Yahoo!ニュース

「薬物違反&スーパーボウルMVP」はあっても「薬物違反&ワールドシリーズMVP」はない

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジュリアン・エデルマン(ニューイングランド・ペイトリオッツ)Feb 3,2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 スーパーボウルのMVPに、ジュリアン・エデルマン(ニューイングランド・ペイトリオッツ)が選ばれた。エデルマンはPED(パフォーマンス・エンハンシング・ドラッグ/運動能力強化薬物)の陽性反応により、開幕から4試合の出場停止を科された。

 NFLと違い、MLBでは、PEDの陽性反応を示した選手は、その年のポストシーズンに出場できない。昨シーズン、シアトル・マリナーズのロビンソン・カノー(現ニューヨーク・メッツ)は、5月に80試合の出場停止となった。この処分が終わったのは8月だが、マリナーズが10月からのポストシーズンに進出しても、カノーには出場資格がなかった。ワールドシリーズだけでなく、ワイルドカード・ゲーム、ディビジョン・シリーズ、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズのいずれもだ。ちなみに、マリナーズは89勝を挙げたものの、ポストシーズンには届かなかった。

 とはいえ、MLBも最初からそうだったわけではない。2014年より、最初の陽性反応に対する出場停止は50試合から80試合、2度目は100試合から162試合に変更された(3度目の永久追放はそのまま)。同時に、その年のポストシーズンに出場できないという処分も加わった。

 この前年、デトロイト・タイガースにいたジョニー・ペラルタは「バイオジェネシス・スキャンダル」に関与した一人として、8月に50試合の出場停止を科された。検査による陽性反応ではないが、禁止されているPEDの購入と使用だ。9月下旬に処分が明けたペラルタは、レギュラーシーズンの残り3試合に続き、その後のポストシーズンにも出場した。ディビジョン・シリーズにMVPはないものの、ペラルタは第3戦も第4戦も同点に追いつく一打を放ち、対戦したオークランド・アスレティックスの選手を含め、このシリーズ最多の5打点を挙げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事