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入居率は委託管理94.0%、サブリース97.3%…賃貸住宅の入居率状況(2023年発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
賃貸物件にはどれほどの空き家があるだろうか。入居率の実情から見ていく(写真:イメージマート)

賃貸住宅に住んでいる人なら誰もが一度や二度は気にしたことがある、自分が住んでいる物件の空き室の有る無し。一つ二つならば今後どのような人が入ってくるのかが楽しみとなるが、あまりにも空き室が多いと防犯や管理の点、そして物件の所有者が建て替えを模索しているのではと不安を覚えてしまうもの。また空き室からは賃料を得られないため、物件の所有者、管理者側の観点ではもちろんマイナスの材料となる。今回は賃貸住宅の管理会社で構成される協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から、賃貸住宅の入居率の実情について確認する。

次に示すのは直近となる2022年度(2022年4月~2023年3月)における賃貸住宅の平均的な入居率。例えば委託管理の首都圏では94.4%とあるので、100世帯分の賃貸住宅があれば約94世帯分は利用者がいる、約6世帯分が空き室との計算になる。もちろんこの数字が高い方が運営側はハッピーとなれるし、貸し手側優勢の市場動向と見ることができる。

なお「委託管理」と「サブリース」の違いだが、前者は賃貸住宅運営の際に必要なあれこれの一部を業務委託の形で業者にお願いするもの、後者は一定手数料が差し引かれるものの物件のほぼすべてを管理業者に任せるもの。後者の場合、物件の持ち主が業者に物件を貸し、その物件を入居者が業者から借りる事になる(つまりまた貸し状態)。株式取引なら、自前でポートフォリオを作るか、投資信託を購入するかの違いのようなもの。

↑ 入居率(2022年度)
↑ 入居率(2022年度)

委託管理の場合は全国で94.0%。多数管理で多様なノウハウを駆使できるサブリース物件になると、もう少し入居率は上昇し、全国では97.3%となる。一方で一般的には100%からこの入居率を引いた値が空き室率となるため、全国では数%の賃貸物件が空き室状態となっていることも事実ではある。

続いて過去データが取得できる限りのものを確認した上で、その推移を示したのが次のグラフ。なおグラフにも注意事項として記載してあるが、2016年度下期分から、「算定基準が今回から管理戸数ベースになったことによる」ものである。従ってその前後の値の単純比較はできない、事実上連続性は無いグラフとなっている。また2021年度分からは年ベースでの値となる。

↑ 入居率(委託管理(集金管理含む))
↑ 入居率(委託管理(集金管理含む))

↑ 入居率(サブリース)
↑ 入居率(サブリース)

地域別では大きな違いは無いものの、それでも多少は存在していた「首都圏・関西圏以外ほど空き室率が高い」現象が少しずつ収まり、地域差が縮小していた感はある。一方でここ数年、特にサブリースでは再び地域差が拡大する動きを示している(直近年ではいくぶん縮小したが)。

以前のリリースでは委託管理とサブリースの差異に関して「滞納率アップ、管理業務の複雑化による経費の増加、加えて空室率の上昇に伴うサブリースのリスク回避も背景にあると思われる。仕入れ増を優先すると、希少価値のある物件を見送って人気薄の物件を多く仕入れてしまい、さらに空室率が悪化することもある」と解説。さらに滞納率との関係に絡めて「無理に空室率改善を図ると、入居者の審査レベルを落とすことになるため、家賃債務保証契約によってカバーする傾向が増加する」とも言及していた。賃貸物件の管理に関するさじ加減の難しさをかいま見ることができよう。

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※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

2023年7~8月にインターネットを用いて日本賃貸住宅管理協会会員に対して行われたもので、有効回答数は541社(回収率29.7%)。2022年4月から2023年3月に関する状況について回答してもらっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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