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ようやく結婚しようとしたら親が大反対。私たちはどうすればいいのでしょう?~結婚相談所の本音(10)~

大宮冬洋フリーライター
親は説得するのではなく納得してもらう姿勢が大切です。イラスト:つぼいひろき

 マッチングアプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を続けている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が返ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 今回の質問は、婚活中の人からときどき聞く親問題。当事者同士は結婚したいのに親の大反対にあって破談になることは少なくないのだ。いわゆる「毒親」だと感じるケースもある。どうすればいいのだろうか。

 相談先として筆者の頭に浮かんだのは、神奈川県で結婚相談所ファニーキープスを営む佐藤隆嗣さん。ファニーな名称を掲げるだけに、いい意味で「軽い」印象の男性だ。とても50代後半とは見えないが、婚活業界で働いて30年以上の経験と実績があるだけに、その回答には重みと温かさがある。

親の意見には耳を傾けよ。子どもよりも親のほうが人を見る目があるから

――学生同士ならばともかく、社会人男女の結婚に親が反対するというのはどうなんでしょうか。「親離れ、子離れができていない」と僕は感じてしまいます。

 結婚相談所を長く営んでいると、男性側の条件について女性側の親御さんが心配して反対をするというケースはときどきあります。私は、「基本的には親の意見には耳を傾けたほうがいい」と思っています。なぜならば、子どもよりも親のほうが人生経験を積んでいるので、人を見る目があるからです。親同士の関わりや相性も考慮してシビアにジャッジする面もあります。

 若い人同士の場合、結婚相手としての基本的な条件に目を向けず、恋愛の熱情だけで突き進むことも少なくありません。駆け落ちのような結婚をして、「やっぱりひどい人だった。親の言うことを聞いておけば良かった」となることもあります。

――言われてみれば、そういうケースの結婚と離婚はときどき目にしますね。

 ただし、親の反対を丸のみにして言いなりになる必要もありません。大事なのは、なぜ反対なのかを理解すること。理由を1つずつちゃんと聞いて、親の心配を解消するように丁寧に説明するべきなんです。

 例えば、男性がITベンチャー企業に勤務していることを親が心配していたとします。ならば、その事業分野がどれぐらい成長していて、数年後には彼はこのような立場にいることが普通なんだよ、と説明しましょう。説得するのではなく、納得してもらう姿勢が大切です。

 親はなぜ子どもの結婚に反対するのでしょうか。それは、子どもに幸せになってほしいからです。親の心配を1つずつ解消しながら、一方では「私はこの人と結婚するのが一番幸せなんです」と情に訴えかけるのが王道だと思います。

「おとなしくて頼りない」と反対された男性。何度も通って誠実な人柄を知ってもらった

――佐藤さんが担当した事例を教えてください。

 本人同士は結婚したいのに当初は親御さんが反対していた、というケースですね。もちろん、たくさんあります。あるケースでは、私は女性のほうを担当していました。お相手の男性とも会わせてもらったのですが、すごくおとなしくて自分の意見をはっきりとは言えない方でした。親御さんからすると「頼りない。娘を任せられない」と感じたのかもしれません。ちなみに、その女性のほうは割としっかりした方でした。

 彼は確かにおとなしい。でも、逆に言えば人畜無害なのです。素直だし、ギャンブルや浮気の心配もありません。結婚相手としてはむしろ安心です。だから、親に反対されているのならば誠意を見せるしかないよ、断られてもめげずに顔を見せに行っちゃって、とアドバイスしました。

――「行っちゃって」という言い方が軽々しくていいですね(笑)。

 普通の人は1、2回行って反対されたらすごすごと引っ込みますよね。でも、彼には本当に誠意がありました。懲りずに何度も彼女の実家に顔を出したんです。しまいには家族旅行にまで付いて行ったそうです。

 相変わらずおとなしいので説得できるわけではありません。何度も会っているうちに人柄の良さを知ってもらったのだと思います。情が移った、と言ってもいいかもしれません。心理学でいう「単純接触効果」でしょう。最後には結婚を認められて、今ではお子さんもいる幸せな家庭を築いています。

占いで結婚を反対されたレアケース。そんな親からは離れてもいいかもしれない

――どう考えても理不尽な反対に遭うケースもありますよね?

 はい。多くはありませんけど、確かにそのようなケースもあります。これも私は女性側を担当していたときのことです。いわゆる「三高」の申し分ない男性とのお見合いと交際に成功しました。しかも、その男性は人柄も良くて誠実。本当にお似合いのカップルなのです。誰からも祝福される結婚になると思っていました。

 でも、女性の母親は大反対。占いをすごく信じている方で、占いの結果だけでその男性との結婚を反対したのです。彼も何度か会いに行ったのですが、母親の意見を変えることはできませんでした。反対理由が占いなのでどうしようもありません。

 父親はすでに他界していることもネックになりました。もしご存命であれば、父親に味方なってもらうことで母親を納得させることも可能だったかもしれません。

 母親と娘の関係自体は悪くありませんでした。でも、子どもには子どもの幸せがあります。私は彼女にこのように話して背中を押しました。「占いの結果に沿うような相手と結婚しても、その人を好きになれなかったら幸せになれるだろうか。彼との想いが強いのであれば、親から離れてもいいんじゃない? 自分たちの人生なんだから」と。

 その後、彼らは自分たちの判断で結婚して幸せに暮らしています。母親の反対を無視した形になってしまいましたが、お孫さんができれば親の心境も変わるかもしれません。

 以上が佐藤さんへのインタビュー内容だ。多くのケースでは「親の意見は聞いたほうがいい。親は人生の先輩だし、子どもの幸せを願って反対しているのだから」という佐藤さんの話には目から鱗が落ちる気がした。

 恋愛とは違い、結婚は生活そのものだ。お互いの親きょうだいとも「家族」になって支え合うという側面もある。生活習慣や子どもの教育方針を含めて、お互いが育った環境の影響が強く出るので、それを無視して結婚すると失敗しやすい。ならば、親の意見はちゃんと聞き、その心配や不安を解消する努力はするべきなのだ。

 親の不安を解消しようとするプロセスで、一緒に結婚に向かおうとしている相手の本性が見えたりする。思った以上に思慮深くて安心することもあるだろうし、意外なほど非情なので結婚を思いとどまることもあるかもしれない。自分たちの結婚を客観的かつ冷静に見つめる機会として、「親の承諾」を活用することができると感じた。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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