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2016トレード・デッドライン総括。ポストシーズン進出に向け、あのチームはこんな選手を手に入れた

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョナサン・ルクロイ(テキサス・レンジャーズ)Aug 4, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

この夏は、例年を上回る数のトレードが成立した。あと2ヵ月となったレギュラーシーズンを戦い抜き、その先にあるポストシーズンに進むために、それぞれのチームはどんな選手を獲得したのだろうか。5月末からデッドラインまでの補強について、12チームの動きを振り返ってみた。

■トロント・ブルージェイズ

フランシスコ・リリアーノ/SP(←パイレーツ)、メルビン・アップトンJr./OF(←パドレス)、ホアキン・ベノワ/RP(←マリナーズ)、スコット・フェルドマン/RP(←アストロズ)、ジェイソン・グリーリ/RP(←ブレーブス)

5月末にグリーリを獲得した後、しばらく鳴りを潜めていたが、デッドラインまでの1週間に4件のトレードを成立させた。リリアーノを加え、ローテーションは6人に。外野3ポジションを守るアップトンは、パドレスで16本塁打を放ち、20盗塁を決めている。ブルージェイズに2ケタ盗塁の選手は皆無だった。

■ボルティモア・オリオールズ

ウェイド・マイリー/SP(←マリナーズ)、スティーブ・ピアース/IF-OF(←レイズ)

オリオールズで5先発以上した6投手のなかに、防御率4.00未満はクリス・ティルマンしかいなかった。マイリーも移籍時点の防御率は4.98ながら、直前の3登板は続けてクオリティ・スタートを記録し、この間の防御率は2.79だった。ピアースは232打席で.309/.388/.520、10本塁打とよく打ち、昨シーズンまでプレーしたオリオールズへ戻ってきた。他には、東京ヤクルト・スワローズを退団したローガン・オンドルーセックと7月29日に契約。オンドルーセックは翌日からマウンドに上がっている。

■ボストン・レッドソックス

ドルー・ポメランツ/SP(←パドレス)、ブラッド・ジーグラー/RP(←ダイヤモンドバックス)、フェルナンド・アバード/RP(←ツインズ)、アーロン・ヒル/IF(←ブルワーズ)

ジーグラーは昨年5月から今年6月にかけて、43連続セーブ成功を記録している。クローザーのクレイグ・キンブレルは故障から復帰したが、上原浩治はいつ戻れるかわからず、ジーグラーの役割は小さくない。4番手以降に不安を残すローテーションには、17先発で防御率2.47、奪三振率10.15とブレイク中のポメランツを加えた。デビッド・オティーズのラストイヤーだけに、レッドソックスは何としてもポストシーズンに進みたいところだ。

■クリーブランド・インディアンス

アンドルー・ミラー/RP(←ヤンキース)、ブランドン・ガイヤー/OF(←レイズ)

ブルペンと外野はレベルアップしたが、ヤン・ゴームズが故障している捕手の穴埋めはできなかった。ジョナサン・ルクロイの獲得に動き、ミルウォーキー・ブルワーズと合意に達したものの、ルクロイにトレード拒否権を行使された。ミラーの加入により、コディ・アレンはクローザーからセットアッパーに。ガイヤーは外野3ポジションをこなし、打席では左腕に強い。ライトを守るロニー・チゼンホールは、左腕を打ちあぐねている。

■テキサス・レンジャーズ

ジョナサン・ルクロイ/C(←ブルワーズ)、ジェレミー・ジェフレス/RP(←ブルワーズ)、カルロス・ベルトラン/OF(←ヤンキース)、ルーカス・ヘアレル/SP(←ブレーブス)

ルクロイを獲得して正捕手の不在を解消し、シーズン絶望となったプリンス・フィルダーに代わるDHには、ベルトランを手に入れた。ルクロイと同時に加入したジェフレスはセットアッパーとして投げるが、ブルワーズでは27セーブを挙げ、1度しか失敗していない。ローテーションに加わったヘアレルは、故障中のデレク・ホランドコルビー・ルイスのどちらかが復帰するまでのつなぎだろう。

■ワシントン・ナショナルズ

マーク・マランソン/RP(←パイレーツ)

7月24~28日に3登板続けて失点したジョナサン・パペルボンに代え、30日に獲得したマランソンをクローザーに据えた。

■マイアミ・マーリンズ

アンドルー・キャッシュナー/SP(←パドレス)、フェルナンド・ロドニー/RP(←パドレス)

6月末に加入したロドニーの防御率は、移籍前が0.31、移籍後は6.46と極端に違う。キャッシュナーが移ってきたのはロドニーの1ヵ月後。このトレードでは2人の先発投手が加わったが、コリン・レイは7月30日のマーリンズ初登板で肘の痛みを訴えて降板し、翌々日にパドレスへ再びトレードされた(交換相手は最初のトレードでパドレスへ移った4人のうちの1人)。数日後、レイはトミー・ジョン手術を受けることが決まった。

■ニューヨーク・メッツ

ジェイ・ブルース/OF(←レッズ)、ジェームズ・ローニー/1B(←パドレス)、ケリー・ジョンソン/IF-OF(←ブレーブス)、ジョン・ニース/RP(←パイレーツ)

メッツがブルースに期待しているのは、昨夏に加入して17本塁打を放ったヨエニス・セスペデスのような働きだろう。ブルースが加わった直後、セスペデスはDL(故障者リスト)に入った。ローニーは5月下旬までパドレスのAAAにいて、故障したルーカス・ドゥーダの穴埋めとして移籍した。ドゥーダは今シーズン中に復帰できるか微妙なところだ。ジョンソンは昨年7月にブレーブスからメッツへトレードされ、オフにFAとなってブレーブスと契約したが、6月に再びメッツへ放出された。ニースは昨年12月のトレードで、ニール・ウォーカーと入れ替わりにパイレーツへ。それまではメッツ一筋に投げていた。メッツはジョンソンとニースの間に、ロッキーズを解雇されたホゼ・レイエスも呼び戻している。レイエスは7月下旬にDL入りしたが、今週中に戻ってくる見込みだ。

■シカゴ・カブス

アロルディス・チャップマン/RP(←ヤンキース)、ジョー・スミス/RP(←エンジェルス)、マイク・モンゴメリー/RP(←マリナーズ)、クリス・コグラン/OF-IF(←アスレティックス)

ブルペンにチャップマンら3人を加え、108年ぶりのワールドチャンピオンに向けて万全の態勢を整えた。6月上旬に加入したコグランは、過去2シーズンもカブスでプレーした。移籍後のポジションは外野両翼だが、アスレティックスでは二塁と三塁も守っていた。

■セントルイス・カーディナルス

ザック・デューク/RP(←ホワイトソックス)

デュークは左打者限定のリリーバーではなく、右打者も抑えることができる。

■ロサンゼルス・ドジャース

バド・ノリス/SP(←ブレーブス)、リッチ・ヒル/SP(←アスレティックス)、ジョシュ・レディック/OF(←アスレティックス)、ジェシー・チャベス/RP(←ブルージェイズ)、ジョシュ・フィールズ/RP(←アストロズ)

開幕からローテーションを守っているのは前田健太スコット・キャズミアーしかおらず、6月末に加わったノリスも8月にDL入りした。ヒルは8月1日の移籍時点で故障していて(左手中指のマメ)、まだドジャースでは投げていない。放出の噂が出ていたヤシエル・プイーグは、ヒルとともにレディックが加入したのに伴い、AAAへ送られた。

■サンフランシスコ・ジャイアンツ

マット・ムーア/SP(←レイズ)、エデュアルド・ヌネス/IF(←ツインズ)、ウィル・スミス/RP(←ブルワーズ)

ムーアの加入により、ローテーションには水準以上の力量を持つ4人が揃った。ヌネスは三塁をコナー・ギレスピーと分け合う他、遊撃と二塁も守る。移籍前には12本塁打、27盗塁を記録した。6月下旬まで正三塁手だったマット・ダフィーは、ムーアの交換要員として放出された。スミスは今シーズンこそ故障で2ヵ月出遅れたが、過去2シーズンのホールドは50を数える。これは、今夏にシカゴ・カブスへ移籍したジョー・スミスらと並び、4番目に多い。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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