W杯が終わった 今もういっぺん「オフサイド」の話するっぺ【超基本説明】
誰に向けて書いてんだこの原稿は?
と、聞かれるのなら、このふたつの層だ。
「今回のワールドカップでサッカーに関心を持った女性」
「コアな男性サッカーファン」
何の話がしたいのかというと、「オフサイド」。
昨今の細かいルール変更の話じゃない。それ自体が何なのか、という超基本説明だ。カタールW杯が終わった今、これがとても重要だからだ。大会中、日本代表の戦いを見てちょっとサッカーにハマりそうになっている女性(20代/都内在住)がこんなことを話していた。
「本田圭佑の解説が面白かったのでサッカーに興味を持ちました。ああ、選手はそう考えるんだというのが分かって。もうちょっとルールが分かったら、もっと楽しめると思うんですが」
ホント、今がチャンスなのだ。新しいファンを獲得するための。
彼女にオフサイド知ってるの? と聞いたら「知らない」という。いまや世界211の国地域が加盟するFIFAの世界大会で2回連続ベスト16に入る我が国、テレビの中継とてこれはやらない。だからと言って誰も説明しない。
オフサイドの説明なんかすんなよ。時代が逆戻りするような話だから。
コアな男性ファンは確かにそうも思うだろう。筆者は2010年に郷里のJリーグクラブ・ギラヴァンツ北九州が最初のJ2昇格を果たした際に、地元ラジオ局からこれを求められた。思わず聞き返してしまった。
「えっ? Jリーグが出来て20年近くですよ。今、またオフサイドの説明ですか?」
当時の自分をぶっ叩いてやりたい。リスナー、視聴者、読者(いずれにせよ)は変化する。10年、20年も経てばまた「オフサイドを知らない人」は出現する。当たり前のことだ。昭和19年頃の教育勅語でもあるまいし、学校で徹底的に叩き込まれる知識ではない。
さらに大会中、元日本代表の岡崎慎司(ドイツやイギリス、スペインでめちゃくちゃ活躍してきたFW)もSNSでこんな発言をしていた。
サッカー好きよりも興味ない人。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルが共同調査した「2022年スポーツマーケティング基礎調査」(今年10月27日公開)によると、2021年に「サッカー日本代表のテレビ中継を見る頻度がやや減った・かなり減った」という人が回答者の22.8%。参考までに「サッカーJリーグファン人口」は、788万人で昨年比90万人減だという。
新しい市場がとても多い。希望のある話だ。そこに新しいニーズがあるのだ。だからこそ、今ここでオフサイドの話を。
「ゴール前で待ち伏せするなよ」というルール
前置きが長くなった。オフサイドとは何なのか。
要はサッカーで攻撃する時、「ゴール前で待ち伏せしちゃいけませんよ」ということだ。
青が日本で、赤がスペインだとしよう。
両チームの選手たちは、通常ボールのある場所を巡って試合を展開している。めちゃくちゃぶつかり合うし、華麗なテクニックも生まれる。汗もかくし、時に負傷者も生まれる。
そういった中で、仮に一人だけ「その外でGKの前で待ち伏せしていたらどうなる?」
そこに後ろからポーンとボールを蹴ると…残る相手はGKだけ。
これじゃ、何点でも入ってしまう。一生懸命ボールを巡って戦う人たちの意味がなくなってしまう。つまらない。
だから「待ち伏せを禁止する」。これがオフサイドなのだ。
言い換えるなら「ゴールする時には必ず相手の守備の1人はかいくぐってパスを受けなさい」というルール。
この「一人かいくぐる」という解釈は様々あるが、細かいことは分からなくてもよいと思います。今や勝手にAIが分析して、テレビ画面に出るので。「オフサイドライン」などという難しい用語も出てくるが、そんなものも知らなくて結構。
じゃあなぜこの反則を「オフサイド
(Offside)」というのか。
offは「~から離れて」
sideは「側」
つまり「味方の側から離れた状態」。元々はイギリスの軍事用語で「自身の戦力から追放され、敵陣に捕らえられた男」という意味もあるそう。
要は「ちゃんと味方と一緒に戦闘に加わりなさい」「ゴール前で待ち伏せしてるズルは認めませんよ」ということ。
まあ昔、学校の休み時間などのサッカーでいたんじゃないでしょうか? みんな一生懸命やってるのに「ゴール前でずっと待ってる悪ガキ」。アイデアは悪くはないが、これをやっちゃうとみんなが一生懸命汗を流している意味がなくなってしまうのだ。本人は面白いかもしれないし、2~3点くらいはこれで全体が盛り上がるかもしれないが、きっとみんなすぐに飽きる。
現実のサッカーの試合(ただし大きな国際大会に限る)では、足半分が飛び出していても「オフサイド」になる。ボールにチップが埋め込まれていて、精密に測れるようになっているのだ。それほどに許しがたい「待ち伏せ」ということなのだ。
女性の疑問「反則された後、なんで時間稼ぎしてるの?」
このオフサイドの他に、まだまだ世のサッカー詳しい方面が答えを持っておきたい内容がある。
筆者は今回のW杯が大会前にさっぱり盛り上がっていない時に周囲の若い女性に聞いていった。
「なんでサッカー嫌いなんですか?」と。
こういった答えが返ってきた。
「あんまりルールが分からない」
「点が入らない」
「ポジションの名前とかが多すぎてよく分からない」
「反則された後、ずっと倒れて時間稼ぎしているのがよく分からない」
「男の人がロマンを語りすぎるのがキモい」
難しいことが言えるのと同じくらいに、簡単なことを説明できることもかっこいい。そうじゃないだろうか。
最後に今回、サッカーに関心を持ってくださった女性の皆様。この競技、けっして4年に一度だけやっているわけではございません。下記の通りずっとやってます。
(了)
◆全国高校サッカー選手権(一発勝負に賭ける若者に涙)
2022年12月28日水曜日~2023年1月9日月曜日
◆2023年Jリーグ開幕(いっぺんサッカー専用スタジアムで見てみて)
2022年2月中旬が有力
◆アジア・チャンピオンズリーグ決勝(応援すごい)
2023年4月29日(@サウジアラビア)
同5月6日(@埼玉)
◆アジアカップ(日本代表が今度はアジアナンバーワンを目指します)
2024年1月~2月が有力
◆日本代表選手たちが所属するヨーロッパ各国のリーグ戦
1週間後くらいから再開されます。なんなら三笘薫、冨安健洋がプレーするイギリス(イングランド)は日本で言う「大晦日」「元日」にも試合をやってます。早速。バリバリ。SPOTV NOWやW杯に続きABEMA TVあたりでどうぞ。