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横田慎太郎選手がリーグ11年ぶり、チーム17年ぶりの1試合3本塁打!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
1試合3発の“快挙”を成し遂げる前日の横田選手。突然のカメラに驚いた表情です。

きのう8月31日、阪神ファームは兵庫県姫路市での中日戦でした。試合が行われた市立姫路球場は約2年間の改修工事を経て、今春めでたくリニューアルオープン。それも合わせて見に行きたかったんですが体調不良で断念したところ、もっともっと悔しがらねばならない出来事が起きちゃいました…。設備がきれいになったのはもちろん、グラウンドが両翼95メートルから100メートルに広がった(センター120メートルは変わらず)姫路球場の、そのレフト芝生席へ、横田選手が3本も放り込んだのです!

小虎の1試合3本塁打は、いつ以来?

まず1試合3本塁打について。イースタンでは西武の山川選手がことし5月に記録したのが、リーグ2年ぶりだったそうです。ウエスタンでは?と調べたもののデータが残る範囲では探し切れず、NPB記録部に教えていただきました。2003年7月2日に中日の田上秀則選手が放ったのが最新で、つまり11年ぶり。ちなみにウエスタン・リーグ最多は、1969年6月4日に広島の水谷実雄選手が記録した1試合4本とのことです。

今度は阪神ファームでの1試合3本塁打がいつ以来か。昔は長距離砲と呼ばれるバッターも多かったし、ボールもよく飛んでいたので結構あったのかもしれませんね。まず思い浮かんだのはウエスタンで最多本塁打のタイトルも獲り、チーム1シーズン最多本塁打の記録を塗り替えた喜田剛選手です。しかし答えは「ない!」…。今度はスポニチ記録部さんに聞いてみました。

1997年8月15日(金)に雁の巣球場で行われたウエスタン・リーグのダイエー-阪神12回戦で、外国人のハイアット選手が4号、5号、6号を放っています。なんとダイエーも、ルーキーだった松中選手が1イニング2本を含む3本塁打(投手は御子柴、太田、安達)。どんな試合かというと、阪神は10安打で11点、ダイエーは25安打で27点!両軍合わせて38得点、36打点で当時のリーグ新記録でした。ダイエーが6回1イニングで19塁打など、他にも新記録やタイ記録続出です。あまりに驚いたせいで話が脱線してすみません。

17年前のハイアット選手は3安打3打点だったのでソロ3本。でも横田選手は、前を打つ小宮山選手が3打席ともヒットで出塁したため全部2ランです。しかも驚いたことに3本とも逆方向、レフトへの打球!まさに覚醒したというか、確率変動というか。姫路球場の阪神ファンの皆様は大喜びだったでしょう。他にも小宮山選手と陽川選手が3安打するなど計12安打で、1番の荒木選手が3盗塁と久々に活発な攻撃を見せています。

先発投手が急きょ変更に

それと、この日は歳内投手が先発予定で前日の夕方に出発するところを確認したんですが、現地からの情報は「先発・島本」でビックリしました。でも前夜の1軍戦を思い出し、これは緊急昇格かなと。その通り、昇格した歳内投手は高宮投手とともにナイターで登板しましたね。姫路では、急なうえに先発を任された島本投手が5回3安打無失点と、最高のアピールです。

《ウエスタン公式戦》8月31日

阪神-中日 24回戦 (姫路)

中日 000 000 010 = 1

阪神 030 301 20X = 9

◆バッテリー

【阪神】○島本(1勝3敗)-建山-山本-松田-久保田 / 小宮山-清水(9回表)

【中日】●西川(3勝3敗)(2回2/3)-川崎(1回1/3)-小熊(1回)-メジャ(2/3回)-矢地(1回1/3)-岡田(1回) / 赤田-田中(5回~)-桂(8回裏)

◆本塁打 横田2号2ラン(西川)、3号2ラン(川崎)、4号2ラン(矢地)

◆二塁打 小宮山、陽川、森越 

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]二:荒木   (3-1-0 / 0-1 / 3 / 0) .240

〃打遊一:黒瀬 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .247

2]左:田上   (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .167

〃打左:中谷  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .179

3]右:緒方   (4-1-1 / 0-1 / 0 / 0) .308

4]指:森田   (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .268

〃打指:原口  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .244

5]一遊:陽川  (5-3-0 / 1-0 / 1 / 0) .254

6]遊二:北條  (5-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .238

7]三:西田   (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .228

8]捕:小宮山  (3-3-1 / 0-1 / 0 / 0) .202

〃捕:清水   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .182

9]中:横田   (4-3-6 / 0-0 / 0 / 0) .194

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)

島本  5回 81球 (3-4-0 / 0-0 / 2.97)

建山 1.1回 15球 (0-0-0 / 0-0 / 0.00)

山本 0.1回 1球 (0-0-0 / 0-0 / 2.42)

松田 1.1回 26球 (1-1-0 / 1-1 / 6.00)

久保田 1回 10球 (1-0-0 / 0-0 / 6.30)

まず打線は2回、先頭の陽川が中前打と公式戦初盗塁で、2死後に小宮山の左中間二塁打で生還。続く横田が2号2ラン。4回は1死から小宮山がレフトへのヒットを放ち、横田が2打席連続となる3号2ラン。6回は四球を選んだ小宮山が捕逸で二塁へ進み、ここは二ゴロの横田。1死三塁で荒木は四球と盗塁、田上の犠飛で1点追加します。緒方と森田も四球で中日のメジャは計4四球でしたが、矢地に変わって3者残塁。7回は2死から小宮山が中前打し、横田の4号2ラン。計12安打で9得点です。

投手陣は、島本が2回に中田の中前打、5回に先頭の堂上剛と中田の連打を許しただけで、他は完ぺき。5回を投げ3安打無失点。しかも無四球で三塁を踏ませぬピッチングでした。6回は建山が三者凡退。7回は建山、山本、松田で三者凡退。8回は松田が先頭の森越に左中間二塁打を浴び、次の一ゴロで1死三塁とピンチを迎えます。続く桂は遊ゴロで黒瀬が送球エラー(生還は遊ゴロの間でしょうか、打点ありで松田に自責)。2死後に黒瀬が今度は捕球エラーを犯し一、三塁となりましたが、古本の三振で1失点のみ。9回は久保田が福田のヒット1本に抑えて試合終了。

満塁弾より嬉しい3発!と横田

このところ目を見張る成長ぶりで、秋が楽しみな横田選手。たまには真面目な顔も1枚。
このところ目を見張る成長ぶりで、秋が楽しみな横田選手。たまには真面目な顔も1枚。

では1試合3本塁打の横田選手のコメントです。まず打った球を教えてください。「1打席目は真っすぐ、2打席目はスライダー、最後は真っすぐ。当たりはみんなよかったです」。1試合3本は?「初めてです!」。2本はありますよね?「ありまーす」。8月3日にようやく出たプロ1号は満塁ホームランでした。それも練習試合や紅白戦でも打っていなかったので、まさに“プロ1号”だったのですが、どっちが嬉しいか尋ねると「きょうのホームラン!」と即答。

何でもかんでも初球から振っていくことも減ったし、ボール球の見送り方が落ち着いてきたように思います。このところ、いい当たりの打球が増えてきましたね。心がけているのは?「タイミングを早く取ることだけ考えています」。ところで1試合3本を打ったのは、阪神では1997年のハイアット選手以来だそうですよ。「その人、知りませーん(笑)」。そりゃそうでしょう。横田選手が2歳の時ですから。

ちなみに、横田選手から大きな援護をもらった島本投手は「3本ともすごかった!しかも全部が逆方向って…ソフトバンクの柳田さんか~(笑)。逆方向でもフワーと入ったんじゃないですよ、みんな。2本目は弾丸ライナーやし、3本目は余裕で中段まで飛んでます。広い球場やのに。ほんまにすごい!」と驚きのコメントがどんどん出てきました。

島本「急でも、呼ばれてありがたかった」

では、緊急出動にもかかわらず好投した島本投手の話をご紹介します。「きのう(30日)の夜10時半くらいに『姫路へ来い』と連絡がありました。ええー!ってビックリ。朝行ってもいいみたいやったんですけど、それではキツイかなと思って」急いで支度し、自分で荷物を持って電車で移動。姫路の宿舎に着いたのは日付が変わるころだったそうです。翌朝、先発予定だった歳内投手が帰る前に「すみません」と、また久保投手コーチからも「すまんな」と急な“穴埋め”を詫びる言葉があったとか。

ところが島本投手はこう言いました。「そんな謝ってもらうことなんて全然ないのに。だって嬉しかった。普通に、チャンスや!と思って。呼んでもらって本当にありがたかったんですよ」

そんな状態だったので「もちろん1週間前に伝えられてやっていくのとは全然違いますけど、いつでも投げられるように準備はしているので。今回は緊張もなかったし、する余裕もなかったから逆によかったかも。ちょっと寝不足でしたけど(笑)」と島本投手。昨夜も電話の向こうで「メッチャ眠たいです」と繰り返していました。でも試合の話になると、また興奮がよみがえってきたかのように饒舌です。

気持ちで勝てた!13球目の空振り三振

「真っすぐはストライクが入ったけど、最初のうちは左バッターの外、右バッターの内に決まらなかった。初回は打ち損じてくれてアウトを取れた感じ。そこから変化球を多めに投げました。そうやって試合の中で修正できたことが、きょう一番の収穫ですね。変化球はスライダーもスラーブもよくて、フォークが一番よかったです。真っすぐが悪かったので、真っすぐを見せて次の変化球をより効果的に、と思って。とにかく5回までは何としても抑えたかった」

6番の中田選手には中前打と、自身のグラブをはじく内野安打で「どっちもいい当たりでした。中田さん、ウエスタンで一番イヤです」と島本投手。また4奪三振は、古本選手が1回はスラーブ、4回がスライダーでともに空振り三振。3回の赤田選手は「外めがけて投げたら真ん中に行ってしまった」真っすぐで見逃し三振。そして圧巻は5回です。1死一、二塁で代打・田中選手に対しスリーボールとしてしまいましたが、1つストライクを取って、そのあとは8球続けてファウルで粘られます。そして計13球目に空振り三振!

「フォークです。6対0とリードしてもらってフォアボールはもったいないなと。どうせなら腕を振って、思いきりストライクを投げて打ち取りたかった。小宮山さんも、しっかり投げろとジェスチャーをしてくれたし。だからもう気合いでいきました!気持ちで勝てたと思います。あそこでフォアボールを出していたら、わからなかったでしょうね」。唯一のピンチをしのいで、まだまだ余裕はあったようですが、登板予定のリリーフ陣も多かったということで交代。しっかりと役目を果たしました。

先発でつかんだプロ初勝利。次は…

大量リードもあり、島本投手は勝ち投手に。終わってから「ああ初勝利や」と気づいたそうです。昨年までリリーフで白星がついたことはなく、今年は先発で「チャンスは5試合中、3回くらいありましたよね」というように、7回無失点とか5回無失点、7月にも6回途中まで1失点と好投しながら引き分けたり、逆転されたり。「6度目の正直(笑)」と4年目でのプロ初勝利を喜んでいました。だけど記念のボールはどうするか聞かれて「要らない」と答えたそうです。本当に欲しいものは別にありますからね。

ちょうど日曜日でしたが“歓迎すべきハプニング”で、実家へ連絡する余裕はなかったとか。でも次があります。残り試合は少なくとも、きのうの登板は高く評価されたはず。「僕の投げる前の試合で雨が降ると、ずれて(先発の機会が)なくなってしまうことがあったけど、育成選手なので仕方がないんですよね。だから、こんなチャンスはありがたいし、いいピッチングができてよかったです」と言ってホッと息を吐きました。「これから真っすぐを磨きます!変化球ばっかりでは通用しない」。そのあとに、きっと「支配下選手として1軍で投げるためには」という言葉が続くのでしょう。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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