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新幹線の運転見合わせで損害を受けた!JR東海に賠償請求できる? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

東海道新幹線の運転見合わせにより、旅行や出張の大幅な計画変更を余儀なくされた人も多いでしょう。原因は自然災害ではなく、愛知県内で保守用の車両が衝突し、脱線した影響によるものでした。こうした場合、きっぷの払い戻しだけでなく、JR東海に損害賠償を請求できるでしょうか。旅客運送を巡る法的責任について、参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

▼鉄道会社の過失の有無を問わず、運送約款の規定により、払い戻しや出発駅までの無賃送還以外の対応を求めることはできない

新幹線ダイヤ乱れ、足止めくらった客は「損害賠償」を請求できる?(弁護士ドットコムニュース)

▼定期券や回数券は、5日以上連続して不通の場合に限り、有効期間の延長や払い戻しが行われる決まり

事故などの場合の取り扱い(JR東海)

▼鉄道輸送は航空輸送と比較にならないほど多くの旅客を運ぶものなので、鉄道会社が一人一人の損害に対応することなど不可能

もし新幹線が止まったら、お客様はどうしたらよいのか?(Yahoo!ニュース エキスパート 鳥塚亮)

▼鉄道会社が発行した遅延証明書を会社に提出した場合、遅刻扱いを免れるか否かはその会社の就業規則の内容によって決まる

意外にも「遅延証明書」の持つ力は法律上無に等しい(SmartHR Mag.)

エキスパートの補足・見解

きっぷを購入するときにいちいち運送約款など見ていないという人も多いでしょう。しかし、民法や鉄道営業法の規定により、ホームページや駅などで約款を公表し、見ようと思えば見られる状態にしていさえすれば、乗客がこれに合意したとみなされる決まりとなっています。

子どもたちが夏休み期間に入ったことで家族旅行を計画したり、お盆に帰省を予定したりしている人もいるでしょうが、法的には運転見合わせや遅延により生じた損害は自己負担が原則です。

駅で最前線に立つ駅員らにクレームをつけ、不満をぶつけたりストレスを発散したりしても、何ら事態は進展しません。場合によっては警察沙汰となり、強要罪や威力業務妨害罪などで逮捕される可能性も考えられるので、注意を要します。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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