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田中美佐子さん離婚で考える、これからの格差婚のカタチ

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:西村尚己/アフロ)

■「収入格差100倍婚」から28年、田中美佐子さん夫婦の離婚

女優・田中美佐子さん(63歳)が、夫でお笑いコンビ・Take2の深沢邦之さん(56歳)との離婚を発表しました。95年の結婚当時は「収入格差100倍婚」と報道され、当時は女性上位の格差婚が珍しく話題になりました。

今回、離婚の理由は明かされていませんが、長期に渡る話し合いをしていたことが示唆されています。報道では、妻が不妊治療の末、子育てのために女優業を3年ほどお休みされたこと、夫も結婚当初から徐々に知名度を上げるも、芸人としてのお仕事をセーブされ、直近ではご両親の介護をされていたこと等が報じられています。ご夫婦ともに芸能関係で分かち合えるものがあった一方で転機も多く、結婚当時の格差はもはや直接の原因ではなく、状況や価値観の変化、お子さんが成人されたことなど複合的な理由から前向きな選択として決断されたことが推察されます。それぞれの分野で活躍するお二人。人生100年時代、50~60代での熟年離婚だけでなく、新たなパートナーを得る方も少なくありませんから、今後の幸せをお祈り申し上げます。

■格差婚は難しい? 夫婦生活を良好に続けるコツは……

私の結婚相談所は青山という土地柄もあり、女性上位の格差婚は増加傾向です。ただ一般的に、バックグラウンドが似たもの同士のマッチングはスムーズに進みやすいですが、格差婚の場合、話し合いが不足したまま結婚へと進んでしまうと、破談や離婚のリスクが高まることは事実。

例えば、後になって男性が女性の収入が多いことを僻んだり足を引っ張ったり、女性が男性の収入の少なさに文句を言ったりするのは、マッチングの不一致であり、話し合い不足です。私がお世話する婚活では、婚活中に結婚後の働き方や家事育児の分担を話し合い、収入の差は埋まらないことを前提に、どういう夫婦になっていくかを共有します。そして、尊敬・尊重の気持ちをお互いが強く持ち続けられるかをしっかり確認しています。

■女医と公務員、7歳差で年収3倍夫婦の10年愛

約10年前、私の結婚相談所で、女性のほうが年収が約3倍多い、という格差カップルがご成婚されました。当時、妻は42歳の医師で年収2000万円、夫は35歳・転勤ありの国家公務員で年収600万円でした。先日、久しぶりにご挨拶にいらっしゃったのでお話を伺うと、格差婚夫婦円満の秘訣が詰まっていました。

お二人はDINKSでお子さんはなく、仕事柄から別居婚を選び、月に数回お互いが数泊するライフスタイルでした。夫は転勤先から今でも毎日電話をし続け、妻はどんなに忙しくても夫が遠方に長期出張する場合は、見送りに駆けつけました。

また、当時彼は別居でお金がかかるなか節約をし、毎月彼女に10万円ほど仕送りをし続けました。彼女は手をつけずに貯金し、今年それを頭金にマイホームを購入したのだそうです。

婚活中は、お互いの両親は反対。男性側は、年齢的に子供を持てないかもしれないことを、女性側は、格差婚になること、結婚して家を出ることを寂しがりました。

私が当時、女性側に「お母様に反対されていますが、あなたはどうしたいですか?」とお聞きすると、「私は、彼を愛しています」とハッキリおっしゃいました。それを聞き、「それなら飛び込んで。お母様の反対は心配の裏返しですから、一生懸命幸せになって、反対したことを後悔させてあげて、恩返しにしましょうね」と言いました。実際、夫の仕送りをお母様は神棚に飾って、「いつも気遣ってくれて本当にありがたいね、素敵な旦那様ね」と言うようになったそうです。

結婚当時は恋人であり、きょうだいのような2人でしたが、時を経て、彼の頼り甲斐が増し、彼女は変わらない美しさで、歳の差を感じさせなくなっていました。今でもお互いを「さん付け」で呼び合う、穏やかで微笑ましい関係性は変わっていませんでした。

■格差婚の離婚を防ぐ、夫婦の心の持ちよう

そもそも夫婦なら世帯収入で家庭を回せば良いので、どちらが稼いでも問題ありません。年上男性が稼ぎ、若い女性と結婚しても、格差婚とは言いませんから、まだまだ世間の見方は偏っています。

ただ、例えば収入が少ない男性が家事育児を全くしない、相手を尊敬・尊重しない、浪費をしたり、努力をしないまま年齢を重ねたりすれば、魅力は減っていく一方で、成長の差が浮き彫りになるでしょう。

逆に、収入が多い女性がその差を責めたり、「男性なのだから…」と古い価値観を押し付けたりするのもよくありません。恋愛感情で結婚を決めたものの、「奥さんは立派なのに、旦那さんは……」などという外野からの心無い声に影響されてしまうことにも注意したいもの。そういったケースは女性上位の格差婚の方が強いのが事実です。

夫婦は対等の関係であることを前提に、収入が少ないほうがサポート役にまわるなどしてバランスを取り、お互いが心地よく感じられればそれで良いのです。例えば、日頃から働く妻をサポートし、夫が生活を整えて、働きやすい環境、リラックスできる家庭を作る。そして、感謝や尊重の気持ちを言葉にし、家でも外でも妻を立てる。お子さんがいらっしゃる場合は「ママは立派な仕事をしているんだよ。パパはいつも感謝してるよ。家族のために頑張ってくれて、ありがたいね」と仕事への理解をサポートする。妻に対しても、「僕が◯◯をやるから、今日はゆっくりしてね」と謙虚な態度を心がけることなどが一例です。

どちらかが好き勝手をして甘えていたり、稼いでもらう・やってもらうのが当たり前だと思ってしまうのも違います。自分たちが幸せであればいい、一緒に家庭を運営する同志としてできることで役割分担をしていればいい、とお互いが納得することが大切です。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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