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4マスはすべてがプラス、ネット広告はプラス12.9%(経済産業省広告売上動向2024年3月分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
広告売上の実情は(写真:イメージマート)

4マスは全部がプラス

経済産業省が先日発表した「特定サービス産業動態統計調査」の結果によれば、2024年3月分の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でマイナス6.8%となり、減少傾向にあることが分かった。主要業務種類5部門(4マスとも呼ばれる4大従来型メディアである新聞・雑誌・テレビ・ラジオと、新形態の広告媒体となるインターネット広告)では全部門がプラスを示した。上げた部門ではインターネット広告が一番上げ幅は大きく、プラス12.9%を示している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2024年2月~3月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2024年2月~3月)

今件グラフの各値は前年同月比を示したもので金額そのものではない。また前回月分からの動きが確認しやすいよう、2024年2月分のデータも併せてグラフに反映している。

しばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月では雑誌がプラスを示した。2015年以降4マスは概して軟調が続いており、特に紙媒体の新聞と雑誌は下げ基調が止まらず、2ケタ台の下げ率を見せたのは新聞が31回、雑誌は45回。それゆえに、今回月において新聞と雑誌双方がプラスになったのは、高く評価できる結果ではある。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)

一方、インターネット広告はプラス12.9%と前回月から続く形でプラスを示した。

なお4マスとインターネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。

↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2024年3月)
↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2024年3月)

全部門で最大の下げ幅を示したSP・PR・催事企画だが、金額は約746億円。売上高合計へはそれなりに大きな影響を与えたようだ。

インターネット広告は新聞の約7.11倍

部門別の具体的売上高は次の通り(億円単位における小数点以下は四捨五入しての表記となる)。

↑ 月次広告費(億円)(2024年3月)
↑ 月次広告費(億円)(2024年3月)

現時点では2014年1月を最後に、毎月の新聞の広告費の金額はインターネット広告の金額を超えておらず、金額面で主要業務種類5部門の上位順位はインターネット広告・テレビ・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約1432億円。約7.11倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は約285億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も前回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち、紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

次のグラフは主要5部門、そして売上高合計(主要5部門以外の広告も含むことに注意)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査でインターネット広告の金額が調査されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)

雑誌と新聞の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額が漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を継続して大量投入することは、少なくとも広告の直接対価によるものとしては想定しがたいので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されているようだ。

昨今の動向を見返すと、やや起伏は大きいもののインターネット広告が確実に上昇基調(プラス領域)の中にあり、他の媒体とのかい離が生じていたこと、テレビがプラスマイナスゼロ付近でもみ合いをしていたことが分かる。ラジオも似たような動きだったが、2017年初頭あたりから失速したようだ。

2015年に入ってから4マスの軟調さが際立ち、現在に至るまで紙媒体では継続しているのも気になる。2014年同月からの反動でもなく、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できない。とりわけ新型コロナウイルスの流行による影響を大きく受けているように見える。

他方、インターネット広告も2017年以降伸び率がやや頭打ち、むしろ低下を示している。特に2019年10月以降は低迷感が否めなかった。消費税率引き上げ、そして新型コロナウイルスの流行によるものだろう。さらに前年同月比で見る限りでは、新型コロナウイルス流行による広告費の減少ぶりは、リーマンショックのそれに等しい、むしろ下落期間が短い分だけ急降下な動きであることが確認できる。雑誌に限ればリーマンショック以上の下げ幅。そしてインターネット広告もともに大きく落ちていただけに、全体としてもより大きな下落といえる。

2020年夏ぐらいからの持ち直しで早期にプラス圏に転じ、さらに新型コロナウイルス流行前の水準に戻り、その上勢いよく成長しているようにすら見えるインターネット広告が救い。4マスも大きな上昇を見せていたが、これは前年同月の大幅減からの反動でしかないため、失速してしまっている。中でも昨今では再び新聞が大きな下落を示している。

インターネット広告において、2022年春あたりから成長が鈍化、さらには横ばいにと転じたようにも見られる。やはりロシアによるウクライナへの侵略戦争をきっかけにした物価高の影響だろうか。まだかろうじてプラス圏を維持している月が多いように見えるのが幸いではあるのだが。直近月でやや大きめな上げ幅を見せているのを見るに、今後の動向に期待がかかるところではある。

上記は今記事のダイジェストニュース動画(筆者作成)。併せてご視聴いただければ幸いである。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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