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14戦全勝9KOでWBAウエルター級レギュラータイトルを得たベビーフェイス

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 リオ五輪では2戦目で姿を消したが、アマチュア時代から祖国リトアニアで将来を嘱望されたエイマンタス・ スタニオニス(27)。

 渡米し、プロデビューを果たしてからの戦績は、13戦全勝9KO。WBA1位までランキングを上げ、このほど同レギュラータイトルを持つラジャブ・ブタエフ(28)に挑んだ。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 14戦全勝11KOのブタエフにとっては、初防衛戦だった。全勝同士の対戦は、注目を浴びた。

 1、2ラウンドはジャブの刺し合いでまったくの互角。3回以降、両者はショートレンジで打ち合う。

 ブタエフは時折スイッチしながら、挑戦者を迎え撃った。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 リング中央でパンチを交換しながらの削り合いが続く。両者共にガードが高く、タイプも似通っている。6ラウンドから、スタニオニスがやや押し気味の展開となった。

 第11ラウンド、ブタエフがホールディングしながらパンチを振るったとして減点を告げられる。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 実力伯仲した者同士による一進一退のファイトだったが、 116-111、117-110、113-114のスプリットディシジョンでスタニオニスが新チャンピオンとなった。

 試合後、勝者は語った。

 「まだ、信じられません。勝利者コールで"New"と聞いた時、幼いころからの夢が現実になりました。世界チャンピオンになる日をずっと夢に描いていたんです。そのために己を捧げ、懸命にトレーニングしてきました。自分とチームを信じて、この舞台に上がった。信じれば、道は開けるんですね」

 ご覧の通り、可愛らしい顔をしているスタニオニスだが、思いのほか打たれ強さも見せた。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 ただ、レフェリーの減点と、7ポイント差のスコアには政治力を感じる。2-1の勝利は頷けるし、勝者がスタニオニスである点に異論は無いが、両者にそれほど大きな差があったようには見えない。

 「何故、減点されたのか理解できない。スタニオニスが頭を下げて突っ込んできたので、ああするしかなかった」とは敗者の弁。

 ロシア人であるブタエフも、デビュー以来ほとんどの試合を米国で戦ってきた。しかし現在、世界情勢を混乱させている民族として「斬られ役」とされたのかもしれない…。プーチン政権への怒りをアスリートに向けているのか…そんな印象を持たざるを得ない結末であった。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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