レーダー照射事件は米国の「仲裁待ち」か
発生からもうすぐ一週間が経つ韓国駆逐艦による自衛隊哨戒機への「レーダー照射」事件。論点を整理し、今後、解決に向けどのようなプロセスを歩むことになるのかを整理した。
真実は闇の中?
まず、現状からだが、昨日の記事でも整理した通り、日韓の主張が食い違っている構図に変わりはない。
特に、韓国側の「当時、海上捜査のためMW08レーダーを使用していたが、哨戒機に対する電磁波の照射は無かった」(24日の国防部会見)という主張と、「海自P-1が、火器管制レーダー特有の電波を一定時間継続して複数回照射された」(防衛省25日発表)という火器管制レーダー「STIR」を暗に指す日本側の主張が真っ向から対立している。
これは「レーダー照射自体があったのか無かったのか」という根幹に関わる論点であるため重要だ。だが今後、事実関係が今より公になることはないとする向きが強い。理由は軍事機密のためだ。
26日、筆者の取材に応じた元海上自衛隊幹部は、「レーダーの識別は人の指紋と同じで、ESM(Electric Support Measures)により、どのレーダーがどのようなモードで使われたのか個体で識別できる」としながらも、「ESM能力を明かすことになるため、情報を開示することはない。これはどの国でも同様だ」と説明した。
こうした点は、25日の防衛省会見で岩屋防衛大臣が明かしている通りだ。
こうなると袋小路になってしまうが、気になるのは25日の韓国国防部の記者会見で、詳細な説明を求める韓国紙記者に対し、「技術的な説明は別途」と国防部側がした点だ。韓国側はあくまで技術的な問題として扱いたいようだ。
これについては現在、韓国国防部に正式に取材を申請中であるため(韓国では国内メディアと海外メディアで公開される内容が異なる。筆者は海外メディア扱い)、追って伝える。
いずれにせよ「真実は闇」となりつつある中、今後はどうなるのか。
日韓ともに「協議を続ける」としているが、26日現在、まだ日程は決まっていない。そんな中、先の元海自幹部は「最終的には米国が仲裁に入るのでは」と指摘する。
「米軍はELINT衛星という電子偵察衛星を保有しており、世界中で発信されているありとあらゆるレーダー情報を集め、フィルタリングしながらも情報をリアルタイムで同盟国に流している。日本海での出来事については、米軍は全てを知っている」というのが、その根拠だ。
これについて韓国国防部のクォン・ギヒョン外信担当広報官は26日、「そういった話はまだない。日韓の間で解決できるのが望ましい」と述べた。
問われるメディアの姿勢
最後に、2点ほど指摘しておきたい。今回、日本側が先んじて情報を公開した理由は何かという点と、これをメディアが大々的に煽る部分についてだ。
情報公開後にも「詳細は公開できず、当局間で協議を続ける」のならば、そこに残るのは結局、韓国に対する不満だけということになる。なぜこれを敢えて公開したのか。両国の信頼関係をいたずらに傷つけることにならないか。
次にメディアについてだが、25日の岩屋防衛大臣による会見の一部を抜き出してみる。
どのメディアによる質問なのかは分からないが、まるで関係の断絶を望むかのような質問だ。こうしたメディアが世論を煽る記事や番組を作ることは火を見るより明らかで、それによって韓国への不満や不安が広がることになる。
韓国国防部は25日、「日本側が緊張緩和のために、防衛省の会見内容を前もって伝えてきた」と明かすなど、防衛省の対応と韓国国防部の対応は抑制されており、普段からの両国軍事当局間の交流を裏付けるようなものだ。
日韓はたくさんの人が行き来し、関係する友好国である。ニュースの生産者も消費者も、もう少し冷静になるべきだと、何度でも言い続けたい。