「日本は韓国と競争さえ不可能」 ――今週韓国で最も読まれた日本関連記事
12月第2週、「韓国で最も関心を持たれた日本関連ニュース」は何だったのか。
大手ポータルサイト「DAUM」のデイリーアクセスキングのニュース部門で唯一ベスト10入りしたのが、12月7日のこのニュースだった。
「『日本は今や韓国と競争さえもできない体たらく』…日本の元官僚のため息」(ソウル新聞)
同ランキング内の日本関連ニュースとしては「突出した存在」といえる。なにせ最近はなかなか日本関連の話題がこの欄のベスト30に入ってこないのだ。12月5日から11日まで(日~土)で唯一のランクインだった。
古賀茂明氏の記事を紹介
「ソウル新聞」によるニュース記事の内容は、12月7日に日本の「AERAdot.」に掲載された記事を紹介するもの。
この古賀氏の寄稿内容をかいつまんで訳し、紹介する内容だ。
半導体受託生産の世界最大手・台湾の「TSMC」が、熊本県に新工場を建設する。
日本政府は、世界最先端企業の工場誘致と胸を張る。
しかし「世界最先端企業の工場」と言っても、「世界最先端の工場」ではないことをメディアは報じない。
工場で生産される半導体は10年以上前の技術のもの。
1988年に世界半導体販売の過半を占めていた日本は、今や10%を切るところまで落ちた。
トップ10社中日本企業が6社の時代もあったが、今は1社もない。技術面でも、台湾、韓国、米国企業との最先端競争に参加さえできない体たらく。
台湾のTMSCに足元を見られるなか、世界2位のサムスンに頼むことも出来なかった。
それは「安倍政権以来の嫌韓政策により、経産省が対韓輸出規制強化でサムスン向けの日本からの部品材料輸出を妨害した。サムスンに頼める関係ではない」から――。
「ソウル新聞」は、このような内容を紹介するのみで、古賀氏の寄稿内容に対する論評を加えなかった。唯一、同紙の考えがうかがえるのは2つのポイントのみだ。
記事冒頭部分で記事要約をこう記している。
「時代遅れの産業政策が今日の日本に先端産業の種が尽きてしまうほどの大危機をもたらし、安倍政権以降続いてきた嫌韓政策がよりいっそうそれを深めてしまったと、日本の前経済官僚が痛烈に批判した」
また記事の後半ではこうも記した。
「彼は特に安倍政権以降続いた嫌韓政策と韓国に対する経済報復が今日の日本の立場をよりいっそう萎縮させていると指摘した」
暗にこの点を言いたいのだった。「2019年夏に始まった”韓日貿易戦争”で日本側に分が悪い点を、日本に元経済官僚が指摘している」。
韓国側のいう”貿易戦争”とは、2019年当時の安倍政権によるいわゆる「ホワイト国除外」から始まる(あくまで韓国側に言わせると)。
韓国に対して日本側は「半導体やディスプレイ、メモリーチップ製造に不可欠な工業製品3品目に対する輸出優遇処置解除」を行った。
これに対して韓国側は猛抗議。日本の処置を「徴用工判決への報復」とし「筋違いの報復」とした。
直接的には「日本からの輸入に頼らない半導体製造」という対策を講じ、間接的には「日本製品不買運動」を展開してきた。当時、現地の左派市民団体のデモを取材したが、「過去には日本に負けたが、この戦いは負けない」とコールが繰り返されていた。
対日感情の新たなトレンド
この記事を含め、ここ1か月で「Daum」のデイリーアクセス数ベスト30入りした記事を見ていくと、韓国での日本の関心のもたれ方の傾向が見えてくる。
11月18日=「日米韓外務次官級協議後に予定していた共同記者会見が、日韓の意見対立(領土問題)を受けて取りやめ」…デイリーアクセス数19位。
11月25日=「韓国の医大教授、韓国のコロナ対策を日本と比較し批判」…同9位/コメント数はこの日1位。
12月4日=「オミクロン株が南アで発見され、日本に入国した韓国人がいきなり空港から340km離れたホテルに隔離された」…同4位。
12月7日=(今回紹介した)「日本の元官僚、”韓日貿易戦争”での日本側のマイナスを認める」…同5位。
12月4日の「オミクロン株」は「コロナ対策で自国人が外国でひどい扱いを受けた」というもの。これは場所が日本でなくとも話題になっただろう。
注目すべきは、11月18日の記事とそれ以外の内容の違いだ。
日本からすれば、11月18日のシンプルな領土問題のほうがより日本への感情が燃え上がるようにも見える。実際に韓国にとっての「独島問題」は、保革関係なく日本に強くベクトルが向くテーマであり続けてきた。しかしこれは最近のランキングでは低い順位にとどまる。
いっぽう、11月25日の記事は保守系の中央日報が「日本を引き合いに出し、革新系現政権のコロナ対策を批判」という主旨だった。
合わせて今回紹介した12月7日の記事は、前述の竹島絡みの話(19位)よりもはるかに上の5位に入った。「長く論じられる領土問題よりも、2019年に始まる”貿易戦争”の勝敗に関心」という点が見える。
いずれも新しい傾向だ。”日本への新しい意識”が感じられる。歴史的な論争もさることながら、今日の「克日」。今を問う。これがこの2021年の11月から12月上旬には注目を集めている。
あくまで、全般的には韓国内で日本のことが話題にならないなかでのことだ。しかし、ことこのテーマとなれば強い反応があるのだ。