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武豊騎手が騎乗したUAEオークスの結果速報とレース後、天才騎手が口にした事とは……

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
UAEオークス、パドックでのセランと武豊騎手

レース前に多少イレ込む素振り

 現地時間20日、ドバイのメイダン競馬場でUAEオークス(ドバイG3、ダート1900メートル)が行われ、これに挑戦したセラン(牝3歳、栗東・松永幹夫厩舎)は6頭立ての3着という結果に終わった。

 18日の深夜、日本を発った武豊が現地に入ったのは19日。一泊だけして早速レースに臨んだ。

レースの約2時間半前に競馬場入りした武豊
レースの約2時間半前に競馬場入りした武豊

 出走馬はセランを含めて6頭。少頭数といえ、UAE1000ギニー(準重賞)の1、2着馬もいて予断を許さないレースとなった。

 発送時刻の約2時間半前に競馬場入りしたナンバー1ジョッキー。海外もドバイも慣れたもので、普段通りリラックスした姿勢でレース前にはテレビ局のインタビューに笑顔で答えるシーンもあった。

レース前、テレビインタビューに答える。右から2人目はF・ベリー元騎手で、1番右が筆者
レース前、テレビインタビューに答える。右から2人目はF・ベリー元騎手で、1番右が筆者

 そんな鞍上とは裏腹、少々落ち着きを欠いたのが鞍下のセランだ。松永幹夫調教師は言う。

 「いつもすごくおとなしくて扱いやすい馬なのですが、初めてのナイター競馬のせいか少しテンションが上がってしまいました」

 手綱をとった天才ジョッキーも異口同音に語った。

 「返し馬からゲート裏で輪乗りをするにつれ、イレ込んでしまった感じでゲートの中はかなりうるさくなってしまいました。その影響か、スタートも少し飛び上がるような感じになってしまいました」

返し馬。「この後あたりから少々テンションが上がった」と武豊
返し馬。「この後あたりから少々テンションが上がった」と武豊

 序盤は4番手を追走した。キャリアの少ない馬ではあるが、キックバックで飛んでくるダートを嫌がるような素振りは見せずに走っていた。逃げたのは1000ギニー同様、ダウンオンダバイユーで2番手がその1000ギニーの覇者ドバイラヴ。徐々に前との差を詰めたセランは3~4コーナーでこの2頭を完全に射程圏に入れた。その時の心境を武豊は次のように語った。

 「3~4コーナーは勝負圏内で回りたいと思ったので、詰めていきました。いつもみたいにモタれる事はなく、ここまではうまくいきました」

レース前。松永幹夫調教師(左)と武豊騎手
レース前。松永幹夫調教師(左)と武豊騎手

結果を受けて天才騎手が語った事とは

 ただ、そこからが考えていた通りにいかなかった。

 「最後は突き放されてしまいました。3着といえ残念ながら完敗でした」

 勝ったのは1000ギニー2着のダウンオンダバイユーで2着がドバイラヴ。セランは残念ながら大きく離されての3着となった。

3着でゴールしたセラン
3着でゴールしたセラン

 「勝てばUAEダービーと考えていたのですが、この結果だと厳しいかもしれませんね。この後、どうするかはまた考えたいと思います」

 指揮官は残念そうな表情でそう語った。

 厳しい結果ではあったが、武豊はしっかりと前を向いて、言った。

 「勝ち馬は確かに強かったけど、セランはドバイにきて10日程度だし、イレ込んでしまったので力を出し切ったとは言えない競馬でした。可能性を求めてのチャレンジで馬の状態は悪くなかったし、また負けずに挑戦を続けたいですね」

 栄光は挑戦の先にある成功例だ。そのほんの僅かな成功例を掴むためには、挑戦を続けるしかないのである。

※なお、レース後、主催者からスコープを入れたところ出血を発症していたとの発表がありました。

レース後のナンバー1ジョッキー。「挑戦し続ける」と力強くしめくくった
レース後のナンバー1ジョッキー。「挑戦し続ける」と力強くしめくくった

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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