、ビジネス面から考えると追加コンテンツの発表があることは想定できたはずです。
“答え合わせ”は、2020年1月に発売される「アイスボーン」のsteam版を待ち、2020年3月期の決算で……ということになります。不確定要素はありますが、追加ダウンロード版は約450万本、セット版は約150万本、合計約600万本というのが私の予想です。もう少しアバウトな数字にして逃げる手もあるのですが、思い切って絞ってみました。追加ダウンロード版は、まだ「ワールド」のエンディングを迎えていない復帰組も遊ぶと判断して強気にしてみました。セット版の数字は予想が難しいのですが、世界展開をしていてプライスプロテクション(海外ではパッケージ版の売れ残りの値下げがありえる)なども考慮して、こちらも強気にしています。カギを握るのは新規ユーザーの獲得なので、ぜひ販促に力を入れてほしいところです。
同作の出荷目標の数は明らかになっていませんが、当然カプコンは手堅くして、私の予想した数字が半分ぐらいになっても相応の黒字を叩き出せるようなビジネスモデルになっているでしょう。もちろん、私の予想が「低すぎた」というほどの、ライバル会社が目の色を変えるほどの大ヒットを期待しています。
ゲームをプレーするのも楽しいですが、せっかくであれば同作の出荷数を予想して、SNSなどでアップしておき、後で答え合わせをしてみると、より楽しめると思いますよ。
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