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モドリッチはシャビとイニエスタの境地を超えられるか?レアルでの「ラストダンス」を見逃すな。

森田泰史スポーツライター
モドリッチとアセンシオ(写真:ロイター/アフロ)

今季が彼の「ラストダンス」になるかも知れない。

リオネル・メッシ、セルヒオ・ラモス、ダビド・アラバ...。多くの選手が、今季終了時に契約満了を迎える。新型コロナウィルスの影響で各クラブの財政は逼迫しており、長年のキャリアを築いてきた選手たちを納得させる新契約のオファーをするのが難しい状況だ。

確かに、レアル・マドリーにとってS・ラモスの存在は大きい。ただ、もうひとり、今季終了時に契約が満了する重要な選手がいる。ルカ・モドリッチである。

■盤石の中盤を築いて

マドリーは今冬の移籍市場でマルティン・ウーデゴールがアーセナルにレンタルで移籍した。移籍決定後、ジネディーヌ・ジダンは次のように語っている。

「ウーデゴールは試合に出ることを望んでいた。だから移籍を求めた。2、3回、彼とは話をした。残って欲しいと伝え、落ち着きを持って(ポジションを)争わなければいけないと言った。シーズンは長いので、彼を必要としていた。彼の復帰を要望したのは私だからね。ただ、そうはならなかった」

ウーデゴールの今季の出場時間は367分だった。モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロの壁は厚かった。

バルサ黄金期を支えたシャビとイニエスタ
バルサ黄金期を支えたシャビとイニエスタ写真:ロイター/アフロ

「モドリッチのケースは、唯一無二のものだ。多くの選手が、年齢を重ね、プレーエリアを下げていった。シャビ(・エルナンデス)や(アンドレス・)イニエスタでさえね」とはクロアチア代表でセンターバックとして活躍し、現在は同代表で対戦相手のスカウティングを担当している二コラ・イエルカンの言葉だ。

「しかしながらモドリッチは危険なゾーンでの仕事を探し続けている。また、彼の年齢であれば、もっと前に他クラブへの移籍を決断していてもおかしくない。だが彼はレアル・マドリーでのプレーを望み、要求の高いポジションで活躍している。彼には、重要なフットボール・インテリジェンスが備わっている」

実際、マドリーの選手が30歳を超えてプレーを続けるのはリスクがある。基本的には単年契約になり、S・ラモスの契約延長に関しても交渉が難航している背景にはこのポイントがある。

そして、モドリッチには2018年夏にビッグオファーが届いていた。2017-18シーズンにマドリーでチャンピオンズリーグ3連覇を達成した後、ロシア・ワールドカップでクロアチア代表を準優勝に導いた。

充実の一年を過ごしたモドリッチを、インテルが狙っていた。年俸1000万ユーロ(約12億円)の3年契約というオファーで、その後、蘇寧グループの関係で江蘇蘇寧へ移籍するというルートまで用意されていた。33歳のモドリッチにとっては、破格の待遇だった。

だがフロレンティーノ・ペレス会長はモドリッチの放出に難色を示した。2018年のバロンドールを受賞する可能性があったからだ。ペレス会長としては、「バロンドーラーがレアル・マドリーの選手」というブランドが欲しかったのである。

加えて、マドリーは2018年夏にエースのクリスティアーノ・ロナウドをユヴェントスに売却してしまっていた。移籍金1億ユーロ(約120億円)を得たペレス会長であったが、ビッグイヤー獲得直後にC・ロナウドとモドリッチが抜けてはマドリディスタに示しがつかない。最終的にはモドリッチの残留が決まった。

2012年夏にマドリーに移籍したモドリッチ
2012年夏にマドリーに移籍したモドリッチ写真:ロイター/アフロ

そのモドリッチがマドリーに加入したのは、2012年夏だった。

マドリーはモドリッチの獲得に際して移籍金3500万ユーロ(約42億円)をトッテナムに支払った。当時のジョゼ・モウリーニョ監督とアシスタントコーチのルイス・カンポスが彼の獲得を熱望していた。

当初はシャビ・アロンソの控えという立場だった。その前年にボルシア・ドルトムントからヌリ・シャヒンを獲得していたマドリーだが、負傷に苦しめられたシャヒンはファーストシーズンで公式戦10試合出場にとどまった。ゆえにモドリッチの獲得に踏み切った。

モウリーニョの後任を務めたカルロ・アンチェロッティ監督もまた、モドリッチを信頼した。ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの「BBC」を前線に据え、アンヘル・ディ・マリアをセントラルハーフにコンバートして、【4-3-3】が採用された。ディ・マリアと共に中盤を形成したのがX・アロンソとモドリッチだった。

モウリーニョ、アンチェロッティ、ラファエル・ベニテス、フレン・ロペテギ、サンティアゴ・ソラーリ、ジダンと全指揮官がモドリッチを重宝してきた。

マドリーの中盤に君臨
マドリーの中盤に君臨写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「僕は常に試合に出たい。休むのは好きではない。それは監督に伝えてある。マドリーにはトップレベルの選手が揃っていて、ローテーションがある。それでも、僕はいつもプレーしたいんだ」

「僕の身分証明書を見てほしくない。ピッチ上での自分を評価してもらいたい」

昨季、リーガエスパニョーラで優勝した後のモドリッチのコメントである。ペドリ、アンス・ファティ、ジョアン・フェリックス、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエスと近年のリーガでは若き才能が台頭してきている。

チームメートからも愛され、『ポニー』の愛称で親しまれている。そんなモドリッチのラストダンスを、いつまでも、見ていたい。だが別れの時は近づいてきている。目を凝らして、対戦相手を翻弄するモドリッチのプレーを、いまは存分に楽しみたい。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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