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憧れのセカンドハウスが賢く手に入る……沖縄の民泊マンションが「出せば売れる」理由

櫻井幸雄住宅評論家
梅雨入りした那覇中心部。マンションは多いのだが、民泊可能住戸はまだ希少。筆者撮影

 沖縄の民泊マンションが人気を高めている。

 那覇市内ではじめて「民泊利用可能」の新築マンションが登場したのは、今から3年前の2021年。全117戸のうち、45戸を民泊可能住戸としたマンションだったが、この45戸は販売開始から数ヶ月で完売してしまった。

 その後も、那覇市を中心に民泊可能住戸があるマンションは継続的に発売され、現在は沖縄県内で4つの民泊マンションが販売中となっている。いずれも、注目度が高く、私が定期的に調べている「新築マンション人気指数」の最新調査(2024年1月〜3月)でも、2マンションが高人気物件と認定された。

 同調査では全国で148物件が「人気マンション」と認定されたのだが、そのうち2物件が民泊可能マンションに……これは、2011年の調査開始以来はじめての出来事。とはいえ、民泊マンションが登場したのは2018年に「民泊新法」が成立してからなので、歴史はまだ浅い。民泊マンションでようやく人気物件が出てきた、ということになる。

 沖縄の民泊マンションは「爆発的人気」とまではいえない。

 しかし、人気が上がっているのは事実。しかも、その購入者の多くは、沖縄県外の在住者だ。沖縄県内在住の購入者は3割程度で、残り7割は県外在住者。東京、大阪に住んでいる人で、沖縄の民泊マンションを買っている人が確実に増えているわけだ。

 つまり、「一部の人が目を付けている」状態なのだが、人気物件を手に入れるためには、そのような段階がチャンスになるもの。多くの人が動き出してからでは、遅いのだ。

 民泊マンションに出ている最先端の動きを取材するため、本格的な夏が始まる前、梅雨入りしたばかりの沖縄に出かけた。

まだ絶対数が少ない民泊マンション

 海の美しさが広く知られている沖縄には、世界中から観光客が集まってくる。ハイシーズンにはホテルはもちろん、レンタカーを借りるのにも苦労する状況が生じる。

 ホテルが取りにくいのだから、民泊可能なマンションは多いのだろう、と思われがち。ところが、その数はびっくりするくらい少ない。というのも、「民泊」は、民泊新法の規定で、消防法や保健所の許可がないと運営できないからだ。

 特にマンションでは、既存の建物に「民泊はじめました」と看板を出せば営業ができるものではない。現実的には、新築マンションで、民泊が認められるように建設されたものでないと、運営できないのだ。

 また、「民泊マンション」といっても、全住戸が民泊利用可能という事例はまだ出ていない。

 新築分譲マンションを建てて、一部の住戸を民泊可能にする。その際、民泊可能住戸は全住戸の半分以下にする、というのが現在の主流である。

 つまり、世界的なリゾート、沖縄県においても民泊可能なマンション住戸はまだ数が少ない。

 少ないこともあって人気が高く、「出せば売れる」状況になっているわけだ。

 そして、価格は決して安くない。

 那覇中心部で建設されている「ブランシエラ那覇開南プレミスト」の場合、6月3日時点で購入可能な住戸は約58平米〜85平米の2LDKと3LDKで、価格は4780万円から1億1100万円となっている。これは、民泊可能住戸も、民泊利用ができない住戸も含めた全体の価格となる。

「ブランシエラ那覇開南プレミスト」のモデルルーム。那覇中心部で、お洒落なショップが集まる浮島通りにも近い。筆者撮影
「ブランシエラ那覇開南プレミスト」のモデルルーム。那覇中心部で、お洒落なショップが集まる浮島通りにも近い。筆者撮影

 「ブランシエラ那覇開南プレミスト」で民泊可能住戸は全194戸の半分弱となり、その価格は7000万円台が中心だ。

 眺望の開けた上層階で、十分な広さを備えた住戸が「民泊可能」として売り出されているため、価格は高めとなる。

 そこに投資用マンションと民泊マンションの違いがある。

民泊マンションの利点は、儲けではなく……

 沖縄で、民泊マンションを購入するのは、投資目的の人と思われがちだ。

 たしかに、2LDKとか3LDKの住戸を民泊として貸し出せば、ファミリーが利用するので、宿泊費は高く設定できる。が、年間の儲けは決して大きくはない。

 というのも、民泊マンションには「年間180日まで」という利用の上限が定められているからだ。365日フルに運用できれば、儲けは大きいだろう。しかし、180日までとなれば、儲けが出るまでには至らない。

 民泊の利益は、せいぜいローン返済金をまかなえるくらい、というのが実情である。それでもよい、とする購入者が多いのは、「沖縄でリゾートマンションを持つ」ことを第一に考えているからだ。

 ローン返済は民泊からの利益で行える。そして、自分は年間180日以上、大好きな沖縄でリゾートライフを満喫できる。

 つまり、自分でお金を出さずに(もしくはほとんどお金を出さずに)、沖縄でリゾートマンションが手に入る。これは得だと考える人が積極的に沖縄の民泊マンションを購入しているのだ。

 なお、ローンを組んで民泊可能住戸を購入する場合、住宅ローンは利用できず、事業用ローンを利用することになる。それも、民泊マンションの特徴となる。

 民泊マンションは、仕組みを知らない人がまだまだ多い。しかし、沖縄では人気を高め、毎年民泊マンションの数が増え続けている。それが、知られざる沖縄の民泊マンション事情なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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